第3話 死んだはずの私が、正体不明の魔法使いに拾われた
「ワタシは……死んだはずじゃ?
いや、あなたも死んだはずじゃない?」
自分でも、何を言っているのかわからなかった。
「死んではいないよ。
私はともかく、君は死にかけていたけどね」
女性は、口元にかすかな笑みを浮かべて答える。
両目は包帯のような布で覆われている。
それなのに、その視線は、まるでワタシを正確に捉えているかのようだった。
「……見えてるの?」
「これはファッションみたいなものだから、気にしないで。
君のことは、ちゃんと見えているよ」
「それ、スキル?」
思わず口にしていた。
「まあ、そんなところだよ。
それより君は何者だ? 野盗かい? 女の野盗とは珍しいね」
「ち、違う。
ワタシはアビよ。あんたは?」
「私は……そうだね。アオと呼ぶといい」
“呼ぶといい”。
本名じゃない、ということか。
よく考えれば、
この人から見ればワタシは強盗の仲間だったはずだ。
警戒されて当然だ。
「……あいつらはどこへ行った?
それに、ワタシの傷はどうして……あなたも、なぜ無事なの?」
混乱したまま、問いを重ねる。
「質問が多いなあ。
さあ、すぐに出ていったみたいだけど」
アオは、特に困った様子もなく答えた。
「食べ物も、お金も、全部なくなってしまったよ」
ふと、本棚に目をやる。
並んでいるのは、魔導書らしき本ばかりだった。
盲目の人が本など読むはずがない。
「あんた、魔法使いか?
じゃあ、これは回復魔法か、何かか」
「へえ、君、これが読めるのか。大したものだね」
アオが、少し意外そうにうなずく。
……まあ、これは魔法使いだからじゃない。
ワタシのスキルのおかげなんだけど。
「君、これからどうする?」
「あいつらを追う。
いや、その前に、冒険者ギルドに報告しないと」
あいつらは――
こっちの世界で言うところの、闇バイトだ。
まさか異世界に来てまで、
ワタシがそんな連中に関わることになるとは。
絶対に、許さない。
「ふうん。じゃあ、こうしよう」
アオが腕を組んで言った。
「私を町まで護衛してほしい。
さっきも言ったけど、食べ物もお金もない。
町の知人を頼るつもりだ。
報酬は、着いてから払ってもらう」
「え? ワタシでいいの?
正直、弱いけど……」
自信はなかった。
野盗や魔物に襲われたら、守れる保証はない。
それでも――
このまま放っておくわけにもいかなかった。
「大丈夫だよ。
君は、私を守ろうとしたじゃないか」
アオは、楽しそうに言う。
「私にとっては、立派な“勇者様”だ」
そこまで言われて、断れるはずがなかった。
ワタシはアオの護衛として、町へ戻ることにした。
チュウエイ。
絶対に、許さない。
だが――
この時の私は、まだ知らなかった。
私が冒険者ギルドで、
“死亡確認”されていたことを。
そして、
この女が、世界最強の一角と恐れられる存在だということを。




