21:カッパフレンズ
先日のキューブ事件から数日。
出勤停止中の俺は、大学も夏休みに入ったこともあって、久しぶりに積みゲーを消化していた。
ミョルニル騒動で、発売日に買えなかった“◯◯クエスト”を三日でクリアし、順調に、引きこもり生活を満喫中だ。
そんななか、最近巷ではUMAが再ブームになっているらしく、藤宮から「オカ研で探しに行くから一緒にどうです?」と誘われたが――即拒否だ。
「少しくらい考えるとかないんですか」と文句を言われたが、断固拒否。
そんな悪魔の囁きを、鋼の精神力で跳ねのけた俺は、今日も至福のゲームライフを送っている。
――はずだったんだが。
ブッチが、俺のアパートに“きゅうり”を手土産に押しかけてきた。
前に“かっぱ巻き”をすすめたら「カッパ舐めんな!」ってキレてなかったか?
まあ……それはいいとして。
ブッチの話では、最近ちょっと“困ってること”があると、知り合いから相談を受けたとのこと。
詳しく聞いてみると――
最近のUMAブームの影響もあって、ブッチの地元“河童淵”にカッパを見つけようと、観光客が大勢押し寄せてきているらしい。
問題は、そのせいでマナーの悪い客が急増してるってことだ。
大声で叫ぶわ、ゴミは捨てるわ、挙げ句の果てには川に石を投げ込むわで、カッパたちが大迷惑。
しかも、腹を立てた若いカッパが観光客に悪戯で怪我をさせてしまったらしい。
そのせいで、ネットでは“カッパの仕業に違いない”と話題になってしまい、さらに人が押し寄せるという状態に。
――まあ、要するにバズった結果、手に負えなくなったってことだ。
「……で、俺にも手伝ってほしいってことか?」
「まあ、そういうことクワッ」
「手伝ってくれって言われてもな……」
「見捨てるクワッ!?」
さて、どうしたもんか……。
――と、その時。玄関のチャイムが鳴った。
「神楽せんぱーい! ブッチくんいますか?」
……なんで藤宮が?!
「おれっちが呼んだクワッ」
「お前の仕業かぁぁぁ!」
◇◆◇
ザクッ、ポリポリ……。
ムシャムシャ……。
現在、俺たちは――ブッチがお土産に持ってきた“きゅうりの浅漬け”をかじっている。
「美味しいね!」
「おれっちが作ったクワッ」
「お手製かよ!」
「……で、お前、オカ研でUMA探ししてたんじゃないのか?」
「そうなんですけど、有名な場所は人が多すぎたんで、諦めて帰ってきたんですよ」
「そんなに流行ってるのか……だけど、なんで急に流行りだしたんだ?」
「それはですね、有名な動画配信者が“ある飴を食べるとUMAが見える”って動画を上げたのがキッカケなんです」
「はあ? UMAが見える飴?」
「そうです。その飴、“妖怪飴”って名前なんですけど……本当に見えるって噂なんですよ」
何だよ、そのいかにも怪しい飴は。
「それで今バズってて、通販サイトでも売り切中れなんです」
また、変なものが流行ってるな……嫌な予感しかしないんだが。
◇◆◇
新幹線の車窓を流れる景色が、トンネルを抜けるたびに変わっていく。
都会のビル群から広がる平野、そして雄大な山々へ――。
目的地の“遠野”までは、四時間以上の長旅だ。
あのあと話し合った結果、結局ブッチの故郷“河童淵”へ行くことになった。
それで、とりあえず相談主の淵長とやらに、話を聞いてみようって事になったわけだ。
「手伝うとは言ったが、俺たち出勤停止中だし、ROOTSの協力はないからな」
「わかってるクワッ。おれっちたちカッパじゃ、普通に人と話すことも出来ないから助かるクワッ」
「ねえねえ、ブッチくんの故郷ってどんなところなの?」
ブッチが教えてくれた故郷の話――。
河童淵は静かな田園風景の中にあり、古寺の裏に流れる澄んだ小川は、木々に覆われて日中でも薄暗い。カッパにとっては過ごしやすい環境らしい。
昔は古寺の住職がきゅうりをお供えしてくれたりして、それなりに人との交流もあったという。
◇◆◇
新幹線を降り、在来線で遠野へ。そこからはタクシーで河童淵へ向かう。
そして――着いてまず驚いた。人の数がすごい。
ブッチいわく、普段はそこそこ有名でも、ここまで混むことは滅多にないらしい。
寺の裏を流れる川では、観光客がきゅうりを餌に釣り糸を垂らしている。
……ブッチが本当はきゅうり好きなのに、嫌がる気持ちがちょっと分かった気がした。
「ねえね、ブッチくん。カッパ捕獲許可証だって!」
……本気じゃないんだろうけど、やりたい放題だな。
「今まではただの悪ふざけだと思って、カッパ界隈でも問題になってなかったクワッ……」
「だけど、このUMAブームの影響で、そうも言ってられなくなったってところか」
「そうクワッ」
ちなみにブッチは、念のため“ぬいぐるみモード”で藤宮のリュックの中だ。
「じゃあ、一通り見たら一旦宿に行こう」
カッパたちに話を聞くにしても、人が減ってからのがいいだろう。
それから、一通り河童淵を見て回る。
「なあ、カッパを一匹も見かけないんだが本当にいるのか?」
ブッチに聞いてみると、リュックの中で小さく呟く。
「今はカッパ淵が騒がしくなったから、カッパの里に引きこもってるクワ」
「はっぱのふぁと!?」
そのワードに、思わず叫びそうになった藤宮の口を、俺は慌てて塞いだ。
その様子を見ていた観光客が、俺たちを奇妙なものでも見るような目で見てくる。
ちょっとしたハプニングはあったものの、一通り見て回り、宿へ向かうことにした。
――その宿は、小さな池のほとりに建つ茅葺き屋根の建物だった。
藤宮に「二部屋にするか?」と聞いたけど、「別に気にしませんよ」とのこと。
……いや、気にしろよ。むしろ少しは気にしてくれ。
まあ、今回は自腹だし安く済むからいいけどさ。
食事前に大浴場で汗を流してから部屋に戻ると、藤宮はすでに戻ってきていてテーブルには料理が並んでいた。
ちなみにブッチは「久しぶりに里に顔を出すクワッ」と言って、先に向かった。
「この豚の生姜焼き、美味しいですね」
「この辺の名産、“亜麻豚”って言うらしいな」
「へぇ、そうなんですね。きゅうりだけじゃないんですね」
藤宮の中では、“遠野=河童”なんだろうが……べつにカッパがこの町のすべてってわけじゃないからな。
食事を楽しんだあと、俺たちは夜のカッパ淵へ向かう。
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作品名:世界の見せる真実が、俺の想像を超えていく
カテゴリ:現代ファンタジー
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