第23話 奴隷市場にて
「奴隷市場なら、ここだよ」
冒険者ギルドについて、受付に座っていた女性に聞くと、驚くほど簡単に教えられた。
「もう一つ教えてほしいんだけど、最近、ダークエルフが奴隷で出回ってたりしない?」
ワタシは、受付の女性に尋ねる。
「あー、出回ってるよ。わりと高値だから、あまり売れてはいないみたいだけど」
ギリ。
ビゼンが、拳を握りしめる音が聞こえた。
「ありがとう。世話になったわ」
ワタシはそう言うと、ビゼンとともに奴隷市場の方に向かった。
---
奴隷市場。 この国は、奴隷も一つの産業となっている。
忌々しい。
しかも皮肉なことに、奴隷産業が大きく広まるきっかけになったのが、勇者であり革命家のヨウトと、今の王・レイ王らしい。 ワタシがこの世界に来る数十年前の話なので、詳しくは知らない。 だが、魔王を倒しても、この世界はハッピーにはならなかった。
それは確かなようだ。
(なんで、そんなことになったんだろう……)
誰に聞いても、ちゃんとした答えが返ってこない。
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「アビ、見ろ」
奴隷市場が近づく。
遠目でも分かる。
奴隷たちが、檻に入れられている。
その中には、ダークエルフもいる。
「ビゼン、焦らないで。目立たないようにね」
そう声をかけはしたものの、ビゼンは早足で近づく。
一人のダークエルフの男性が、足に鉄球を繋がれ、壁の方を向いている。
「……」
ビゼンが、小声で声をかける。 男は、無視する。
「私だ。ビゼンだ」 ビゼンはマスクを取り、顔を見せる。
「……なに?」
男は、ようやくこちらを向く。
「……お前、ビゼンか」 男の目が、見開かれる。
「よく、ここまで……」
「シッ!」
ビゼンは口の前に指を立て、再び仮面をつける。
「他の連中はどうした? 誰がやった?」
「分からん。子供たちを人質にされ、逆らえなかった。女は……売られて、どこかに連れ去られてしまった。逆らった男は、だいたい殺された」
「クソ!」
ビゼンが、拳を握りしめる。
「子供たちは?」
ワタシは、男に確認する。
「分からない。おそらく、売られてしまったと思う」
許せない。
怒りが込み上げてくる。
「ビゼン、あんたなら、この人だけでも助けられるよね」
「ああ。だが……そんなことをすれば……」
ビゼンは、声を詰まらせる。
「違うわ」
ワタシは、はっきりと言う。
「まずは、この人を助けるのよ。もしバレたら、ワタシができるだけ暴れる。その隙に、他の奴隷も解放する。そうすれば、あんたの仲間も解放できる」
「しかし……」
「明日、この人がここにいる保証はない。助けるなら、今しかない」
「……わかった。アビ、感謝する」 そう言って、ビゼンが薙刀を振りかざそうとする。
「おい、そこ! 何をしている!」
まずい、警備に気づかれた!
暴れるしかないか! そう思った時――。
--- 【白狼】解析不能 ---
え!? これって…… そう思った瞬間、ワタシの体は何者かに抱えられ、高速で運ばれる感覚だけが理解できた。
ドサッ!
「いた!」
思わず声が出て、地面に転がる。
横で、ビゼンも転がっている。
「分かった、分かった。奴隷市場で大立ち回りするような奴が、官軍なわけがねえ」
見上げると、さっきのハクエイが立っていた。
景色を見回すと、100歩くらいの距離を一瞬で移動したらしい。
しかも、ワタシたち二人を抱えて。
ワタシたちがさっきまでいた場所では、警備の男が不思議そうにキョロキョロと周りを見回している。
「アンタ……」
ワタシは、ハクエイを見つめる。
「あんたらの後をつけてたんだよ。官軍のスパイなら、そのまま官軍に密告に行くはずだからな。まさか、奴隷市場で暴れようとするとは思わなかったぜ」
呆れるように答える。
「じゃあ、ハクエイ。アンタに何か名案が?」
ワタシは、立ち上がりながら彼に答える。
「ああ、ある。しかし、ダークエルフ、あんたの協力も必要だ」
「ビゼンだ」
ビゼンが答える。
「ああ、ビゼン。よろしくな。安心してくれ。オレはダークエルフだからって差別はしない。それと、お嬢さん、あんたは……」
「アビよ」
「ビゼンにアビ、だな。改めてよろしくな。オレはハクエイ。自慢じゃないが、Sランク冒険者でもある。だが、そのおかげで、いろいろ顔も利く」
ただ者ではないと思っていたが、やはりそうか。 冒険者ギルドで最高峰のクラス。
めったに会えない人種だ。
「まずは、俺たちのアジトに案内しよう。ヨクトもそこにいる ついて来い。」
--- こうして、ワタシたちは、王都の政争に巻き込まれていく。
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