第33話 コウロ邸に侵入する
夜、ワタシとビゼンはコウロの屋敷、奴隷の詰め所から一番近いところにひそむ
「アビ、本当にありがとう。」
ビゼンがあらためて、まっすぐ私の眼をみながらいう。
「お礼をいうのはすべてが終わってからだよ。」
ワタシ は少し口の端をあげる。
その瞬間、反対側で火があがる。
はじまった。
ヨクトの合図だ。
屋敷の中の様子をうかがう。
「どうした!」
「反乱軍の襲撃だ!」
「食糧庫のほうだ!」
そんな兵士の声が聞こえた。
よし。
ワタシとビゼンはうなずき、塀をのりこえ、コウロの屋敷に忍び込む。
屋敷の中に入り様子をうかがう。
奴隷の宿舎まで警備の目は届いていなかった。
私たちは簡単にそこに忍び込む。
宿舎の中には10人ほどのダークエルフたちが押し込まれている。
「みんな大丈夫か!」
ビゼンが仲間たちに声をかける。
「おまえ、ビゼンか!」
「よくここまで」
ダークエルフたちがおどろく。
「ここから逃げるぞ!」
ビゼンが仲間たちを促す。
「だめなんだ。」
そういって1人が首輪をさす。
「これにコウロの魔導士が遠隔から魔力をこめると爆発するんだ。」
「見せて。」
ワタシがその魔道具をみる。
ワタシの【翻訳者】が、魔道具の刻印を読み取る。
『魔道士が魔力を込めると爆発する。射程距離は100m。』
「大丈夫、射程距離は100mほどらしい。短い。射程距離から離れてしまえばいい。」
ビゼンがうなずく。
「あと、残っているものはいないか。」
「あと3人だ。コウロの私邸で寝泊まりさせられている。こどももいる。」
「わかった。とりあえず、いこう。」
ワタシはビゼンに声をかける。
「みんなは北門にむかって、そこに馬車が用意してある。私たちもあとからいく。」
ビゼンも仲間たちに声をかける。
◇
「こいつ、剣も弓も聞かんぞ!」
兵士たちが絶望的な声をあげる。
飛来する矢はヨクトの肌に触れる前に、見えない力に弾かれて地面に落ちた。
「おらあ!革命軍だ!」
ヨクトが槍を振り回すたびに警備の兵が吹き飛ぶ。
スキル【豪傑覇気】は物理攻撃を無効化する。
通常の武器は彼には通じなかった。
「魔導士だ、魔導士をよべ!」
魔道部隊がヨクトを囲む。
その瞬間!
ヨクトの豪傑覇気のもう一つの能力が発動し、魔導士たちはなにもできず昏倒する。
「寝てな!」
ヨクトは倒れた兵を睥睨する。
ヨクトが敵兵を集めている間に彼の手勢が火を放つ。
「このまま、全部燃やしちまうか!」
ヨクトが仁王立ちする中、コウロの兵たちが遠巻きに彼を包囲する。
「魔法はどうした!」
コウロの隊長がさけぶ。
「しかし、この距離ではなつとコウロ様の屋敷にも被害が!」
「クソ!」
兵たちが怯んだ隙を見逃さず、ヨクトが突っ込む。
その瞬間、ほとんどの兵士が【豪傑覇気】にあてられ卒倒する。
「どうした!ちったあ、ましなやつはいないか!」
ヨクトが吠える。
その時敵兵がざわつく。
「レツオウ様!」
「レツオウ様が来て下さったぞ!」
1人の戦士がヨクトの前に立つ。
「今度はお前が俺の相手をしてくれるのかい?」
ヨクトが槍を構える。
「おおおおお!」
レツオウが咆哮した瞬間、その手にある剣が爆発的な炎に包まれた。
『猛虎炎舞!』
「うお!」
ヨクトは思わず槍で受け止めるが――
「あちいい!」
炎が舞い、覇気の壁を突き抜けて「熱」が押し寄せる。
「やるじゃねえか!」
距離をとるヨクトに、レツオウが追撃の炎の剣を放つ。
「賊に褒められてもな!」
進撃する虎のように槍の間合いのさらに外から、 炎の剣を振るうレツオウ。
「魔導士のサポートなしでこれはきついか!しかし!」
自分の役目はあくまで時間稼ぎ、元からまともに戦う気はない。
レツオウも剣を振るいながら違和感に気づいていく。
(なんだこの男、殺気がない。)
(まさか陽動か!)
火花を散らす刃の向こう側、ヨクトの視線が、一瞬だけ屋敷の深部へ向けられたのをレツオウは見逃さなかった。
レツオウはヨクトの策を看破する。
(なんだ、あの方向、重要なものはなかったはずだ。)
(なにが狙いだ。)
(しかし、自分がここを離れるとこの男をとめることもできん。)
「ええい!」
レツオウは苛立ちを叩きつけるように炎の剣を振るう。
ヨクトはその魔剣を華麗にさばいていく。
◇
ワタシとビゼンはコウロ私邸の裏庭にまわった。
「ここからコウロの寝室に忍び込めば。」
ワタシが呟いたとき、気配が膨らんだ。
気づいた時には、もう遅かった。
四方から、兵が湧いて出る。
バレたのか。
「貴様、アビとかいう娘か、まさか生きていたとはな。」
一人の男が前に出る。
身長2メートル近い巨漢。
猛獣 のような四肢。
「久しぶりね。ロフ」
「アビ、知り合いか?」
ビゼンがやつから目をそらさず尋ねる。
「ええ、あの例のチュウエイの仲間よ。まさかこんなところで会うなんてね。てことは、あのチュウエイのやつもここにいるってこと?」
ワタシもロフに向けて構える。
「さあ、どうだかな。それよりも…」
やつは巨大な戟をゆっくりこちらに向ける。
「おとなしく降伏すれば痛い目にあわずにすむぞ。貴様が今やっているのは不法侵入というやつだ。」
「人の家に平気で強盗するやつがよく言う。」
「やつもかなりの実力者だな。私がやつの相手をする。アビはまわりのやつをたのむ。」
「わかった。」
そういうと、ビゼンはロフに向かって爆発的な突撃をする。
ビゼンの薙刀が振り下ろされ、やつは戟でそれを受け止めようとする、
が、ビゼンは戟もろともロフを袈裟斬りにした。
ビゼンのスキル【闘神】は防御を無効にし、青竜冷艶鋸は全てを切り裂くのだ。
その瞬間
【飛将】解析不能
【再生の炎】解析不能
「やばい!」
ワタシはおもわず声に出る。
二つ同時に、しかも解析不能スキルが発動するなんて!?
が、しかし、
袈裟斬りにされ、血を噴き出しているはずのロフが。
意に返さず動いた。
ビゼンが薙刀を振り切った直後の、無防備な一瞬。
そこに、正拳突きが叩き込まれた。
ビゼンの身体が吹き飛ぶ。
「まさか、オレの戟も鎧も紙のように切り裂くとは、オレでなければ終わっていたな 。」
「ビゼン!」
ワタシは声をあげてビゼンに駆け寄る。
そして、ロフをみると、傷どころか、戟も鎧も復元されている。
「不死身か。」
ビゼンがいまいましそうに呟く。
この復元能力がやつのスキルなのか。
しかし、2つ同時に発動するとは。
「お前達手を出すな!こいつらはオレが相手をする!」
ロフが部下を制し、闘気を膨らませる。
「ならば、細切れになっても復活できるか見てやる!」
ビゼンが吠える。
『身体強化』
私もビゼンと自分にハクエイから教わったドーピングをかけ、ロフに仕掛けた。
【飛将】自らの闘気を武具に具現化し自身を大幅に強化する。
自分でも驚いた!
私も自分を強化することで、解析能力がアップするとは。
「ビゼン!こいつの能力は武具の具現化と身体強化だ!」
「わかった!」
「ほう、オレの能力を解析したのか!おもしろい!」
そういうやいなや、やつとビゼンの前に大盾が出現する。
「こんなもの!」
ビゼンがそれを一刀両断にするが、斬られた盾が弾ける瞬間にロフの戟が死角から迫る。
ということは、もう一つの【再生の炎】が再生能力か!
しかし、こういう戦い方もある。
『氷散弾』
ロフの手元めがけて凍気の散弾をはなつ。
ロフの手元が凍る。
動きが止まったコンマ数秒——。
「おおおおおおおお!」
その瞬間雄叫びをあげてビゼンが肩口からロフを真っ二つに切り裂く。
【再生の炎 】対になる相手が生存する限り死からも蘇生し、再生する。
「まじか!」
【翻訳者】の解析に思わず声にでる。
「ビゼン、こいつには勝てない!」
「おおおおおおおお!」
ロフは切り裂かれながら戟をふるい、ビゼンが切り裂かれる。
「どういうことだ!アビ!」
切り裂かれながらもビゼンは態勢を整える。
「こいつはどうやら不死身らしい。普通に戦っていても勝てないみたい。」
「クッ……ならばどの程度不死身か試してやる!」
ビゼンが再び挑もうとする。
「まって。不死身でも足止めくらいはできる。ワタシがこいつの足止めをしてる間に、ビゼンは仲間たちを。」
「しかし…」
「はやくいって!」
そういったときロフから思いもかけない言葉がでた。
「まて貴様ら。貴様らの目的はコウロ公の首ではなく、ダークエルフなのか?」
「そうよ。だったら何?見逃してくれるとでも?」
ロフは沈黙した。
そして、意外すぎる言葉を吐いた。
「そうか…。撤収するぞ!」
「へ?」
おもわず声に出る。
今なんと?
「将軍どういうことですか?」
敵ながらごもっともなツッコミがでる。
「俺たちはコウロ閣下の身を守れと命令された。奴隷どもの身など管轄外だ。 」
(まじか、こいつどういうつもりだ。)
「貴様、どういうつもりだ?」
ビゼンが問う。
「聞いての通りだ、オレの仕事は奴隷の護衛ではない。それにそっちのアビという女には借りもあった。次あったときは容赦せんぞ。」
何を言ってるかわからない。
でもこれはラッキーだ、そう思ったとき、頭上から悪夢のような声が響いた。
「いーけないんだ、いけないんだ~!コウロ閣下にいうてやろー!キャハ!」
茶色の髪に悪魔の角、
そこにはあの悪魔、華姫が浮かんでいた。
しかもダークエルフの子供を魔法のロープで縛り付けて。
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