表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/41

1 グッバイ日常!

 コンビニを出ると、夕日を背に巨大な“怪獣”が殴り合っていた。


 ――ズゴゴゴゴォォォォン!


 赤い怪獣が緑の怪獣を山ごと吹っ飛ばし、地鳴りが足元から伝わり体の芯まで震える。


「なんだよ……これ」


 目の前で繰り広げられる信じられない光景に、思わず買ったばかりの弁当を落としてしまう。拾おうと下を向けば、“カッパ”がスマホ片手にノリノリで撮影をしていた。


「クワッ。何見てやがんだ!」


 カッパ&スマホという、異様な光景が理解できずガン見していた俺に、カッパが(すご)んでくる。


「カッパ……なのか?!」


「決まってんだろ! お前カッパなめてんのクワッ!」


 いやいや、まじで? それも、何だよその語尾。


「……な、なにやってんだ?」


「見りゃわかんだろ、ライブ配信中だ。同接二万クワッ!」


 はあ? カッパがライブ配信ってなんだよ!


 ――ズゴォォォン!


 俺とカッパのやり取りをよそに、怪獣同士の殴り合いは更にヒートアップして、赤い怪獣が吹っ飛んだ。

 巨体が湖に落下すると水柱が天高く吹き上がる。

 ピチピチッっと、足元で小魚が跳ねているが今はそれどころじゃない。


 俺はただ昼飯を買いに来ただけなんだぞ?


 なのに――




『なんでコンビニ前で怪獣同士が殴り合ってんだよ!!』




 叫んだ俺の背後から、気の抜けた声がした。


「よう。お前、()()見えてんのか?」


 後ろを振り返ると、スウェットにサンダル、タバコをくわえた男がダルそうに立っていた。


「えっ、誰?!」


「あー、こりゃ派手にやってんなぁ」


 男は片手でライフルを担ぎ、気だるげにあくびをする。


「なあ、臨時収入、欲しくない?」


「臨時収入?!」


「ちょっと人手が足りないんだわ。そこの()カッパからスマホ取り上げるだけでいい。簡単な仕事だ」


 俺は少し離れた所で、今も撮影に夢中なカッパを見る。


「えっと……俺、コンビニ弁当しか持ってないんですけど?」


「まぁ、そこは気合でなんとかさ」


「気合でなんとかってなんだよ!」


「じゃ、よろしく」


「おい待て、よろしくじゃねぇ!」


 ――俺のツッコミに、こっちを振り向いたカッパと目が合った。


「クワッ!?」


 爆音と揺れる大地の中、俺はカッパに突撃した。


「スマホよこせぇぇ! それとさっきから、クワックワッうるせぇんだよ!」


「やめろクワッ! 今同接三万人なんだぞ!? おいらの時代がきたんだ!」


「カッパの時代なんていらねぇんだよ!」


 湖のほとりで取っ組み合う。カッパが水を操って、俺の顔を狙ってくる。


 ――ビシャッ!

「ぎゃあぁっ、目にしみるぅぅ!?」


「カッパなめんなよ!」


 激しく抵抗するカッパから、死闘の末なんとかスマホを奪う。


「返せ! カッパ権侵害クワッ!」


「知るかぁ! ……って、俺の顔が映ってんじゃねーか!」


 と、その瞬間。


 ――ドガァァァァン! ドガァァァァン!!


 二発の銃声が響いた。


「はぁっ!?」


 振り返ると、二匹の怪獣が揃って宙を舞っていた。

 そして、煙を上げる男のライフル。


「ったく、こんなとこで暴れるんじゃねえよ。“後始末”が大変なんだわ」


 怪獣の落下方向から猛スピードで駆けてくる、赤い(きつね)と緑の(たぬき)

 頭を擦りながら「痛ぇ」とか「ヒドい」とか、ぶつぶつ文句を言うと山の方へ消えていった。


「ったく……あとで苦情入れとくか」


 と、ライフルの男。


「それから、お前もご苦労さん。今見たことは黙っておいてくれ。――はい、じゃあこれ」


 そう言って臨時収入(口止め料)を渡して、去っていった。



 ◇◆◇



 ――俺、神楽かぐら 隼人はやとの朝は、ネットで情報を確認することから始まる。


 スマホでニュースを確認したが、昨日の“怪獣大乱闘”はなかったことになっていた。

「連日の雨の影響で土砂崩れが起きた」として軽く報道されるだけで、詳細は一切なし。


 もしかして夢だったとか?

 そんな風に思い始めていたとき――ひとつの動画が目に入る。


 カッパから没収したはずの配信動画がバズっていた……。


「AI生成だろ?、特撮の宣伝か?」コメントはそんなものばかりで、まとめ動画も同じ論調だ。


 まあ……それは、とりあえず置いておいてだ。

 問題は――


 俺の顔がバッチリ映ってんだよ!

 モザイクも地味にズレてんだよ!


「許さねぇ、あのバカッパぁぁぁ!!」


 最悪な気分のまま、支度をして家を出る。

 いつものように大学行きのバスに乗り込み、いつものように最後部の席に座る。

 そして、いつものようにスマホで新作ゲームの情報を調べる。

 ここまでが、()()()()ルーティンだ。


 あれ? 今日は誰も乗客がいないのか?

 少し違和感はあったが……まぁ、そんな日もあるか。

 そう思い、しばらくゲーム情報サイトを眺めていた俺は、ふと異変に気づいた。


 先程から、アナウンスもなければバス停にも止まらない。

 それに……どこだここ?

 窓の外を流れる風景が、見慣れた道じゃないことに頭が混乱する。

 乗り過ごしたか? いや、さすがにそんなはずはない。


「あ、あの、運転手さん」


 ……反応がない。


「すみません! 次で降ります!」


 もう一度叫ぶが、やっぱり反応はない。

 俺は立ち上がり、運転席へと近づく。


「えっ!? 運転手が、いない!?」


 無人運転か?

 いやいやいや、さすがに無理があるだろ!

 ドクン、ドクン、ドクン――鼓動が速くなり、いやな汗が背中を伝う。


『お前、もしかして“巻き込まれ体質”?』


 いきなり背後から声を掛けられる。

 振り返ると――昨日のライフル男が、黒のスーツ姿でタバコをふかしながら立っていた。


 え? どこにいたんだ? さっきまで俺一人だったはずだよな?!


「き、昨日の……臨時収入の人!?」


「はぁ、臨時収入の人じゃなくて。――俺は鬼頭(きとう)だ」


 男は鬼頭と名乗る。


「えっと、神楽です。――こ、これどういう状況かわかります?」


「まあ、ちょっと待ってろ」


 鬼頭はそう言うと、おもむろにタバコの煙を辺りに吹きかける。


 ん? なにやってんだ?


 ――次の瞬間。

 ぬるりとした生臭い空気が周囲を包み込んだ。


「……くっさ!」


 えっ? なんだここ……明らかにバスの中じゃない!


 壁が生き物みたいに脈打ち、足元には半分溶けた服や靴が沈んでいる。丸い白い何かがあったが、見なかったことにする。生暖かい空気が肌にまとわりついて、どこからともなく低いうなり声のような音が聞こえる。


「ウワバミだ。伝承によると目に入ったものを、見境なく丸呑みにする“蛇の妖怪”だな」


「妖怪!? 丸呑み!? 俺、食われるのか?」


「いや……もう食われてんだよ!」


 突然、壁の穴から、ぬめる細長い舌が伸びてくる。

 ビチャッと湿った音を立て、床に液体を垂らした。


「グガァァァー!!」

「ったく、うるせーよ」


 ――ジューッ。

 鬼頭はため息をつき、タバコの火をウワバミの舌に押し付けた。


 うっ!? 舌に“根性焼き”とか、あんた鬼だな!


「さて、こんな臭いところ早く出るぞ」


 ウワバミが暴れるが、鬼頭はSF映画みたいな銃を取り出す。


 ――ズガァァァン!!

 銃の先端が光ったかと思うと、眼の前の肉壁が弾けとぶ。


「ぶはっ……!」


 ぬるっとしたウワバミの肉片があたりに飛び散る。これじゃ完全なスプラッター映画だ。


「ったく、スーツがベタベタだぜ」と何事も無かったように呟く鬼頭。


 俺はこの状況を理解できず、ただ呆然と立ち尽くしていた。


「よし、任務完了だ。早く帰ってシャワー浴びたいぜ」


 鬼頭が立ち去ろうとして、途中でこちらを振り向く。


「あ、そうだ、えーと神楽だったか? お前も一緒に来てもらうから。さすがにこのまま返すわけには、いかないんでな」


 そう言って、棒立ち状態の俺は、腕を捕まれ車に乗せられる。

 ちょっと待て、これ、誘拐じゃないよな?


 抗議する間もなく、車は走り出した――。


「あ、あの……どこに?」


「俺の勤務先。すぐに着くから説明はそこでだ」


 そう言って車は脇道に逸れ、落書きだらけのトンネルへ侵入する。

 トンネルを抜けると、そこはなぜか駐車場になっていて、奥に両開きの扉が一つ。


 そして――その扉の横のパネルには、こう表示されていた。



 |世の中には、人々が知らない秘密が存在する。


 |巷でオカルトだと揶揄される、さまざまな噂や事件。


 |現在の科学では説明できない超常現象。


 |世間の常識が、本当は間違っているとしたら。


 |真実を知りたいと思うか?


 《YES》〈NO〉


 パネルの文字が白く光り、選択肢だけが点滅を繰り返していた。

・カクヨムコン11参加中の作品です!

・カクヨムにて先行投稿中!

・現在41話まで書き溜めして、毎日更新しています。

・先が気になる方はぜひこちらから。


作品名:

世界の見せる真実が、俺の想像を超えていく


ジャンル:

超常現象・異能バトル


https://kakuyomu.jp/works/822139839811378629

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ