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冒険者ギルドで死亡扱いされた私が、神と邪神に愛され最強で最高のダークヒロインになる。  作者: 黒木菫
刻印受呪~刻印~編

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第25話 奇跡をみせる

「警備隊長アマン……」


ワタシは、その名前を呟く。


「どんなやつなんだ?」


ヨクトが確認する。


「法に厳しくてな」


ハクエイが、腕を組む。


「何度もコウロの派閥の貴族どもを取り締まって、危うく殺されかけたこともある」


「官軍にも、そんなやつがいるのか」


ヨクトが驚く。


「やつも、奴隷商人のことは探りたいと思ってる」


ハクエイが、苦い顔をする。


「しかし、家宅捜索をする証拠がなかったんだ。おそらくは、コウロが圧力をかけてるんだろうよ」


「……クソ」


ヨクトが、拳を握りしめる。


「だが、ビゼン。お前がいれば別だ」


「私が?」 ビゼンが、ハクエイの眼をまっすぐ見る。


相変わらず、彼女の眼は鋭く美しい。


「ビゼン、あんたは誘拐の生き証人だ」


ハクエイが、テーブルに身を乗り出す。


「誘拐現場でカクの名前を聞いたとでも言えば、アマンも捜査くらいはできるはずだ」


「……なるほど」


「やつも、カクとコウロのつながりは知りたがっている。多少強引でも、協力してくれるはずだ」


なるほど、力業よりよっぽど名案だ。


しかも、合法的にできるなら、それに越したことはない。


「ビゼン、それでいい?」


ワタシは、ビゼンに確認する。


「ああ。犠牲が出ずに、穏便に解決できるなら、それが一番だ」


ビゼンもうなずく。


しかし、ワタシは疑問をハクエイにぶつける。


「でも、一つ聞かせて」


「なんだ?」


「革命軍が国を倒したいというのは分かる。でも、ダークエルフを解放したいというのは、なぜ?」


ハクエイは、少し間を置いて、ユウさんを見る。


「……こいつだよ」


「え?」


「こいつと一緒になって、初めて分かったんだ」


ハクエイが、静かに言う。


「エルフと人間の子が、いかに居場所がないか」


「……」


ビゼンが、じっとハクエイを見る。


「ビゼンと言ったね」


ユウさんが、ビゼンに向き直る。


「あんたたちダークエルフの気持ちが、少し分かった気がするよ」


「……どういうこと?」


「このバカがね」


ユウさんが、ハクエイを指差す。 「あたしの足がこうなったって、冒険者は廃業して一生、私の足になるとか、馬鹿なこと言い出すもんでね」


「おい、やめろ」 ハクエイが、顔を赤らめる。


「人間の方が先に死ぬに決まってるのに」


ユウさんが、苦笑する。


「それで、数十年くらい付き合うのも悪くないかと思って。一緒になった」


ユウさんは、自分の義足に目を落とす。


「でも、現実は難しかった」


「……」


「私の足を、ちゃんと見てくれる神官も少ない。子供たちを受け入れてくれる学校を探すのも、苦労した」


ユウさんは、もう一度ビゼンを見る。


「私たちエルフは、ダークエルフにこんな扱いをしていたんだね」


「……アンタ」


ビゼンの声が、震える。


「初めて、分かったよ」


ユウさんが、静かに微笑む。


「……ありがとう」


ビゼンが、小さく呟く。


ワタシは、二人のやり取りを見て、胸が熱くなった。


「まあ、そういうわけだ」


ハクエイが、照れくさそうに頭を掻く。


「革命どうこう言うより、オレが勝手にやってるだけだ。ありがたく思えよ」


初対面の印象は最悪だったが、悪い奴じゃない。 彼も、自分の守るものがあったんだ。


(……ハクエイ、いいおっちゃんだな)


ワタシは、ユウさんの義足を見る。


(アオの水……)


(試してみる価値はある、やってみよう)


「ねえ、ハクエイ」


「なんだ?」


「この借りは、返しておこうか」


ワタシは鞄から、アオの魔力が込められた水を取り出す。






「そうか、それか!」


ヨクトは、ワタシのやろうとしていることを理解する。


「ユウさん、この水、飲んでみてくれない?」


ワタシはコップに水を注いで、ユウさんに勧める。


「ああ、義足を外してね」


「なんだい? これは」


ユウさんが、コップを手に取る。


「私も鑑定スキルを持ってるが、どう見てもただの水だけど」


訝しがるユウさん。


アオの神の力は、並みの鑑定スキルでは反応すらしない。


「いいから。騙されたと思って、おまじないだと思って」


「まあ、いいけど」 ユウさんは、義足を外す。 そして、水を飲んだ。


--- 次の瞬間。


「こ、これは……」


ユウさんが、声を震わせる。


「どうした? ユウ!」


ハクエイが、ユウさんの肩を掴む。


「おい、お前、こいつに何を飲ませた!?」


「ち、違う……これは……」


失われていた右足の切り口から、眩いばかりの青白い光が溢れ出した。


光の粒子が糸を引くように宙を舞い、失われた部位を優しく包み込んでいく。


再生は、一瞬だった。


呪いなど、この世に最初から存在しなかったかのように完全に無視して。


光の奔流の中で肉が、骨が、皮膚が、滑らかな輪郭を描き出す。


光が霧散したとき、そこにはかつての傷跡一つない、健康な足が形作られていた。




「……嘘だろ」 ハクエイが、息を呑む。


「こ、こんな……」


ユウさんが、震える指先で新しく再生した足を、確かめるようにそっと触れる。


「動く……私の足が……動く……」


涙が、ユウさんの頬を伝う。


「ユウ……」 ハクエイが、ユウさんを抱きしめる。


「……よかった。本当に、よかった……」


ハクエイの声も、震えている。


「こ、こんな!」


ハクエイが弾かれたように顔を上げ、ワタシの方を向く。その顔は驚愕に染まっていた。


「大金はたいて購入した完全回復薬フルポーションですら効かなかったんだぞ!」


「私の鑑定じゃあ、これはただの水にしか見えなかった……」


ユウさんが、コップを見つめる。


「こんなことは、初めて見るよ……まさか、これが伝説のエリクサーなの!?」


「私の仲間に、ちょっと特殊なスキルを持ってるやつがいてね」


ワタシは、アオのことは伏せて話す。


(念のためと思って持ってきて、良かった……)


「アビ……」 ハクエイが、ワタシの肩を掴む。


「……ありがとう」


ハクエイの目が、赤い。


「お前は……本当に……」


「いいのよ。ハクエイたちが、ビゼンを助けてくれるんだから」


ワタシは笑う。


「お互い様でしょ?」


「……ハハハハハ!」


ハクエイが、豪快に笑う。


「アビ! お前は最高だ!」


「こっちこそ、デカい借りができちまったな!」


ハクエイが、ワタシの背中を叩く。


「今日は好きなだけ食って飲んでくれ! 仕事の話は終わりだ!」


このおっちゃんとは、うまくやっていけそうな気がする。 そんな気がした。


-




---


一方、そのころ。 革命軍野営地。


「隊長、ちょっと相談がありまして」


兵士が、隊長リョーカの元に一人の少女を連れてくる。 黒いショートヘアの美少女。


年の頃は、十代半ばくらいだろうか。


(なぜ、こんなところに子供が……?)


「どうしたんだ、この子は?」


リョーカが兵士に尋ねる。


「は。それが、アオ様に会わせてほしいと……」


「アオ様に……?」


リョーカは、眉をひそめる。


「なぜ、ここにアオ様がいると?」


リョーカは再び、少女へと視線を戻す。少女は、にこやかに笑っていた。


だが――。


その瞳は黒く、

その笑顔は、どこか禍々しい。


「アオ、その中にいるんでしょ」


少女が、まるで近所の友人に呼びかけるような軽い口調で言った


凍子トーコが来たと伝えてよ。もっとも、向こうはもう分かってると思うけど」


その瞬間――。


リョーカの背筋を、氷の刃でなぞられたような悪寒が走り抜けた。


(アオ様を……呼び捨て……!?)


(いや、待て)


(この子は今、何と……)


「ト、トーコ……」


リョーカの声が、震える。


「いや、トーコ様……?」


リョーカは、つい先日、その名を聞いたばかりだった。


四凶。 凶神。 この世の災厄と言われている魔神。


「私の名前を知ってるんだ?」


凍子が、無邪気に首を傾げて笑う。


「じゃあ、話は早いよね。暴れるなって、究姫キュウキにも言われててさ」


(……マズい)


(マズいマズいマズい!)


リョーカの額から、滝のような冷や汗が流れ落ちる。


(そんなやつを、アオ様に会わすわけには!)


(しかし、自分がどうこうできる相手じゃない!)


(どうする、どうする、どうする!?)


リョーカが、呼吸を忘れて 固まっていると――。


「あら、凍子」


後ろから、アオの声がかかる。


「また何しに来たのよ」


究姫キュウキのやつがうるさくてさ」


凍子が、肩をすくめる。


「アンタを見張ってろって」


「それで、わざわざこんなところに?」


「いつものゲームでもしようよ。デュエル・ウィザーズ」


「いいよ。暇だしね」


アオが、リョーカに向き直る。


「ごめん、リョーカさん。この子にコーヒー出してあげてくれない?」


「ミルクと砂糖、たっぷりでね」 凍子が、にこやかに笑う。


(……コーヒー?)


(四凶が……コーヒー?)


(ミルクと砂糖たっぷり?)


リョーカが、思考停止しかけたその時――。


「隊長」 若い兵士が、リョーカに耳打ちをする。


「この子、口の利き方がなってないですよね。ちょっと注意した方がいいんじゃないですか?」


その瞬間――。


リョーカの顔色が、土気色を通り越して真っ青になった。


「余計なことをするんじゃああああない!」


リョーカが、兵士の襟首を掴む。


「絶対にだ! 絶対に余計なことはするな!」


「ひ、ひいっ!?」


「お二人の相手は私がする! お前はすぐにコーヒーの用意をしろ! ミルクと砂糖、たっぷりでだ!」


「は、はい……?」


兵士が、固まる。


「復唱はどうしたああああああ!」


「は、はい! ただいまコーヒーを用意いたします! ミルクと砂糖をたっぷりで!」


「よし! 走れ! 全力で走れ! 今すぐだ!」


リョーカに言われ、若い兵士はすっ飛んでいった。


---


「ねえ、アオ。あの人、なんであんなに必死なの?」


凍子が、不思議そうに首を傾げる。


「さあ? 何かあったのかもね、たとえば急に魔神がきたとか」


「あー、だったらその魔神に早くコーヒーでも出さないとね」


凍子がケラケラ笑い、カードを切りながら答える。


---


(今……)


(今、この国の運命は……)


(いや、世界の運命は……)


(自分にかかっているのでは……)


リョーカは、冷や汗をかきながら、カードゲームに興じる二人の魔神を、遠目に見ているのだった。


(……コーヒー、間に合ってくれ……)


(頼む……間に合ってくれ……)


(砂糖は多めだ……絶対に多めだ……ミルクも忘れるなよ!)

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