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かつての魔王と、未来の勇者  作者: いぬ課長


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第5話 冒険の始まり『初クエスト』

 新人冒険者試験から一夜明けて、朝日がクロックレイクを照らし始めたころ、静かだった町が少しづつ活気づいていく。

 人々が朝の挨拶を交わし、町の鼓動が動き出す。

 そんな町の中をルーマ・コルベールが歩いていた。

 茶色の髪がゆらゆらと揺れ、眼鏡の奥にある茶色の瞳からは優しい印象が感じられる。

 ブラウンを基調としたチェック柄のベストと黒いタイトスカートといった服装は冒険者ギルド『湖の時計塔』の制服だった。

 町行く人々に元気よく挨拶を交わし、ギルドの前に立つと、


「あれ? んんん~~~?」


 ルーマがそんな声を上げながらギルドの玄関を、むむむっと目を細めて見ると、赤いコートにくるまって寝巻代わりにして寝ている者がいた。 

 赤いコートの端からひょっこり赤髪の毛が覗いている。


「あっ! あの赤い髪はレオンくんだぁ!!」


 ルーマは小走りで近づき、しゃがみ込むと赤髪の少年の顔を覗き込んだ。

 まだ幼さを残しているその顔は、しかし大人に近づきつつあった。


「う~む。 男前だ・・・でも、寝顔かわいいなぁ~~ふふふ」


 そう言ってルーマはレオンのほっぺたを突つく。

 ニコニコと笑顔で突ついているとレオンが眼をこすりながら起きてしまった。


「う・・ん。 あ、ルーマさんおはようございます・・・」


 まだ眠たそうに片目を瞑って、寝ぼけ顔で挨拶を交わすと、灰色の瞳がルーマを見た。


「おはようございますじゃないでしょ? どうしてこんなところで寝ているの?」

「あぁ・・・試験の後、宿を探そうとしたんですけど・・・お金がなくてですね・・・その・・・」

「ここに戻ってきたけど、閉まっていたから玄関で寝ちゃったのね?」

「はい・・・」


 当然の質問に、レオンの答えを聞いてルーマはため息を吐いた。

 だけど、すぐに優しい顔になって言った。


「こんなとこで寝ていると風邪ひいちゃうよ。 さっ、中に入ろ」


 レオンが起き上がると、赤いコートの隙間から革の鎧と腰に差したショートソードが見えた。

 少年の名前は、レオン・ラインハート。

 この冒険者ギルド『湖の時計塔』で今日から活動するのだ。

 そう。 憧れの『冒険者』になったのだから。


 ◇◇◇◇


 ギルドに入るなり、レオンはさっそくクエストを受注するために受付カウンターにいるルーマさんに話しかけていた。

 とにかく今は第一にお金が必要だ。

 宿に泊まるお金も、朝の食事代すらない・・・

 レオンは昨日のことを思い出す。

 田舎で育ったレオンは知らなかったのだ。

 町の物価がテテラ村とは比べ物にならないほど高いことを・・・

 試験を終えてお腹が減ったレオンが入った料理店が、財布の墓場となった。


「では、クエストの説明をするね」


 ルーマの声で我に返ると、気を取り直して話に集中する。

 説明はこうだ。

 新人の冒険者は、みんな最初に同じクエストを受けている。

 簡単なクエストで、黄金草という草を採取して帰ってくるだけ。

 そうやってクエストに慣れていくのだそうだ。


「これが黄金草だよ」


 そう言って、出してきたなんの変哲もない草をルーマは手に取って見せてくれる。 丸みを帯びた形状で色は深い緑。 

 本当にどこにでも生えていそうな草。 

 それが第一印象だった。

 だけど違った。 ルーマが黄金草をゆらゆら揺らすと葉の部分が光りだしたのだ。


「すごい・・・本当に光るんですね」

「そう。 だから黄金草。 潰せば薬草。 煎じれば回復薬。 医療に幅広く使えるの。 君たち冒険者の命を何度も救ってきたのよ」

「冒険者の命を?」

「うん。 だから、最初のクエストが黄金草の採取なの。 君自身の命の為にもね。 冒険の途中で怪我などで動けなくなってしまった時に黄金草を見つけられるかどうかで生存率が全然違うの」


 命の話をしている時のルーマさんの瞳は、いつもの優しさは無く、厳しい瞳をしていた。

 冒険とは命の危険が伴うのだから・・・


「どう? 怖くなった?」


 イジワルそうな瞳を向けてルーマさんが聞いてくる。

 その話を聞いて冒険の危険さを、冒険の過酷さを知った。

 だけど、レオンはその先にある未知への冒険に心を躍らせたのだ。

 だから、しっかりとルーマの瞳を見据えて言った。


「やります! 僕はもう冒険者だから!」

「うっ! まぶしっ!」


 イジワルな瞳を向けていたルーマは、まるで光り輝いているように見えるレオンが直視できず、手で顔を隠した。


「どうしました?」

「え? いや・・・ん~ん。 なんでもない!」


 ちょっとからかうつもりが、逆に自分へダメージをくらうとは思ってなかった。

 どこまでも純粋なレオンにどきどきしながらルーマは続ける。


「と、とりあえず! じゃあ、この『黄金草の採取』クエストを受注しました。 がんばってね。 レオンくん」

「はい! では、行ってきます!」


 そう言って立ち上がり、レオンはギルドの玄関へと足を運ぶ。

 すると慌てたようにルーマが駆けつけてきた。


「あ! ちょ、ちょっと待ってレオンくん!」

「え?」


 突然の呼びかけにレオンが振り向くと、ルーマが何かを手渡してきた。


「これ・・・朝ごはんも食べてないんでしょ? お弁当つくったから。 よかったら食べてね。 いってらっしゃい」

「わ~~~!! ルーマさん! ありがとう!!」


 ルーマのお弁当を受け取って、レオンは初めてのクエスト『黄金草の採取』に向かうのだった。


 つづく

読んでくれてありがとうございます。 

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