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冒険者ギルドで死亡扱いされた私が、神と邪神に愛され最強で最高のダークヒロインになる。  作者: 黒木菫
刻印受呪~刻印~編

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第21話 大公爵と二人の悪魔

――王都。 大公爵コウロ=エンの謁見の間。


玉座には、40代ほどの男が座っている。


大公爵コウロ=エン。 豪奢な衣装を身にまとい、だが、その目は冷たく鋭い。


そして、二人の兵士がかしずいている。


一方、奇妙なことがあった。


謁見の間の横にテーブルが置かれ、カードゲームに興じている二人の女がいたのだ。


このような無礼なこと、大公爵コウロの前では本来許されるはずがない。


しかし、二人をよく見ると、明らかに人ではない。


一人は、茶髪に羊のような角を生やした少女――華姫カキ


もう一人は、美しい金髪に、猫のような瞳をした美女――究姫キュウキ


華姫が嬉しそうに笑い、究姫がイラついている。


どうやら、ゲームの分が悪いらしい。


---


その二人を無視して、一人の兵士がコウロに話しかける。


こちらも40代の歴戦の兵士。 レツオウ。


大貴族コウロを前にして、一歩も動じず、へりくだらない。


その様子は、兵士というより一人の英雄。


まるで、静かな虎のようだった。


「して、閣下。改めてお話とは何でございましょうか?」


もう一方は、傭兵風の男――チュウエイである。


チュウエイは黙して、コウロの言葉を待った。


「うむ。残念ながら、陛下の御命は間もなく尽きられるであろう。しかし、陛下は未だお世継ぎをお決めになられておらぬ。これについて、余らは考えねばならん」


コウロはワインを口にしながら語った。


「恐れながら、閣下。そのような恐れ多きこと、臣下の立場では何とも……」


「レツオウよ。そなたの申すことは、もっともである。しかし、現実に向き合わねばならぬ」 コウロは、レツオウの答えに忌々しそうに応える。


「今、お世継ぎの候補としては、先日御成人あそばされたキョウ王女殿下と、未だ御幼少のカイ王子殿下がおられる」


そう言うと、コウロは忌々しそうに、だが怯えながら、カードゲームに興じる二人の悪魔に目線をやる。


「モンスターカード、ゴブリンロードでプレイヤーにダイレクトアタック!」


華姫が嬉しそうに叫ぶ。


「くそおおおお! また負けたかああ!」


究姫が天を仰ぎ、拳を握りしめる。


その瞬間――。


パリィン!


コウロが手にしていたワイングラスが、粉々に砕け散った。


「ひいっ!?」


思わず声を上げるコウロ。


「あー、ごめんごめん! 力が漏れちゃった」


究姫が軽く手を振る。


「アハハハ! これで、究姫の三連敗!」


華姫が笑う。


(自由すぎる、あいつら……)


コウロは内心で毒づく。 だが、大公爵といえど、四凶には逆らえない。


悪魔に契約外のことも従わせられない。


そうして、会話を戻す。


「あくまで、これまでの慣習で申せば、王子殿下が御成人あそばされるまで、王女殿下が仮の女王となられるか、摂政または宰相として御補佐申し上げるのが慣例である。だが……」


コウロはかしずく二人を見ながら、低い声を吐き出す。


「あってはならぬことだが、王女殿下の御行方が分からなくなられたり、御逝去あそばされた折には、臣下より摂政や宰相が御補佐申し上げる例が、なかったわけではない」


「閣下、それは……」


レツオウが諫言しようとする。


「あくまで例である。ところでレツオウよ、そなたから預かっておる娘、なんと申したかな。そう、ハオ嬢であったな。彼女は多少わんぱくでおてんばだが、よき娘である」


「…!」


レツオウが拳を握りしめる。


「最近は物騒でな。余も警備を十分に致しておるが、健やかに育つとよいな」


チュウエイはそんな二人のやり取りを黙して聞いていたが、口を挟む。


「閣下、発言をお許しいただけますでしょうか」


「うむ、許す」


「カイ王子殿下は御幼少ながらも御聡明にあらせられます。もし、閣下のような御補佐があらせられれば、名君となられることは疑いございません」


「全く同感である。チュウエイ、貴公はものの道理が分かっておる。あの究姫様がお目にかけられるのも頷ける」


「恐れ多きことでございます」


チュウエイは不敵な笑みを浮かべる。


「余が弟、ショウがキョウ王女殿下をお立て申し上げようとなどとしておるという不穏な話もある。二人にはくれぐれも申しておく。王子殿下、王女殿下の御身辺にお気をつけ申し上げよ。この余の名があれば、両殿下にも容易く近づけよう」


コウロは二人を睥睨して言う。


「良からぬ輩が、くれぐれもキョウ王女殿下をお襲い申し上げぬとは限らぬからな。この意味、分かるであろうな。特にレツオウよ」


コウロは立ち上がり、レツオウの肩に手を置く。


「全てがうまく運べば、そなたの娘を、そろそろそなたの元に返しても良いと考えておる」


レツオウの目が見開かれる。


(ハオ……)


レツオウは、娘の笑顔を思い浮かべる。


(もう少しだ……もう少し耐えれば……)


だが、その拳は、震えていた。


「恐れながら、閣下」


「なんであるか、チュウエイ」


「王子殿下、王女殿下の御身辺警護には、私めの部下だけでは、いささか人数が少のうございます。閣下の御兵をお貸しいただけませんでしょうか。全員お返し申し上げますが、金子で動く者が適任かと存じます」


「おお、チュウエイ。貴様、よく分かっておるな。くれぐれも両殿下を頼むぞ。レツオウ、チュウエイ、いずれが余の望みを叶えてくれるかな。よいのであるぞ、どちらが叶えてくれてもな。ククククク」

チュウエイは不敵な笑みを浮かべる。


(コウロ……お前も所詮、駒よ)


(究姫は俺の味方というわけではない。だが、今は利用できる)


(レツオウよ、お前も哀れだな。娘のために、王女を殺すことになるとは)


(さて、オレはどう動くかな。)


チュウエイは内心で嘲笑う。


だが、表情には一切出さない。




「トラップ発動、リフレクトバリアー! キャハハハ」


「きゃああああ! 私のモンスターが全滅!」


またしても、空気を読まない華姫の笑い声と、究姫の絶叫がこだまする。


その瞬間――。


バリィン! ガシャアアン!


一本金貨一枚の高級ワインのボトルが、数本砕け散った。


「あ……ビンテージワインが……」


思わず固まるコウロ。


「あ、ごめん。またやっちゃった」


究姫が、たいして申し訳なさそうでもなく謝罪する。




(あいつら、どこまでも自由か!)


コウロはそんな二人の悪魔を見て、内心毒づいた。



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