訣別
2006年頃に書いたショートショートです。
当時はかなり病んでたのでこんな感じのが結構あります。失礼。
子供の頃の夢は叶わない。
誰もがそう言う。
俺は鳥になりたかった。この蒼穹の帳の中を、自由に何処までも何処までも飛んでいきたい。望みはただそれだけだ。
この汚れて荒み、救い難い人間社会にはほとほと反吐が出る。文明の発展と比例するように溢れかえる歩く生ゴミ共。堕落しきり、私利私欲の為だけに他人を貶め、時には命を奪い、私腹を肥やす奴らが現代社会ではお偉いさんと呼ばれ、このヒエラルキーが定着化してしまった。後々の世界の歪みが生まれる原因だ。完全なる悪循環。もう何を言った所で、既に手遅れなのかも知れない。
地獄のような人生だった。
十五で、人を殺した。優しかった姉さんは、どこぞの社長に殺され、俺はそいつを殺した。
そのことについては、何の後悔もないが、その後は悲惨だった。
ネットに顔や実名が流れた俺の父さんと母さんは耐えきれなくなり自殺した。
それから、何とか工面した金で顔を整形し、名前を変えて別人になった。だが、金を借りたところがいけなかった。ある組織に頼ったのをきっかけに、殺し屋として否応なく働かされ、最終的には十五人もの人を殺めてしまった。
一人ではとても支えきれない程の重さを背負って生きてきた。
殺した人数が、初めて人を殺した歳と同じ。
今の俺の歳は、その倍数の三十。
神様ってやつは本当に悪趣味だ。組織の言いなりに人を殺すのは、もうほとほと疲れた。
なんの思い出もない走馬灯の中に、殺してきた奴らの顔が浮かんでくる。
すまなかったと言ったところで、何の解決にもならないことは明白だ。
流れ去った雲の形が、死んだ姉さんに似ている。
父さんや母さん、姉さんはこんなドス黒く染まった俺を赦してくれる事は無いだろう。
長々生きてきたことを後悔しながら、ただ願う。
——次は、二度と人間にだけは生まれませんように。
身体が宙へ投げ出される。
青い空が視界一杯に広がり、風が容赦なく髪を靡かせる。
背後に迫る地面の気配を感じながらも、俺の眼が空から逸れることは無かった。
子供の頃、夢見た景色がそこにはあった。




