第37話 究姫再び
さて、あらためて、ワタシたちは今後の動きを相談する。
「まず、コウロについて改めて調査をする必要があるわ。」
皆、そこは頷く。
「でも、どうすればいい?」
ビゼンが聞く。
「まずは警備隊長のアマンを当たろうと思う。」
アマン、彼は明らかに私をかばおうとしていた。
それにコウロの政敵らしい。
「顔を出した途端に、いきなり逮捕とかされたりするんじゃねえか。」
ヨクトが心配する。
「まあ、その可能性がないわけではないけど、彼はこっちの味方をしてくれるとおもう…たぶん。」
自分で言ってて、全く確証がない。
「えっと、一応いっておくとアビに会いたいと言ってるやつがいるんだけど。」
アオが口をはさむ。
「誰?」
「一人は君が知ってる人だよ、あと二人はまだ会ったことがない。」
「だから誰?」
「あの時会った究姫と凍子だよ。あとはクロってやつ。いやなら断っておくけど。」
とんでもないことをいいだす。
「究姫ってあの究姫?なんのために?」
「コウロのことを知っている限りで教えてやるから、もう一度、会わないか、だってさ?」
「罠か?」
ビゼンが警戒する。
「それはないよ。」
アオが自分の髪をいじりながら言う。
「たぶん、単純にアビに興味を持ったんだと思うよ。あんなひどいことをしておきながらぬけぬけと。」
それは本当にそう。
「あいつら頭がおかしいんだよ。一応伝えてくれといわれたから伝えたけど、もちろん断るよね。」
「ちょっとまって、その凍子ってのはあのモスをつれてきたやつだよね。」
私は後ろで腕組みする巨大な魔人をさして言う。
「そう。」
「そのクロって人は?」
「玄武竜なんてよばれてるけど……あいつとはまじに会わないほうがいい。」
「八凶神が3人同時にか……」
ヨクトが驚くが無理もないか。
「そんな嫌な奴なの?」
私は聞く。
「いえ、むしろいいやつだよ。」
「じゃあなんで?」
私は再度聞く。
「自分の気に入った女性は誰彼構わず誘惑をかけて、誘惑する。」
アオがとんでもないことをしれっという。
「とんでもないやつだ。あんたがまともに見える。」
「アビだけじゃないよ。ビゼン、あなたにも間違いなく手を出そうとする。」
「え?」
おもわず両手で自分の体を抱きしめるビゼン。
「どんなやつなのよ、それは。」
こいつの知り合いには碌な奴がいないのか。
「ただ、コウロについて情報がほしいのも確かなのよね。」
私は一考するが、
「とりあえず、会うだけ会ってみましょう。」
私たち四人は究姫たちに会うことにした。
「気がすすまないなあ。」
アオがぼやく。
◇
「ここにあいつがいるの?」
私はアオに聞く
それはあまりに意外な場所だった。
カードゲーム・バー。
カードゲームが楽しめるバーだ。
デュエルウィザーズ。
魔法やスキルを学びながら楽しめるカードゲーム。
こどもたちや大人たちが、健全に楽しんでいる。
「お客様、すこしよろしいでしょうか。」
係りの男性が声をかけてくる。
「ん?なにか?」
「すいませんが、お客様はご遠慮いただけますか?トラブルの元ですので。」
ダークエルフのビゼンに言っているのかと思った。
ちがう、これはワタシに言っているらしい。
あー、これが刻印というわけか。
一拍おいて、ワタシは小さく息を吐いた。
「まあ、そうよね。」
「おい、なにが問題なんだ?」
ヨクトがつっかかる。
「いえ、申し訳ございません。そちらの女性はご遠慮いただけますか、トラブルの元ですので。」
どうしたものかと思ったその時。奥から声がかかる。
「それは私のつれだ。通してやってくれ。」
金色の美しい髪。
究姫。
しかし、今日は邪神とはおもえぬラフなファッションである。
「こ。これは!究姫様のお連れでしたか、大変、失礼いたしました!」
「やあ、アビよくきてくれたね。嫌われなかったかと心配したよ。」
究姫は友人に話しかけるように親し気に微笑む。
人の右目をうばっておいてやばいな、こいつは、まじで。
「どうも。コウロについての話が聞けると聞いてきたんだけど。」
「立ち話もなんだから奥に来いよ。もちろん、連れのみんなもいっしょに。」
わたしたちは究姫に連れられて奥のVIPルームに通される。
そこで二人の女性がデュエル・ウィザーズに興じていた。
1人は黒髪の10代の少女。
こいつがリョーカさんのいってた凍子か。
もう一人は、こちらもアオや究姫に劣らぬ美女。
黒いストレートヘアに黒い瞳の女。
ボディラインを強調するようなラフな格好をしている。
こいつが、クロか。
「アオ、ひとつききたいんだけど。」
「なに?」
「あんたらの仲間は全員女なの?」
「あーまあ、厳密には男も女もないんだけどね。このクロは本来男性タイプだよ。」
「え?そうなの?」
どう見ても胸にご立派なものがついているが。
「やあ、君がアビか。話はきいてるよ。私はクロという。よろしくな。こいつらにはひどい目にあったらしいね。」
「えー、どうも。」
私は軽く挨拶をする。
中性的なハスキーできれいなこえ。
性別がわからない。
「で、ヨクト君に、ビゼンちゃんだろ。話はきいてるよ。」
なんだ、紳士的でいい人じゃないか。
クロはすっと立ち上がり、ワタシに顔を近づける。
近くでみるとほんとにキレイな人だ。
‥‥
いや、まておかしい。
「まてえええええ!」
私は思わず大声をだす。
VIPルームだが、外には聞こえてないことを祈る。
「うそ!私の誘惑をはねのけたのか?」
事前にアオに聞いていなければやばかった。
「あと0.5秒おそければ攻撃していたよ。」
アオがつぶやく。
「へー、すごいね。さすがアオや究姫が見込んだやつだね。」
凍子が感心している。
「ワタシはナンパされにここに来たわけじゃないんだ。究姫、いろいろ協力してくれるならそっちの話をしてもらいましょうか。」
ワタシは究姫の正面にすわる。
「ま、話がおわったら声をかけてくれ。」
そう言ってクロと凍子は隣のテーブルでデュエルウィザーズを始める。
「で、何から聞きたい?」
究姫は私の眼を見る。
「じゃあ、ストレートに聞くけど、あんたの目的はなに?」
「んー、まあ表現がむずかしいけど、一言でいうと趣味?みたいな?」
意味がわからない。
「わかるよう言ってほしいんだけど。」
「私はね。気に入ったやつに力を与えて、それをどう使うかを見るのが好きなんだ。」
【魔勇者】のことか?
「ちょっとまって、私によくわからない力がついた気がするんだけどあれはアンタのせいなの?」
「さあ、どうかな。あんたはまだ私の試練をこえてないから。今回のこの試練をこえたとき、アンタはたぶん新しい力を手に入れるよ。それがどんな力はアンタ次第。いっただろ、副賞をやるって。」
なんかそんなことをいってたな。
「ただ、こいつがやるとだいたい碌なことにならないんだよ。」
後ろにいるアオがいう。
「それを見てどうするの?」
「いっただろ、趣味だって。コレクションを眺めてうっとりする。みたいな?」
だめだこいつ。早く何とかしないと。
会話がつうじねえええ。
「じゃあ、聞くけどコウロもあんたのお気に入りなわけ?」
「コウロ?なわけないだろ?あんなの誰が気に入るんだ?」
ボロカス言うなこいつも。
まあ同感だが。
「じゃああんたとコウロの関係は?」
「特に何もないよ。なぜか、いろいろ気を使ってくれて、おいしいご飯とかたべさせてくれるんだけど!」
(居候か!)
心の中でつっこむしかない。
「じゃあ、なんであの場所にいたのよ。」
「チュウエイが言ってただろ【強奪者】ってスキルあれは、私が力をやったら、やつがあの力に目覚めた。」
こいつが黒幕かよ!
「ちょっと勘違いしないでよ。あの力になったのはあいつの心のありようだよ。しょうもないスキルになったもんだね。」
「なんか、殺した相手の力を奪うとかとんでもないことを言っていたけど 。」
「まず、スキルの能力上、基本的に自分より弱いやつしか奪えないし。いちいち相手を殺さないといけない。あんなのリスクが高すぎる。」
いやまあ、そうなんだが。
「それに、あのスキルはどう考えても、人の恨みを買う。あいつ長生きしないよ、きっと。」
いやまあ、そうなんだが、
「そんなまっとうなこというなら、なんで力なんか与えたわけよ!」
「まあ、今のあいつをみてればそうみえるだろうねえ。」
究姫は指をたてて笑う。
「あいつはもともと子供のころ辺境で召喚された異世界人だ。」
究姫は思い出すように目線を横にやる。
「辺境の最前線におくられて、来る日も来る日も魔獣やら異民族やらと戦っていたよ。」
「そして、やつは私と出会い、私は奴に恐ろしい試練をあたえ、それを乗り越えたのさ。」
私はつばを飲み込む。
「どんな試練を?」
あれほどの力を手に入れるため、こいつはチュウエイにどれほどの試練を与えたのだろうか。
想像もつかない。
「あれだよ。」
究姫はそう言って隣のテーブルでデュエル・ウィザーズをしている凍子とクロを親指でさす。
「私はやつとデュエル・ウィザーズをして、負けた。そして、私は負け金を払えず、代わりに力をやった。」
「‥‥…」私は話についていけずにだまる。
後ろのビゼンやヨクトも固まっている。
「究姫、あんた弱すぎるんだよ。おまけに働いてないから負けた金も払えない。」ゲームをしながら凍子がつぶやく。
「しょうもないわあああああ!アホかアアアア!」おもわず叫ぶ。
なんて迷惑な奴だ!こいつは!
邪神とよばれるのも納得だ。
「まあ、まちなよ。」
究姫が不服そうにつぶやく。
「私がやるのはチャンスだけだよ。どんな力を身に着けるかは、当人次第さ。昔には石をパンに変えるなんていうスキルで、平和的にスローライフを過ごした奴もいたぞ。それに……」
究姫が一息つく。
「さっきの凍子の私が弱いというのは聞き捨てならん、あいつが強かったんだ。」
「そこはどうでもええわ!」ツッコミが追い付かない。
「それに奴が目覚めたスキルは本来は使えないスキルだよ。しかし、やつは敵も味方も殺しまくって、力をつけていったのさ。」
ろくでもないやつに力をあたえてくれたもんだ。
「で、あんたはなんでチュウエイにひっついてんのよ。」
「それだよ、アビ。それだけならただ奴はただの強盗さ。しかし、おもしろいことに、奴は奴なりにこの国のことを考えている。私はそれを見ていたいのさ。」
「どういうことよ。あいつはもうコウロの手先でしょ。」
「たしかにね。だが、冒険者殺しも、コウロの手先をやっているのもあいつの中では必要だからやってるんだよ。」
究姫は好きな物語について話すかのように楽しそうにはなす。
「まっ、碌な死に方はしないとおもうけどね。クククク」
まさに邪神だな。
「チュウエイにも、いずれけじめはつけてもらわないといけないんだけど、まずはコウロだよ。ズバリ聞くけど、アイツはダークエルフ誘拐犯でしょ。どこまでかかわってるの?」
私は核心についてきく。
「話をしてるのは聞いたことがあるから、あいつがやってるのは間違いないだろうね。あのなんとかという奴隷商人の家が燃えたらしいし。どうせ犯人はコウロだろう。」
(しまった。先手を打たれたか。)
「あんたほんとにペラペラしゃべるわね。」
ジト目で究姫をみる。
「何をいってんだ。ここの店でもみんな知っている。奴隷商人がダークエルフを倍の値段で買い戻していたが、そのあとこの騒ぎだ。だれかが何かをやったとみんな思う。そしてそんなことをしそうなやつはコウロしかいない。」
「あの華姫ってのはなんだったの?あんたにタメ口を聞いてたけど。」
「あの子も、なかなかだった、私はなんども負けた。その実力をみとめて、タメ口を権利を与えてやったんだよ。」
「実力をみとめてって、まさか、それもカードゲームで?」
「そうだよ。」
当然のようにいう。
「認めてというか、負け分のかわりだろう。」
アオは、そういうとクロに変わって凍子とデュエルをはじめる。
「……」
黙り込む究姫。
図星か!
「で、あいつがダークエルフの誘拐に関わってる証拠とかないの?」
「証拠はしらないけど、証人ならいるよ。」
「え?だれ?」
期待していなかった答えが来た。
「ダークエルフを連れてきたやつがいるからね。隊長の名は確か……知らんわ」
おいいいいい!
肝心なとこしらないのか!
「いやまて、アビ。」
ビゼンがとめる。
「コウロは証拠隠滅に実行部隊、いや、関わったものたちを全員粛清するつもりじゃないか。」
「やりそうだな。」
ビゼンとヨクトが顔を見合わせる。
ワタシは一考する 。
「なら、ワタシに考えがある。もし外れていても、うまくいくと思う。」
「ほう?それはどんなものだい?」
関係ない究姫が興味を持つ。
「アンタには言わないわよ。口が軽すぎる。」
ワタシは席をたつ。
「でもヒントにはなった。一応、礼はいっておく。」
「まて。」
究姫の空気が変わる。
「悪魔に借りをつくったからには見返りはもらうぞ。」
やつの金色の目が輝く。
ク、こいつなにが目的なんだ。
「それにだ。アオに聞いていなかったのか?アビ、お前の傷を治療したのは私だ。」
そうだったのか。
クソ、こいつは次の手を計算してそこまでしていたのか。
「ワタシの右目は預けたでしょ。今度は腕でもよこせとでも?」
ビゼンとヨクトがワタシの前に立つ。
「クククク、そんなものじゃない。」
究姫が邪悪にわらう。
しまったかかわるんじゃなかった。
心底後悔した。
「クロと凍子のやつに負けた今夜の晩飯代、肩代わりしてもらおうか?」
「へ?」
なにを言い出すんだ、こいつは。
「こいつ、大概だろ。金もないのに、晩飯代をかけて勝負だ!とかいってたんだよ。馬鹿なことやってないで、働け。」
といって、クロがカードをめくる。
「またそのカード!?インチキ効果もいい加減にしろ お!」
凍子が叫ぶ。
「ヨクト、ここの料金、はらっておいてくれる…」
ワタシはヨクトに勘定をたのんだ。
あー、つかれた。
もう、かかわりたくないもんだ。




