第14話 人間をやめさせられる数日前を回想する
ワタシが人間をやめさせられる数日前・・・
王都に向かいながらワタシたち3人は馬車に揺られていた。
とはいえ、安全な旅だ。
ギルマスからお金をたくさん頂戴したので、他の旅人たちといっしょの護衛つきの旅だ。
通常、馬車で移動するのも旅費がかかる。
しかも、道中、魔物やら野盗やら、最近では革命軍におそわれるかもしれない。
普段ならこちらが護衛のひとりとして仕事をするわけだが、はじめて護衛される側になったわけだ。
チュウエイの件もあったのでギルドからちゃんとした人たちを紹介してもらった。
というか、またしてもギルマスが気を利かせて護衛団をつけたくれた。
「アオ様やアビさんには必要ないかもしれませんが、気持ちです。」
なんていってたな。
魔犬を倒した私を相当、評価してくれたようだ。
冒険者タンクも一気にCまで上げてくれた。
そんなことを考えていると馬車がとまった。
次の宿までだいぶある、今夜は野営か。
「お客様方、これからお食事の準備をしますので少々お待ちください。」
「あー、ありがとう」
フフフ、今回は野営と言ってもとくになにもすることがない。
通常野営というと、火を焚いて、魔物除けの結界をはって、虫よけの結界をはって、食事の準備をしてといろいろやることがある。
今回は護衛団が全部してくれる。
しかもテントをはって護衛がかわるがわる見張りをしてくれるのだ。
これはまさに貴族だな。
そんなときだった、
「とまれえええ!」大声が聞こえる。
「アビ様!革命軍です!馬車からでないでください!ここは我々にお任せを!」
護衛団の人が叫ぶ。
そういうわけにもいかない
「アビ!」
ビゼンが声をかける。
ワタシは黙ってうなずき、武器を取り、外に出る。
「アオ!あなたはここにいて」そういいながら、ワタシは馬車のそとにでる。
「我々は革命軍だ!私腹をこやす貴族の財産を徴収する!荷物と貴族の身柄を置いていけば命まではとらん!」
野盗が吠える。
「まて、このお客様はただの冒険者だ!貴族ではない!」
護衛団の方が革命軍につたえる。
「うそをつけ!こんな豪華な護衛団をつける冒険者がどこにいる!要求にしたがわぬならしかたない!やれ!」それを合図に革命軍が襲ってくる。
相手の数は、数十人。
こちらの、数倍だ。
ワタシとビゼンは、即座に前に出る。
その瞬間だった。
頭の奥に、
言語化された“意味”が流れ込む。
<【石弾】――足元の石を、弾として撃ち出す。 >
――スキル。
これが、ワタシのスキル【翻訳者】だ。
誰かがスキルを発動した瞬間、
その効果が“意味”として流れ込んでくる。
スキルは、個人固有。
使い手の在り方そのものが、力になる。
だからこそ、
同じものは二つとない。
ユニークスキルもと呼ばれている。
――だが。
【翻訳者】は魔法には、反応しない。
魔法は違う。
誰が使っても、同じ理屈で、同じ結果が出る。
威力や精度に差はあっても、
本質は“技術”だ。
考える暇はない。
ワタシは身を転がす。
さっきまで立っていた場所を、
石の散弾が叩き抜けた。
再び、意味が流れ込む。
【石弾】
――来る。
ワタシは踏み込み、
射線の外へ滑り込む。
弾が、通り過ぎる。
顔色を変えた男がいる。
……やつだ。
ワタシは即断する。
「シルフよ、突風波!」
突風が吹き荒れ、
前線が崩れた瞬間、
ワタシは一直線に距離を詰め切り伏せる。
その時、【翻訳者】が反応する
<【闘神】解析不能>
上位スキルが発動したとき、
【翻訳者】は、この結果しか返さない。
対象はビゼン
彼女が薙刀を一振りする。
ただ、それだけだ。
衝撃が走り、
敵がまとめて吹き飛ばされた。
立ち向かおうとした革命軍が、
次々と宙を舞う。
防御も、抵抗も、意味をなさない。
スキルの内容は、わからない。
――だが。
何をしているのかは、
嫌というほど分かる。
斬撃というより、暴風に近い質量攻撃だった。
横一文字に振るわれた薙刀が、まるで空気そのものを押し潰すよう。
まともに喰らった男は、鎧ごと拉げ、 背後の仲間を巻き込みながら、弾け飛ぶ。
二人、三人。 いや、ひと振りで五人が消し飛ぶ。
<【闘神】――解析不能。>
脳裏に警告が点滅し続ける。
しかも――
戦う彼女は美しかった。
まるで黒い竜巻。 それがビゼンという女だった。
「――終わりだ」
さきほどまで数十人いた革命軍の男たちは、
今や物言わぬ肉の塊か、
戦意を喪失して泥のように伏伏る者たちだけになっていた。
「……終わった、ようね」
ワタシが周囲を見回した、そのときだった。
瓦礫と、倒れ伏す革命軍の向こうから。
ひとりだけ、ゆっくりと歩いてくる男がいる。
黒い髪。
異国風の顔立ち。
槍を携えた大柄な体。
ただ立っているだけなのに、
妙に目を引いた。
「ヨクト隊長!
助けてください!」
革命軍の一人が、声を荒らげて縋りつく。
ヨクト隊長と呼ばれた男は、肩をすくめた。
「どうやら……
オレの出番みたいだな」
そう言って、にやりと笑う。
「じゃあ――
そろそろ、はじめようか」
その瞬間。
頭の奥で、
【翻訳者】が反応した。
<【豪傑覇気】 ――解析不能>
……またか。
悪態が喉まで出かかったが、
次の瞬間、それどころではなくなった。
背筋を撫でるような悪寒。
空気が、重くなる。
息が、詰まる。
そして。
ドサリ、ドサリ、と。
ワタシとビゼンを除いた全員が、
まるで糸を切られた操り人形のように、
次々と地面に倒れ伏していった。
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