第43話 闘技場
闘技場ーー
オアシスの中心にそれはある。
ここでは冒険者や戦士、魔道士たちが技を競い合っている。
しかし、死んでしまったらそれでおわりの真剣勝負である。
「まずは、見学するか。」
ソウに連れられて、アオ、ビゼン、ヨクトの三人は闘技場にはいる。
「みろ。あいつがティア3、新人デビュー戦の最後の壁、オーガ族の秦鬼だ。今まであいつを倒せた新人は1組しかいない。」
ビゼンたちがみると3メートル近くあるオーガが冒険者パーティー4人に対して、たった一人で戦っている。
「Bランクパーティーだな。」
ソウはそう言って、賭けの状況をみる。
秦鬼が圧倒的な人気である。
「対戦相手のパーティーもなかなかやるな。だが。」
ヨクトは興味深そうに対戦相手のパーティーを観察する。
魔道士が秦鬼に炎魔法をはなつ。
しかし、秦鬼は構わず攻撃をおこなう。
盾役の戦士もろともリーダーらしき剣士が巨大な槌によって吹き飛ばされる。
「勝負あったな。」
ヨクトが秦鬼をたたえる
そして秦鬼の火傷は見る見る再生していく。
「再生能力スキルかなかなかだな。だが、あのロフほどのスピードはない」
ビゼンはそう言って腕を組み観察する。
その時--
「おう、ソウじゃねえか!」
四人の冒険者がソウに話しかける。
「チッ」
ソウは舌打ちし、ビゼンたちにうながす
「いこう。」
「待てよ!ソウ!あの話考えてくれよ!」
「うるさい!お前らがオレをクビにしたんだろうが!」
「クビとは心外だな。控えメンバーならいれてやるといったのに。」
(ああ、なるほどなソウはこいつらのパーティーメンバーだったわけか。)
ヨクトは腕組みをし、しばらく観察する。
「行くぜ、みんな!相手にすんな。」
ソウは無視して立ち去ろうとするが、男たちはなおも絡んでくる。
「チッ、あんたらいい加減に…」
ヨクトはそう言ってつかみかかろうとするが…
「おっと、闘技場じゃ暴力はご法度だぜ。もっとも、あんたらが今見ていた、ティア3の秦鬼を倒したのはおれたちだ。」
男はヨクトをみて一歩下がる。
「ふざけるな、あれはオレのサポートがあったからじゃねえか。それを勝つやいなやオレをクビにしやがって。」
「ああ、お前は十分役立ってくれたよ。しかし、お前以上の人間がみつかったからな。だいたいなんだ、その『オレ』って。お前が女だっていうのを誰よりわからせてやったのは俺たちじゃねえか。あ、確かに今のメンバーもお前の夜の援護にはかなわねえよ。」
ソウの肩が怒りでふるえる。
「てめえら……」
ヨクトが今にも殴りかかろうとするが、ビゼンが制する。
「なるほど、お前たちがティア4か。私はラッキーだったな。」
「あ?どういう意味だ。」
「ソウがいたならば、私も苦戦したかもしれんが、お前たちなど私一人で十分だ。お前たち含めて5回戦、私は私一人で勝ち抜いて見せると約束しよう。」
「なんだと、このダークエルフが!」
男の仲間の一人が今にもビゼンにつかみかかろうとする。
「よせ。俺たちはこれから試合がある。おもしろいダークエルフ。お前の名を聞いておこうか。」
「ビゼンだ。」
「ビゼンか。おぼえたぞ。オレの名はビーカだ。そしてオレの今のバックはこの闘技場のドン、ウルファーJr.様だ。お前は必ず後悔するぞ。」
そういうとビーカは去っていった。
「ビゼン、むちゃだ、たった一人で戦うなんて。ヨクトお前たちも何とかいってやれよ」
ソウはビゼン、ヨクト、アオに順番に目をやる。
「やれやれ、おれの出番はなしか。」
ヨクトは肩をすくめる。
「は?それだけ?」ソウは呆れる。
「あんなカスども私が相手にしてきた連中とくらべるとものの数でもない。」
ビゼンはそういうと、華姫、ロフの姿を思い出す。
「しかし、それよりも気になることがある。やつらが4回戦なら5回戦はなにものなんだ。」
ビゼンは疑問を口にする。
「さっきの騒動で人の眼も集まってきた。少し場所を変えておしえるよ。」
ソウはそういってビゼンたちを移動させる。
◇
「あそこのVIP席の男がみえるか?あれがこのオアシスのとりまとめ、ウルファーJr.だ。」
そういうとソウは目線だけで合図する。
若い人影が見える。
「ここは各ギャングが縄張り争いをしているが、奴がここのボスだ。」
「ウルファーJr.‥…」
アオがつぶやく。
「アオ様、なにか聞き覚えが?」
ビゼンがアオのつぶやきにきがつく。
「いえ、ちょっと知り合いに似た名前がいたもので、気のせいでしょう」
(いや、絶対気のせいじゃねえだろ。)
ヨクトはそうおもったが確証もない。
「そして奴は元冒険者でもあり、S級冒険者で魔獣使いだったと言われている。うわさではあの神獣フェンリルさえも従えていたとか。」
「じゃあ、逆にいうとさっきの連中はフェンリルと戦ったのか?」
ビゼンは当然の疑問を口にする。
「いや、まさか。Aランクモンスター邪狼を使役していたぜ。」
「ヴァナルガンドか。冒険者が遭遇したというフェンリルは実際はほぼヴァナルガンドと言われているな。」
ビゼンがいう。
「それはちょっとちがうね。」
アオが口をはさむ。
「ヴァナルガンドの中から言葉を覚え、聖獣化したものがフェンリルだよ。」
ソウがおどろく。
「そんな話きいたことないぜ!」
「少なくとも数百年、誰にも殺されない。不敗。そして、それを人が観察するのはほぼ不可能だからね。」
「そうだったのか。」
ビゼンがおどろく。
(なんで、ビゼンさんはこの人の話をっさり信じてるんだ。なぜ、この人はまるで自分が人ではないみたいな言い方をするんだ。このアオって人は何者なんだ。)
「しかし、ビゼン、Aランクモンスター、ひとりで大丈夫か。」
「あのフェンリルならばともかく、ヴァナルガンドならばなんとかなるだろう。」
ヨクトとビゼンが信じがたいやりとりをしている。
(どこからくるんだろうか、その自信は。)
(この人たちの正体はいったい何者なんだ)
ソウはそう考えながらも自分の仕事に取り掛かる。
「とにかく、じゃあ、今からエントリーしてくるぜ。」
そういうとソウは受付のほうに歩いていった。
「ビゼン、あのソウってやつ信頼できるのか?」
ヨクトがビゼンにきく。
「私は信用できるとおもう。アオ様はどうおもわれますか。」
「信じられるかどうかはわからないけど、嘘は言ってないよ。」
アオは手に持ったドリンクを飲みながら言う。
「なぜでしょうか?」
「なぜって、心を読んだからね。」
「なんでもありですね。」ヨクトが呆れる。
「ではここにフェンリルがいるというのは?」
ビゼンがアオに確認する。
「少なくとも今はいないね。気配がしない。でも当日現れるかまではわからないけどね。」
三人は闘技場で戦う戦士たちに目をやる。
「ヨクト、お前もでてみるか?」
アオがヨクトに聞く。
「馬鹿いえ、一応、革命軍も抜けてはいない。目立ってどうするんだ。」
ヨクトが苦笑する。
「私も出てみようかな。」アオが布をとって目を輝かす。
「「ダメです。」」
「なんでだよ。」
2人の声がハモり、アオが頬を膨らませる。
――しばらくして、ソウが戻ってくる。
「試合の日が決まった。三日後だ。」
「三日か、どこかで時間をつぶすところがあるか。」
ヨクトがソウに相談する。
「観光エリアがおすすめだ。あそこなら観光客は襲わないというルールになってるぜ。」
「へえ、そんなところがあるのか、じゃあ、そこに行ってみるか。」
「ああ、カジノもある。案内するぜ。」
アオの目が輝いた。しかし、誰も気がつかなかった。
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