ナカの過去
「はい、ユキ君の話ばかりになってきたのでいったんここまでにします。大事な事なのでしっかり考えてきてほしいと思うので『いじめは誰のせいなのか?』について意見を考えておいて下さい。宿題です。
少し休憩を入れたらナカさんのお話をしましょうか。」
引田が言い、ノブが聞いた。
「年齢順じゃないのか?」
「ノブさんのは少し衝撃的な話もありますからね。
最後にしましょう。」
「……ああ、わかったよ。」
「さぁ、休憩です。あっちに飲み物とお菓子もあるのでゆっくりしてください。」
10分後
「それではナカさん、お願いします。」
「私は営業職のサラリーマンでした。
仕事は上手くできていたようでお給料もたくさん貰えて、子供達にも奨学金なしで大学を出させてあげられるくらいに経済的に余裕がありました。
私は(・・・・)まったく問題のない幸せな家庭を築けていると思ってました。
定年退職をした次の日でした。
奥さん、ああ元奥さんから話があると言われてリビングに行くと離婚届がテーブルの上にありました。
私が動揺しているのも気にせずに元奥さんは、家庭をかえりみない人と老後を過ごすのは無理だから離婚したいと言われました。
私は……言い返せませんでした。
確かにそうだったと…思ってしまったからです。
私は親からお金を稼ぎ奥さんにも子供にも経済的に不自由をかけない事が夫の父親の役割だと教えられてきました。でも、そんな昭和の考えは古すぎたんです。
荷物の整理をしながら、よくよく考えても私には子供との思い出も奥さんが母親として動いている時の記憶もありませんでした。
私は……家族にいなかったんです。
共に過ごして、笑ったり泣いたり喜んだり悲しんだり。
私以外が共有した思い出が多すぎて私はいなくても関係がなかったのかもしれません。
『家族のために働け』と言われた私には『家族』がいなかったんだと家を出た時に感じました。
子供達は地元に就職して家から職場に通っていたので、家は元々子供達に譲ってマンションに夫婦で移り住む計画をしていたので、住む場所には困りませんでしたが、家族のために頑張ってきた人生で、家族がいないとわかった今は何をしたらいいのかわからなくなっています。
確かに家にいて何もしていない私は引きこもりなのかもしれませんね。」
「いやいや、奥さんと子供が勝手なだけでナカさん悪くないじゃないですか。何すんなり受け入れてるんですか?」
ノブが少し怒り気味に言った。
「僕もナカさんは悪くないと思います。」
「お二人ともありがとう。」
ナカは少し目に涙を浮かべていった。
「それでは次はナカさんの何がいけなかったのかを話し合いましょう。」
そう言って引田は笑った。




