悪者は誰か?
「さて、ではノブさんの話を聞いてノブさんの人生の中で誰かに責任を持たせるなら誰にしますか?
要するに悪者は誰なのか?ということです。」
引田が言い、ナカを指差して
「難しいですからユキくんは後回しにしましょう。」
「そうですね。
う~ん、親が子を比べるのは望ましくありません。
お兄さん二人もそれぞれの人生の中でご両親と同じ結論を得ていたならお兄さん達にも非があるとは言えないです。単純に悪者を決めるなら最後の会社の人ですかね。」
「なるほど、単純に考えるとそうですよね。
追い込まれている人に最後のとどめをさした。
ですが、その会社ももうありません。
複雑な話ですが、ノブさんの事情聴取に立ち会った警察官が友人とお酒を飲んでる時にノブさんの事案を話してしまったんです。その警察官もナカさんと同様に会社が悪いと言った感じで。
しかも、会社の名前まで言ってた事で特定もされてしまった。さらに状況を悪くしたのがその会社の取引先の人間が同じ店で歓送迎会をやっていて、取引先の社長が大激怒して警察官にその話を詳しく教えろと詰めよった。
翌日には取引を全て白紙にした上、同業者にもその話を広めた事で倒産しました。
ユキくんは誰が悪いと思う?」
「えっ、僕も会社の人が悪いと思いました。でも、今の話を聞いたらノブさんと一緒に働いていた大学生の人とかも悪かったんじゃないかと思います。」
「ほう、それはなんで?」
「長く働いている人がいたならできることもやれることも人より多かったんじゃないかと思います。
それに仕事を教えて貰ったりとか助けて貰ってた事もあったかもしれないのに年齢だけでばかにしようとするのは…ダメなんじゃないかと思います。」
「なるほど、ユキくんの言う通り、ノブさんはバイト先で商品の発注や新人の教育も任されるくらいにお店から信頼されてた。でも、長く何かを続けているからといって周りから尊敬される人間であるという事はイコールにならないんだよ。
例えば小学校の一年生から野球をやっていても6年生の最後の大会にレギュラーとして試合に出れるとは限らない。才能や運動神経の良さ、人柄とかも合わさって尊敬されるかは決まる。
リーダーの器が歩かないかも関係する。
ノブさんはとても仕事ができたが、彼は自分から年齢を理由に周りと距離をおいてしまったが孤立してしまった。
人間って言うのは実に下らない生き物でね、孤立してる人や弱い人を人数で圧倒しようとしたがる。
ノブさんは味方を作れずにいたのが失敗だったのかも知れませんね。
さぁ、ノブさんはどうですか?」
「悪いのは誰かじゃない。
俺だよ、親や兄弟に甘えて努力してこなかった。
未来は誰にもわからないかもしれないけど、やっておかないと困った事なんて今までに生きてきた人達はたくさんあったと思うんだよ。
でも、誰も俺にそれを教えてはくれなかった。
必要な事は何でも終わった後に気づくんだよ。
俺に『もしも』の想像力がもっとあったら、情報を集める力があったらと思うと何も持ってないのに人の言うことを聞いてた俺のバカさを思い知らされるよ。
だから、悪いのは俺だったんだよ。」
「なるほど、それも一つの答えかもしれませんね。
でも正解でもない。私はそう思いますね。」
引田は真面目な顔で言いきった。




