第27話 革命軍隊長リョーカの悲劇
(なぜこんなことになってしまったんだ……)
リョーカは震える手でカードを引きながら、人生を振り返った。
幼い頃、母に言われた言葉がある。
リョーカ、お前は真面目だから、きっといい兵士になれる」
お母さん。
あなたの息子は今、悪魔、四凶とカードゲームをしています。
育ててくれてありがとうございました。
もう会えないかもしれません。
種目はカードゲーム『デュエル・ウィザーズ』。
子供から大人まで人気の、魔法やスキルの勉強にもなる知的な遊戯だ。
しかし、今、リョーカが相手にしているのは——この世の災厄、四凶の一柱・凍子。 なぜ自分がこんな怪物と卓を囲んでいるのか、リョーカにはもう分からなかった。
ふと、視線を右にやる。 そこには、見事な彫刻のようにカチカチに氷漬けにされた若い兵士が一人。
理由は、わざと負けたから。
「お兄さんもやろうよ!」
凍子の無邪気な誘いに、兵士は「ははは、いいぞ。お兄さんは強いぞ」と気軽に受けてしまった。
それがこんなことになるとも知らずに。
「わざと負けないでね。わざと負けたら罰ゲームだよ。安心して、透視なんかは使わないから」
「いいぞ! しかし君、そんなことができるのか! すごいなあ!」
目の前の少女が、実際にそれを実際にできる存在だとは夢にも思わず、兵士は笑って流した。 リョーカが隣で滝のような冷や汗を流していることにも気づかずに。
そして・・・
「デビルドッグでダイレクトアタック!」
凍子がさけぶ。
「ああ、負けてしまったよ。」
兵士がわざとらしく、苦笑いを浮かべた。そのときだった。
凍子が伏せられたカードを確認もせず、静かに告げた。
「お兄さん。今、透視した(みた)けど。その伏せカード、トラップ魔法『リフレクトバリア』だよね。なぜ使わなかったの?」
「え? いやあ、忘れてて……っていうか、なんでわかったの?」
その瞬間、凍子の眼が冷たくひかる。
「お前、わざと負けたな。私を馬鹿にしたな、罰ゲーム!『氷柱』」
その瞬間、若い兵士が叫ぶ間もなく氷漬けになる。
「ひいいいいいい!」
リョーカは思わず叫び声をあげる。
「数日、解けるまで反省してろ。死にはしないよ」
凍子が不満そうに頬を膨らませる。
「ア、アオ様、たすけてください。」
リョーカはアオに助けをもとめる。
「これはしょうがないでしょう。ゲームなんだから。最悪、凍傷で手足がぽっきり折れても、私にゲームで勝てばなんとかしてあげるから。」
「そ、そんな。」
アオとも対戦してみたが、彼女のデッキは恐ろしく強かった。
入手困難なレアカードが惜しげもなく並び、さらには「本気でやる」と言って目を覆う布を外した彼女の素顔"美の化身そのもの"に見惚れている間に、無惨に完敗した。
一方、凍子のプレイングは並みの人間と変わらない。
勝つこともあれば、負けることもある。だが、問題はそこではない。
問題は・・・
「ぐぬぬぬ、いいカードがこない・・・」
パキ。
パキパキ。
パキパキパキパキ。と音が鳴る。
凍子がイラつくと同時に室温が急降下し、給仕されたばかりの温かいコーヒーに氷の膜が張り始めた。
そして・・・
「ちょっと、お兄さん、このコーヒー凍ってるんだけど!」
(それはあんたのせいだ!)
叫びそうになる喉を必死に抑え、リョーカは新たな兵士にコーヒーを運ばせる。
そしていま、またしても選択の時がやってくる。
こちらには攻撃力1900のダークエルフの戦士。
凍子の場には攻撃力1000のソードラビット。
そして凍子のHPは500。
これが通ればリョーカの勝利だ。
しかし、凍子の場には伏せカードが一枚。
「いやー、この攻撃をくらったら私負けちゃうなー(棒)」
どう見ても、あの伏せカードはトラップだ。
そして自分の手札にはトラップ破壊魔法「魔法旋風」がある。
これを使えば、あの伏せカードが壊せる。
しかし、現在凍子は3連敗中。
テントの周囲はすでに猛吹雪のような冷気に包まれ、外の兵士たちがガタガタと震えている。もし4連敗なんてさせたら、罰ゲーム以前に野営地が消滅するのではないか。
リョーカはアオのほうをみる。
アオは優雅にコーヒーを飲んでいた。
なぜか、アオのコーヒーは温かいままだった。
「アオ様……」
「あら、どうしたの」
「助けていただけますか」
「ゲームには干渉できないよ」
「そうではなく——」
「あ、でも凍傷で手足がぽっきり折れても、私にゲームで勝てばなんとかしてあげるわよ」
(あんたのデッキにも勝てないんだアアア!)
(なんで私がこんな目に!なんで!なんでなんでなんで!)
(アビさんのせいだ!ヨクトのせいだ!あいつらが早く帰ってこないから!)
(いや待て、落ち着け、落ち着くんだリョーカ。深呼吸。深呼吸だ)
(考えろ。最善手を選べ。私は隊長だ。危機管理のプロだ)
(わざと負ければ死ぬかもしれない。しかし勝っても死ぬかもしれない)
(……何が最善だ。何が——)
「お兄さん、まだ?」
凍子が急かし、リョーカはついに決断をする。
「トラップ破壊魔法「魔法旋風!」」伏せカードを攻撃します。」
「その瞬間をまっていた!」
凍子の目が輝く。
「カウンターマジック——魔道逆風! ダークエルフの戦士、破壊!プレイヤーは破壊された攻撃力分のダメージを受ける!」
「モンスター破壊……よかっ——」
声が漏れた。
凍子の動きが止まる。
「よかった?どういうこと?わざとやったの?」
凍子の眼が細くなる。
「ち、違います! そう、予感はしていたが、やはりそうだったのか! くやしい! ……と言おうとしたのです!」
「そ、そう?私のほうが読みが上だったということね、ハーッハハハ!では別の兵士も読んできてよ。できる人いるでしょ」
「え?別のひとですか?」
「このゲームは平等だからおもしろいよねえ。」
凍子が満足げに笑う。
(どこが平等だアアアア! アビさん、ヨクト、早く戻ってきてくれえええ!)
リョーカは届かぬ叫びを心の中で上げ続けるのだった。
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