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かつての魔王と、未来の勇者  作者: いぬ課長


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序章1 始まりの魔王

初投稿です。

レオン君とイリスちゃんの冒険を見届けてもらえたら嬉しいです

 星明かりが降り注ぐ森の中。

 その光の刺す先に一人の女の子が眠るように倒れていた。

 神秘的に輝く美しい銀色の髪に星の光が反射して、そこだけが森の中をほのかに明るくしていた。

 その光に誘われて、森の中から小さな妖精たちが現れる。

 すこしだけ戸惑いながら、妖精たちは女の子に近づいていく。


「だれだろ? この子、昨日までここにいたっけ?」

「んーん。 いなかったと思う。 こんな綺麗な髪の色の子、見たことないもん!」


 妖精の一匹が興味を持ったのか好機の眼差しで女の子の顔に降り立った。

 覗き込むようにして見てみると、女の子の顔立ちは、髪の色にも負けないぐらい綺麗で、いや可愛いらしさの方が勝っているだろうか、とても整っていた。


「綺麗な子・・・でも、なんでこんなぶかぶかの・・・わっわっ」


 妖精がそこまで言った時、女の子のまぶたが少し動いた。

 すると慌てて妖精たちが動き出す。


「起きた起きた! たいへんたいへん!」


 妖精たちは互いにぶつかり合いながらも一目散に木陰の中に隠れていった。

 少しの沈黙の後、女の子が目を覚ます。

 身体を起こして、片手を上げながら背伸びをすると、ふわぁぁっと声を漏らした。

 可愛らしい声と共に、瞼を開くと、赤い瞳が周囲を見回した。


「う、ん・・・?」


 女の子は、しばらく呆然としていると、木陰の中で隠れている妖精たちに気が付いた。


「のぅ、そこの者、ここはどこじゃ?」


 女の子の質問に、答えは返ってこない。

 木陰の中で妖精たちはひそひそと何か会話しているが、こちらの質問に答える気はないようだ。

 そんな様子を気にもせず、女の子はさらに考え込む。


「うーむ・・・我は確か、勇者と戦っていたはずじゃが・・・」


 顎に手を当てて考えるが何が起きたのか全く思い出せない。

 しかし、覚えていることもある。

 我の名前は、イリス・フィーリエ。

 圧倒的な魔力で世界を絶望に叩き落した魔王だ。

 我の力は人々を畏怖させ、さらにその美貌は人だけではなく魔族すらも魅了するほどである。


「そう我は美しいのだ。 ふふふ」


 自然とそう呟きながらイリスは自慢げに笑みをこぼした。

 ハッと我に返り。

 いやいや、いまはそんな事に浸っている場合ではない。

 イリスは首を振り、再び考えを進める。

 そんな美しい我が魔族を率いて世界を侵略し、その全てを手中に収める寸前だった。

 しかし・・・


「まさか・・・ぐぬぬぬ・・・勇者が現れるとはのぉ・・・」


 人の子である勇者が現れ、魔族はつぎつぎと倒されていった。

 やがて勇者の刃はイリスにまで届き、

 それから・・・それから・・・


「くぅぅ、思い出せん。 奴との戦いはどうなったんじゃ? 我は勝ったのか?」


 うぬぅ~っと頭を働かせると頭痛がしてきたので左手でこめかみを抑えながらイリスは立ち上がった。

 もう一度、周りを見渡してみる。

 星明かりしかないので木々の間には暗闇がどこまでも続いている。

 おそらくどこかの森であろうか・・・

 ここがどこかは分からないが、とりあえずイリスはその赤い瞳を細めて声を発した。


「シウ! ホロバス! いるか!」


 イリスは配下の名を呼んだ。

 しかし、暗闇からは返事が返ってこない。

 名を呼んだ二名は、いつもイリスの側にいた忠臣ともいえる魔族である。

 いつもなら名を呼んだだけですぐに駆けつけてくるのだ。

 だが、今は姿どころか、返事も返ってこない。

 この二人がいないということは・・・


「我は一人ということか」


 勇者との戦い、配下の不在、分からないことだらけだが、いつまでもここにいては何も始まらない。

 イリスが歩き出そうとした、その瞬間、


「ウォオオオォォォッォッッッ」


 唐突に何かの雄たけびが森の中に響き渡った。

 木の葉が舞い上がるほどの衝撃がイリスの耳をつんざく。

 その雄たけびで、木陰に隠れていた妖精たちが大慌てで逃げ出した。

 妖精の光が暗闇の中に遠ざかっていく。

 それを見つめながら、イリスは動じることもなく振り返った。

 そこには一体のオオカミ型モンスター『ブラッディウルフ』の姿があった。

 全身は青い剛毛に覆われており、金色の瞳が暗闇の中でも獲物を見つめて鋭く輝いていた。

 性格は好戦的。

 相手の身体を引き裂き、全身に血を浴びるほどの獰猛さからブラッディウルフと呼ばれるようになった。

 傷を持つほど強くなるという特性を持っており、『傷持ち』と呼ばれるほどの個体は、群れのリーダーとなる傾向にある。

 目の前に現れたブラッディウルフは、体だけでなく、片目にも深い傷を持っていた。

 つまり・・・

 イリスの視界の端に影が動く。

 木々の影から数体、手下のブラッディウルフ達が姿を現わした。


「ふん。 小物風情が何用か」


 イリスはブラッディウルフを一瞥するや、興味もなさそうに声を発した。

 その言葉に『傷持ち』が反応するように唸りを上げた。

 威嚇するように、あきらかな敵意を込めて。

 強靭な肉体に力が満ちていくのが見て分かった。

 片目である『傷持ち』の金色の瞳がイリスを捕食対象として捉える。

 しかし、その敵意の眼差しを受けてなお、イリスの赤い瞳が鋭い眼光でブラッディウルフ達を射抜く。


「面白いのぉ、我を喰らおうというのか? ふん。我を誰だと思っておる」

「グルルルルゥ!(メシがしゃべるなっ!!)」

「ふん! バカどもめ! 死で償え!」


 その言葉を皮切りにブラッディウルフの強靭な足腰が一斉に地を蹴った。

 土煙を上げながら迫りくるブラッディウルフを見据えながらも、イリスは不敵な笑みを浮かべていた。


「ふん。 魔王である我に歯向かうとは・・・愚か」


 右手を前に突き出し、魔法の詠唱を唱える。

 魔族の中でも群を抜いてイリスの魔力は飛びぬけていた。

 その魔力は凄まじく瞬く間に世界を闇に落とし入れたほどだ。

 イリスが詠唱しながら右手に魔力を集中させようとしたとき、また妙な頭痛が襲ってきた。


「っつ!? さっきからなんじゃこれは・・・」


 痛みもそうだが、ふと違和感に気づく・・・

 これは・・・


 魔力が・・・ない?


 どんなに魔力を練り上げようとも、いっこうに魔力が湧いてこない。

 と、いうことは・・・

 ふと、前を見ると・・・


「グルルルルラァァァァ!!!(死にさらせぇぇぇ!!)」


 思考する間もなく『傷持ち』の牙が、イリスの目の前にまで迫ってきていたのであった。


 つづく。




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