序章3 ロリ魔王と冒険者
ひきつった笑顔のイリスは、あたふたしながらも言葉を放った。
「お、おおおお主、聞け! 聞くのじゃ! 何を隠そう我は魔王であるぞ! そうじゃ、我は魔王!」
そこまで言うとなんだか気分が乗ってきた。
魔王!! なんと甘美な響きか。
我の名前を聞いただけで皆が恐れおののいたモノよ・・・
気持ちがよくなったイリスは腰に手を当てながら立ち上がると調子に乗って少しだけ胸を張る。
「うむうむ。 ふふふ、聞いて驚け! 我は魔王である!!!」
大事なことなので、もう一度言った。
恍惚に悦に浸りながらイリスがふんぞり返る。
しかし、『傷持ち』は聞く耳ももたずに近づいてくる。
さらに手下の口からは涎が止まることはない。
「あれ!? あれれ!? 待て! 待って! 待つのじゃ」
おかしいのぉ!? 今まで魔族といえば我にひれ伏す存在であったはず。
それなのになんでこ奴らは我を、く、く、喰らおうとしておるのじゃ!?
イリスの制止にブラッディウルフは立ち止まる気配がまるでない。
こ、このままでは喰われるぅぅぅぅ!!!
にっちもさっちもいかなくなったイリスは、慌てて口を開いた。
「そうじゃ! くぅぅぅ。 お主に世界の半分をやろうではないか!? どうじゃ!? これなら満足であろう!!」
イリスは再び腰に手を当ててふんぞり返る。
もうそれはそれは鼻高々に。
そう。 世界の半分を手に入れられるのだ。
これで満足せぬやつなどいない!!
いるはずがない!!
ふん! 仕方ない奴じゃのう!!
そう思い、チラッとブラッディウルフを見た。
涎を垂らし、ギラギラと血走った金色の眼、興奮した鼻息、口元を嘗め回しながら近づいてくる。
こ、これは地獄絵図!!
「こ、これは地獄絵図じゃ・・・」
声にも出た。
一歩、また一歩と近づいてくるブラッディウルフ達をイリスは涙目になりながら見るしかなかった。
そして、目の前にまで迫ってきた『傷持ち』が勢いよく噛みつこうとした。
瞬間!
「た、助けれくれぇぇぇぇ」
「絶対に助ける!」
イリスの悲鳴と共に、少年の声が重なった。
怖くて目をつむっていたイリスがそっと瞳を開く、その赤い瞳に少年の姿が映り、風が吹き抜ける。
少年は、短く切りそろえた赤髪を風に揺らしながら、剣を手に『傷持ち』の前に立ちふさがる。
イリスを助けるために。
魔王である我を助けるために。
それが我の、
それが僕の、運命を大きく変える物語の始まりだった。
つづく
序章の終わりです。
序章の終わりまで読んでくださり、ありがとうございます。




