第1話 冒険者レオン・ラインハート
新章突入
ここからは、もう一人の主人公レオンくんの物語に移ります
瞳を開けると、青空が見えた。
灰色の瞳に、一羽の鳥が視界を横切って行く。
甲高く鳴き声を上げて、その鳥は自由の空へと姿を消していった。
そして、少年は背伸びをしながら起き上がると、流れていく景色をただ茫然と眺める。
「気持ちがいい旅になりそうだ」
赤い髪が風に揺られながら、少年は自然と声をこぼした。
そして、再び寝転がると、柔らかい藁が少年を暖かく迎え入れてくれた。
ゴトゴトと揺れる荷馬車。
山のように積まれた藁を運ぶ荷馬車が、どこまでも続く道をゆったりと走っていた。
それから数刻の後、まるまると太った荷馬車の主が振り向いて声をかけてきた。
「おーい、坊主! 町が見えてきたぞぉ」
「わぁ本当だ! ありがとう! カイロさん」
少年は目を輝かせて立ち上がった。
ときおり石を踏みつけ、大きく揺れる荷馬車の上を少年は器用に立っていた。
その視線の先に、クロックレイクという辺境でも有名な町を、『冒険』の始まりを告げる町を見据える。
だけど、少年はずいっとカイロという荷馬車の主に近寄ると、
「ところでカイロさん。 坊主じゃなくて、レオン! レオン・ラインハート! もう、何度も言ってるのに、最後まで覚えてくれなかったね」
「はっはっはっ。 いや、すまんすまん。 名前を覚えるのが苦手なんでな。 しかし、いい旅の話相手になってもらったよ。 たのしかった。 ありがとよ」
カイロさんは頭にかぶった帽子を深くかぶり直し、人のいい笑顔を浮かべてそう言った。
レオンも笑い、再びクロックレイクを見つめるのだった。
◇◇◇◇
町の中に入り、レオンは活気に満ちた町並みに驚きと好奇心でいっぱいになっていた。
いろんな露店が出ていて、見たこともない食べ物に目移りし。 見たこともない服装の人たちがそこかしこで話をしている。
そして、町の入り口からでも見える、湖の上にある時計塔にレオンは目を奪われていた。
その時計塔は町の真ん中にあり、この町一番の象徴でもある。
象徴の理由は、高くそびえ建つ時計塔のせいではない、冒険者ギルドとしてこの町を中心に冒険者たちが集まってくるからだ。
レオンが町の情景に心を奪われていると、カイロさんが声をかけてきた。
「ここが別名、冒険者の町だ。 坊主もその成りからして冒険者になるんだろ?」
そう言って、カイロさんがレオンの足元から頭へと視線を移す。
革製の鎧を着こなし、腰にはショートソードを鞘に納め、赤いコートをまとった姿。 まだ鎧に傷一つないところが駆け出し冒険者って感じがする。
「あぁ。 僕の冒険はここから始まるんだ。 ここまでありがとう。 カイロさんはこれから商売?」
「そうさ。 ここには冒険者が集まってくる。 商売には事欠かんさ」
「そっか。 じゃぁ、がんばってねカイロさん」
「あぁ、ありがとよ。 『レオン』お互い頑張ろうな」
カイロが照れながら手を振ると、名前を呼ばれたレオンは気持ちのいい笑顔を見せて一度頭を下げると、同じように手を振り返し二人は別れたのだった。
カイロの姿が人波に隠れて見えなくなると、レオンは決意を込めた瞳で前を見据える。
目指すは冒険者ギルド。
今日、この日、ここから自分の冒険の日が幕を開けるのだ。
腰に下げた剣に手を乗せ、憧れの冒険者であるレリックを思い出す。
レリックは、もはや昔話に出てくるほどの伝説の冒険者。
当時、世界をその圧倒的な魔力で支配しようとしていた魔王イリスを打ち倒した冒険者。
のちに『勇者』と呼ばれるようになったレリックは、魔王の城にまでたどり着いたが魔王と共に姿を消してしまったのだ。
その後、彼の姿を見たものはいなかった。
レリックは、どうして姿を消したんだろう。
魔王と共に・・・
謎の多い勇者だが、レオンはそんなレリックの話が大好きだった。
彼の伝説は、いくつも残っていた。
魔族が大量に押し寄せてきた街を救った話。
さらわれたお姫様を救った話。
そして、何よりも、レリックは困っている人たちを決して見捨てたりしなかった。
心優しい勇者、いや冒険者だったのだ。
そんな冒険者レリックに憧れて、レオンはここまでやってきた。
自分も、『冒険者』になるために。
再びレオンは前を見据えて歩き出す。
一歩また一歩と、決意を希望を、憧れを乗せて歩き出す。
そして、焚ける気持ちを抑えながら湖の時計塔『冒険者ギルド』に向かうのだった。
つづく
はやく戦闘シーンがかきたい




