第3話 正体不明の魔法使い?に拾われた
朝食を食べながら、ワタシはようやく状況を整理し始めた。
「……あのさ」
「なに?」
「ワタシ、死んでないよね?」
「死んではいないよ。私はともかく、君は死にかけていたけどね」
アオは、スープを飲みながら答える。
「あんたも、死んだはずじゃない? チュウエイに、刺されたじゃない」
「ああ、あれね」
アオは、口元に笑みを浮かべた。
「死んだふりしてたんだよ」
「…………は?」
「あまり関わるつもりはなかったんだけどね」
アオは、本当に面倒くさそうに言った。
「君が助けてくれようとしたから、ちょっと感動したんだけど、結局君が刺されちゃったから、仕方なく起きたの」
「仕方なく!?」
「それで、あいつらは家探ししたらとっとと出ていったわけ。それから君を治療したんだよ。もっとも、何か言い合いしてたみたいだけどね」
アオは涼しい顔で答えた。
――この人、絶対普通じゃない。
でも、嘘はついてない。
「食べ物も、お金も、全部なくなってしまったよ」
「…………」
ワタシのせいだ。
ワタシがチュウエイなんかを信じたから。
思い出す。
あいつの笑い方。
あいつの目。
「使えねぇな」と吐き捨てた声。
腹に剣が入った瞬間の、あの冷たい顔。
思い出した瞬間、指先が震えた。
「ごめん……」
「謝らなくていいよ」
アオは、優しく笑い、ワタシの頬をそっと撫でる。
「君は、私を守ろうとしたじゃないか」
その言葉に、胸が熱くなった。
温かい。
この人の手は、とても温かい。
でも――
心の奥には、まだ冷たいものが残っている。
「それより、君、これからどうするの?」
「……冒険者ギルドに、報告しないと」
そう言いながら、心の中で誓う。
チュウエイ。
次に会ったら、今度は負けない。
今度は、誰かを守って見せる。
「ふうん。じゃあ、こうしよう」
アオが腕を組んで言った。
「私を町まで護衛してほしい。さっきも言ったけど、食べ物もお金もない。町の知人を頼るつもりなんだ。報酬は、着いてからその知人に払ってもらうよ」
「え? ワタシでいいの? 正直、弱いけど……」
自信はなかった。
さっきだって、チュウエイに一撃で倒された。
あのときの無力さが、まだ体に残っている。
「大丈夫だよ。君は、私を守ろうとしたじゃないか」
アオは、楽しそうに言う。
「私にとっては、立派な"勇者様"だ」
勇者様。
そう呼ばれて、顔が熱くなった。
ワタシは、勇者なんかじゃない。
ただの、異世界から来た冒険者見習いだ。
でも――
この人は、ワタシをそう呼んでくれた。
「……わかった」
ワタシは、頷いた。
「アオを、町まで送る」
「ありがとう」
アオは、微笑んだ。
そして、立ち上がって荷物をまとめ始める。
ワタシは、ぼんやりとその背中を見つめた。
――この人、嘘はつかない。
でも、全部は言わない。
そして、たぶん――
とんでもなく強い。
でも、今は――
ワタシが、この人を守る。
そう決めた。
チュウエイ。
あいつのことは、忘れない。
だが――
この時のワタシは、まだ知らなかった。
ワタシが冒険者ギルドで、"死亡確認"されていたことを。
そして、この女が、世界最強の一角と恐れられる存在だということを。
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