20 終りと始まり
――2Eが去ったあとは、本当に大変だった。
まず俺たちは、指揮官からこっぴどく怒られた。
「勝手な真似をするな!」「命令違反だ!」ってやつだ。
そのあとは報告書と事情聴取。
藤宮とキューブの件については、本部会議で何度も説明させられた。
その結果、キューブは藤宮が読み取った記憶をもとに、“ミョルニル”と正式に呼ばれることになった。
当初、ミョルニルはその危険性からROOTS本部で厳重に保管されることになる――はずだった。
だけど数日後、なぜか“勝手に”藤宮の元へ戻ってきた。
その際、施設全体の三割以上のエネルギーが吸い取られ、停電が発生。
本部は大混乱に陥ったらしい。
結果として、「むしろ彼女から離す方が危険だ」という結論に落ち着いたそうだ。
……要するに、ミョルニルは藤宮専用ってことだ。
ちなみにそのミョルニル、今はブレスレット型に変形している。
藤宮いわく、「単純な形になら変形できる」らしい。
そして、強盗犯の事件は博物館による自作自演だった。
保険金目当てに展示品を盗ませ、そして最後は口封じをしたというのが真相らしい。
『あれは人が欲に呑まれた結果です』
あの時の2Eの言葉を思い出す。
そして俺たちはというと――
独断専行と命令不服従で、二週間の出勤停止をくらった。
正直、クビも覚悟していた。
けど、2Eの撃退とキューブの件が想定外の成果として認められたのと、何より真神支部長の口添えのおかげで、どうにか首の皮一枚つながった感じだ。
俺と藤宮は結構ヘコんでたけど、鬼頭さんは怪我も思ったよりもひどくなく「最近忙しかったから丁度いい」とか言って、タバコをふかしていた。
ブッチはといえば、よく分からない配信でフォロワー稼ぎ。……まあ、バカッパだしな。
◇◆◇
――そんなわけで暇になった俺は、溜まっていた積みゲーを消化しようと思っていたわけだが……。
藤宮に「先輩! 世界の発掘品展に行きましょ!」と誘われた。
当然、最初は断るつもりだった。
けど、“ミョルニルが発見された遺跡”の話が聞けると知って、結局付き合うことにした。
――発掘品展では、一夜にして海に沈んだ遺跡の話を聞いた。
かつて、その王国は黄金の力に満ちていた。
黄金の力により国は栄え、飢えも争いもなかった。
そんな理想郷が、何千年も続いたという。
しかし、ある時――一人の男が欲に飲まれた。
富を、力を、女を。
男は王から黄金の力を奪い、欲望の限りを尽くした。
だが、すべてを手に入れても心は満たされなかった。
そして男が最後に求めたのは、“永遠の時”。
男は黄金に願った。永遠の時を与えてくれ、と。
その夜、王国は海の底へと沈んだ。
男が最後に手に入れたもの――それは、永遠の死だった。
――2Eが去り際に言った言葉を思い出す。
『その力が、いつまでも貴方たちの味方だとは思わないことです』
遺跡の話、案外真実だったりしてな……。
「先輩、早く次行きますよ!」
俺は腕を引かれ、歩き出す。
――藤宮の手首では、白銀のブレスレットが金色の光を放っていた。
[調査報告書・抜粋]
――――――――――――――――
Case 03《Forgotten Relic》
|結 論
・本件におけるキューブの正体は、ミョルニルという古代の武器だと判明。
・各地で起こった停電は、ミョルニルが2Eに対抗する力を蓄えるためだった。
・2Eの正体は依然不明だが、「人類のために危険な遺物を封印すること」が目的だと主張している。
・ウォッチャーに関しては、依然情報なし。
以上をもって、本事案の一次調査を終了する。
記録者:ROOTS 捜査員 H.K/M.F
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◇◆◇
――某高層ビルの最上階。
外界を遮断するように、窓ひとつない会議室。
天井のシャンデリアが、円卓を囲む四人の男女を照らしていた。
「まさかヨルが尻尾を巻いて逃げ帰ってくるとはねぇ」
――女の声。
半透明の黒いドレスの裾が揺れ、スリットから青白い肌がのぞく。
黒いロングヘアの隙間から覗く眼は闇よりも暗く、その身から放たれる妖艶さは、見るものすべてが目を奪われるほどだった。
「これは手厳しい。少々“適合者”に手を焼きましてね」
――銀白の髪が揺れる。赤い瞳がわずかに光を宿した。
「ま、言ってやるな。こいつが本気を出したら、都市が丸ごと滅びかねねぇからな」
そう言ったのは、銀色に青いメッシュの入った短髪の男。
牙のような犬歯が覗き、緑の瞳が妖しく光を反射していた。
「それはそうだけどぉ」
「今回の結果は、私の油断が原因なのは間違いありませんので」
「まっ、お前が手に負えねぇようなら、俺様が代わりに処理してやるよ」
「いえいえ、あなたの手を煩わせるほどのことでは」
すると、三人の会話を黙って聞いていた男が、待ち切れないという様子で口を開く。
「その話はまた今度でいいでしょ。それより……次のターゲットだよ」
――太陽のように輝く金髪。彫刻のように整った顔立ちの少年。
冷たい光を放つ瞳には、全てを見透かしているような妖しい魅力があった。
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作品名:世界の見せる真実が、俺の想像を超えていく
カテゴリ:現代ファンタジー
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