第22話 王都にて
ワタシとビゼンとヨクトの三人は、王都に到着した。
道中、魔獣に襲われはしたものの、この二人……いや、ワタシたちの敵ではなかった。
ヨクトは冒険者の登録などしていないが、間違いなくAランクにはなるだろう。
ビゼンもBランクだが、実際の強さはAランクは間違いない。
いや、先祖がアオから貰ったという青竜冷艶鋸という薙刀を加えれば、最高クラスのSランクにも到達するかもしれない。
「普通の相手なら何でも切れる」というのは、本当だった。
とにかく硬い大型昆虫系の魔獣の甲殻でも、彼女の前には紙に等しかった。
なお、アオは革命軍の野営に残ってもらった。
四凶に難癖をつけられないためだ。
ごねるかと思ったが、意外にも素直だった。
革命軍の人たちが、アオの奇跡を見て「聖女様」のように敬っていて、お世話をしていたからだ。
案外、居心地が良さそうだった。
(いや、実際には聖女どころか、四神という神の一人なんだけど……)
アオの正体については、あの場にいた人たち以外には伏せてある。
さて、初めて来た王都だが。
賑わって見えるものの、道の脇に浮浪者が転がっているのが気になる。
「今のレイ王ってのは、あれでも若い頃は勇者の仲間だったらしいからな」
ヨクトが溜息を吐きながら言う。
「皮肉なものね」
革命軍のリーダー、ヨクトは魔王を倒した勇者。
そのパーティーの一人が、レイ王――これは、この世界の常識だ。
しかし、魔王の一人を倒しても、世界は良くならなかった。
魔王軍の侵攻は止まった。
だが、魔王の経済圏は崩壊し、その余波が周辺国に及んだ。
この国も、その影響を受けている。
皮肉なことに、魔王の影響がなかった地域では、「魔王が侵攻していた頃の方がマシだった」と言われるほどだ。
そして、レイ王は宦官の言いなりになり、魔王を倒した勇者が革命家になっている。
世界は、分からない。
「ヨクト、革命、いや、あんたの仲間のアジトってどこにあるの?」
危ない、危ない。
「革命家」なんて言っていいわけがない。
「ああ。まずは、待ち合わせ場所に行く。そこに迎えが来ることになってる。それで、それぞれ案内つきで別れて、現地で落ち合う」
「なるほど。なるべく目立たないように、ということね」
そんなことを話していると、ワタシの解析スキル【翻訳者】が反応する。
【白狼】解析不能
上位スキルは解析不能になる。
しかし、誰かがスキルを使ったことはわかる。
敵か、味方か、無関係か。
それは分からない。
ワタシは咄嗟に、周囲を警戒する。
「ほう? オレの気配に気づくとは、なかなかやるな」
後ろから、男の声が聞こえる。
振り向くと、30代ほどの男が立っていた。
(いつの間に……!)
気配はまるでしなかった。
フードを深く被り、顔も見えない。
スキルがなければ、全く気づかなかっただろう。
「ハクエイ、久しぶりだな」
ヨクトが声をかける。
なるほど、この人が仲間か。
「相変わらずだな、ヨクト」
二人は握手を交わす。
「ここは目立つ。オレの知ってる店へ行くぞ」
ワタシたちは、ハクエイと呼ばれた男についていく。
(……この人、強い)
ワタシは、ハクエイを見て直感する。
ヨクトやビゼンとは、また違う強さ。
いつ現れたんだ?
ワタシは、ハクエイの背中を見ながら、警戒を緩めなかった。
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「なんだと、ハクエイ!」
ヨクトは、ハクエイを睨みつける。
「聞こえなかったか? この二人を、アジトには連れていけねえ。官軍のスパイの可能性もある」
油断なく、ハクエイが答える。
彼の言うことも、分かる。
仲間のヨクトが言っても、信用できるとは限らない。
なるほど、ハクエイは歴戦の猛者だな。
「あのなあ、ここには来てないが、こいつらはあの青竜――」
ワタシが、ヨクトの足を思い切り踏みつける。
「……! 」
ヨクトが顔をしかめる。
アオの名前を出すと、大事になる。
ヨクトは、ワタシの目を見て意図を察する。
「……いや、なんでもない」
「ヨクトよ、何もお前を信じないわけじゃない。俺たちに力を貸すと言うなら、簡単な試験を受けてもらうだけだ」
「試験?」
ワタシは、腕を組んで答える。
「何、簡単なことだ。お前さんが俺たちに協力するならな」
「具体的には、何を?」
ビゼンが、マスク越しに問う。
マスク越しでも、警戒しているのが分かる。
「そうだな……誰でもいい。官軍の警邏の首を取ってきてくれ。そうすれば、信用する」
「……は?」
ワタシは、思わず聞き返す。
何、無茶苦茶言ってるんだ、この人。
「おい、それは無茶だろう!」
ワタシの前で、ヨクトが食いつく。
「何が無茶だ。これくらいできないと、俺たちの足を引っ張る」
ハクエイが、冷徹に答える。
「はあ……」
ワタシは、溜息をついて答える。
「ハクエイさんだっけ? あんたの言うことも、分からないでもないよ」
「……」
「でも、悪いけど、ワタシは人殺しじゃない」
ワタシは、はっきりと言う。
「戦いになれば、相手を殺してしまうこともあるかもしれない。でも……無関係な人を殺すのは、違うと思う」
ワタシは、ビゼンの方を向き、謝る。
「ごめん、ビゼン。ワタシは、これは協力できない。別の方法で協力するよ」
「いや、ワタシも、いくら仲間のためとはいえ、無関係な官軍を殺すつもりはない」
ビゼンも、同調する。
「というわけで、ヨクト、ごめん。ビゼンの仲間の方は、別の形で協力するけど、ここの組織の世話にはなれないね」
ワタシは、ヨクトに告げる。
「アビ、ビゼン……」
ヨクトが、申し訳なさそうにこちらを見る。
「行こう、ビゼン。ヨクト、アオの件もあるし、ワタシたちは冒険者ギルド中心に情報集めをするから、またあとでね」
「ああ……」
そう言って、ワタシとビゼンは、一旦ヨクトと別れた。
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