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かつての魔王と、未来の勇者  作者: いぬ課長


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第7話 死闘 

 ブラッディウルフ。

 非常に獰猛で血を浴びるほどの凄惨な残虐性からついた名だった。

 傷を持つほど力を増す特性を持ち、『傷持ち』と呼ばれるほどの個体は群れのリーダーを担う傾向にある。 

 女の子を襲おうとしているブラッディウルフは、体のいたるところに傷を持ち、片目すら失っていた。 あきらかに『傷持ち』と呼ばれる個体だろう。

 駆け出しの冒険者であるレオンでは到底敵わない。

 しかし、そんなことなど頭の隅にしまい込み、レオンは全力で駆けだしていた。

 目の前の女の子を救うために。

 間に合え! 間に合え! 間に合えぇぇぇぇぇ!

 何度も心の中で叫び。

 走る。

 疾走と言えるほどレオンは駆け抜けた。

 だが無情にも『傷持ち』の牙がレオンよりも早く女の子に届く・・・・

 させない!!! 

 レオンは黄金草を入れた採取袋を『傷持ち』に向かって投げつけた。

 中に入っていた黄金草が、空中でバラけ眩しいほどの光を放つ。

『傷持ち』が突然の光に目を焼かれ、怯む。

 その瞬間にレオンは、女の子の前に割って入ったのだった。


「大丈夫かい!? 怪我は!?」


 女の子に目を向けることなくレオンは口早に言った。

 しかし、返ってきた言葉は、こわばり、涙声ではあったが意外な言葉だった。


「なんじゃ。 お主・・・人間か・・・なぜ助けた」

「え?」


 予想外の言葉にレオンは『傷持ち』から一瞬目を離し、女の子を見た。

 見た目はあきらかに幼い子供。 

 だが、しかし。

 その赤い瞳からは、安堵の光ではなく、警戒と少しの敵意が混じっていた。

 幼く赤い瞳が、鋭くレオンを射抜いている。

 それでもレオンは優しく微笑み、再び『傷持ち』へと視線を戻すと、言った。


「君の悲鳴を聞いたから。 僕は君を助ける。 それだけさ」


 瞬間、『傷持ち』が飛びかかってきた。

 レオンは腰に差した剣を抜き、横なぎの一線を放つ。

『傷持ち』の牙と、レオンの剣が甲高い音をたててぶつかり合った。

 火花が散り、衝突の衝撃が肩にまで響く。


「ぐぅ!!」


 奥歯を嚙み、耐える。

 剣の一線をまともに食らっても『傷持ち』の牙は折れることなく、ひと咬みで肉どころか骨までもっていきそうなほどの鋭利な牙を剝き出しでレオンに狙いを定めていた。

 スライム戦での衝突の重さとは次元が違う・・・

 剣を構えなおし、距離をとった『傷持ち』にレオンは警戒を怠らない。

 スライム戦での・・・戦い・・・

 あの時の戦いで学んだことが脳裏を掠めた。

 敵は、一体とは・・・限らない!?

 瞬時に、レオンは『傷持ち』だけではなく、左右にも警戒心を広げる。

 同時に暗闇の中からブラッディウルフが現れた!

 しかも、左右同時にだ!

 捌ききれない! 

 くそ!! 

 しかし、試験での経験がレオンの命をぎりぎり繋ぎとめる。

 一瞬早く反応できたのだ。

 剣で斬ることは出来ないと判断したレオンは柄の部分で一方のブラッディウルフの横っ面を殴りつける。 殴られたブラッディウルフは進路を変えてレオンの脇を転がり抜ける、そして入れ替わるように逆から来ていたブラッディウルフの牙がレオンを襲う。


「グルルルゥゥゥゥゥ!!」

「やられるか!!」


 目の端で攻撃を見切り、レオンは躱す。

 すかさず剣に力を込めて、斬りかかろうとした、その時、


「く、来るでない!!」


 女の子の声が聞こえた。

 じりじりと女の子に迫るブラッディウルフ。

 まだ居たのか!?

 油断はしていない。 

 しかし、敵が何体いるのかわからない状態で、小さな子供を守りながら戦う・・・・土台無理な話だった。

 尻もちをついて動けない女の子。

 さきほど柄で殴りつけたブラッディウルフはすでに態勢を整え、再び飛びかかろうとしている。

 攻撃をかわされたブラッディウルフもだ。

 そして、『傷持ち』も力を込め、金色の瞳を鋭く光らせる。

 今、自分の身を守らなければ・・・死ぬ。

 今、あの女の子を守らなければ・・・死んでしまう。 

 周りの光景がひどくゆっくりに見えた。

 牙が爪が、迫ってくる・・・・自分の身を・・・・

 ブラッディウルフの牙が・・・・女の子に・・・・

 ブラッディウルフがレオンに飛びかかる。

 そして剣は、ブラッディウルフの頭に突き刺さった。

 よたよたと、ブラッディウルフは力なく倒れる。

 女の子は、レオンに目を向けている。

 女の子の傍で倒れているブラッディウルフ。

 レオンはたった一つの剣を投げて、女の子を救ったのだ。

 丸腰になったレオンは、また優しい笑顔になると、


「逃げるんだ」


 優しい声でそう言った。

 牙が、爪が、レオンに襲い掛かる。


 つづく


寒くなってきましたね。 眠いです

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