第5話 ダークエルフ
ゴブリンが引いたあと、私はダークエルフに話しかける。
「大丈夫だった?」
見れば見るほど美しい女性だ。
黒い髪と黒い肌はまるで、宝石のよう。
「お前、私が恐ろしくないのか。」
ダークエルフはこちらを警戒しながら質問する。
ああ、そうだった。
この世界の人間はダークエルフのことを嫌っていた。
ワタシはもともとこちらの世界の人間でもないし、ダークエルフに会うのは初めてでむしろ驚いていた。
ワタシはその質問の答えにこまっていたところにアオが答える
「それより、あなたけがはありませんか?」と。
「ああ、大丈夫だ。一人旅なんでね。ゴブリンどもがおそってきたのだろう。一応、礼はいっておこう。」
「実は私たちもこまってましてね。話を聞いてもらえませんか?」
「ダークエルフの私にか?」ダークエルフの女性は驚いたように答える。
「実は我々野盗に襲われまして、食べるものすらないんですよ。そこで、知人をたより麓の町に行くところなのですが、あなたのように強い方がいっしょなら、大変心強い。出来れば護衛をお願いできませんか?もちろん、報酬はお支払いします。」
「なるほど、しかし、それじゃあ、あんたたちは文無しなんだろ。それじゃあちょっと難しいな。」
まあ、初対面でおまけに警戒されてるのだからしかたない。
「報酬は前払いでお支払いします。これでいかがでしょう。」
「は?」私が声をあげると、アオは懐から袋を取り出し、銀貨をジャラジャラとだす。
「あんた、そんなにもってたの?チュウエイのやつにとられたんじゃないの?」
ワタシは思わず問い詰める。
「こっそり、隠し持っていたんですよ。実は私はアイテムボックスのようなスキルをもってましてね。」
アイテムボックス、異空間にアイテムを補完できるというレアスキルだ。
この人、こんなスキルも隠しもっていたのか。
「まあ、そういうことなら、いいだろう。私も町までいくところだった。そこまで護衛してやろう。」
こうして、私たちは新たな仲間と町へ向かった。
道中、お互い自己紹介をした。
彼女の名はビゼンといった。
基本的には、森に隠れ住んでいるらしい。
この世界の文化には、どうにも理解できないところがある。
エルフは珍しい種族のはずなのに、人間の町にも普通に溶け込んでいる。
それに比べて、ダークエルフは――
どうも、差別を受けているらしい。
「らしい」というのは、実際にダークエルフと会ったのが、 ビゼンが初めてだったからだ。
いや、会っていたことはあるのかもしれない。
ただ、そのときは気づかなかっただけで。
今も彼女は、顔を覆う仮面にフードを深く被り、 手袋で肌を隠している。
差別にも、何かきっかけがあったのかもしれない。
だが、そこまでは分からない。
少なくとも――
アオは、そんなことを気にしている様子はなかった。
旅は、思ったよりも順調だった。
ビゼンは狩猟の腕も一流だった。
道中野生の獣を狩ってきたり、食べられる野草をいとも簡単にみつけた。
「エルフは動物は食べないと聞いていたけど?」食事中、私はそんな噂もきいてみたが、
「まあ、そんなやつもいるな。」彼女は気にしてはいないようだった。
「それよりもだ。なぜ私を助けようとしたんだ?私はダークエルフだぞ。」彼女は私に質問した。
説明が難しいが、誤解を受けるのも嫌なので、正直にいうことにした。
「私は異世界からきた人間なんだ。」
「そうなのか、どおりで。」
どうやらこの世界には、転生者や転移者が、 ごくまれに存在するらしい。
そして、その多くは――
世界を越えた代償のように、特別なスキルを持つという。
しかし、ワタシはなにも持っていなかったようだ。
強いて言うと、異世界にきたのになぜか、言葉も文字もわかった。
しかし、他の異世界人もそれはなぜかできていたので特別なものではないのだろう。
ワタシは冒険者をしながら、お金を稼ぎ、なんとか基本の魔法は習得できた。
さっきのゴブリンとの戦いの精霊魔法がそれだ。
しかし、経験がないワタシをやとってくれる人は少なかった。
そんなとき、チュウエイと出会ってしまったのだ。
実は、あのチュウエイも異世界から来たというのだ。
やつも自分は異世界からきた、だから苦労しているワタシの気持ちがわかる。
自分のパーティーにいれてやる。
そんな甘い言葉にさそわれてホイホイついていった自分がいやになる。
「すまない、いやなことをおもいださせてしまったか?」
ビゼンが私をきづかっていう。
「いや、全然、気にしないで。」私は笑って答える。
「そうですか、あなた異世界人だったんですね。」
アオが興味深そうに口元を緩める。
ダークエルフだの、異世界人だの、
この中で一番胡散臭いのは、どう考えてもこいつだ。
そうこうしている間に町に到着した。
「私も冒険者ギルドに用がある。そこまで一緒にいこう。」
ビゼンもそういうので、一緒にギルドに向かった。
チュウエイめ、お前も終わりだ。
そんな風に考えていた時期がワタシにもありました。
まさかこの先で、 自分が冒険者ギルドで
「死亡確認」されるとは。




