マーテス家の結婚〜三男の場合〜
これはわたくし達の契約結婚である。
婚約者であるユークリフ・マーテスに会ったのはテルミナ・ロドリスが16歳になる年だった。
貴族社会では10代半ばを過ぎれば婚約者を探すのもめずらしくはない。実際に成人してから籍を入れる家が大半であっても、探し出す時期としては16という歳は大して珍しくもないのだけれど、探しているつもりのなかったテルミナには寝耳に水の話であった。
「え、マーテス家とお見合い?」
自室で父の代わりに来年の領地の格予算を算出していた所、その話は飛び込んできた。
「そーなのよ!マーテス家に嫁いでくれるお嫁さんを探してるみたいだったからうちの娘どーですかって話をしてみたらぜひ一度会ってみないかって」
るんるんとスキップでもしそうな足取りで部屋に入ってきた母は手紙をこちらに見せながら机の向こうから顔を近づけてくる。あまりの近さに思わず椅子ごと体を引きながらその手紙へと視線を移す。
「ほら、テルミナは領地の管理もうちで手伝ってくれてるし、侯爵家の領地を取り仕切るのだってちょちょいのちょいかしらと思って言ってみたのよ〜」
軽い。あまりにノリが軽すぎる。
マーテス家は他の貴族と違い武勲で手柄を立てている貴族だ。マーテス領はまったく他の領地とは勝手が違う。
まず現在国内において魔物が出るのなんてマーテス領だけであり、国の砦を補い国の騎士団とは別に私兵団を組み、土地の魔力量も魔術師の人数も他と違うのである。
ほぼ王都の屋敷の管理と小さな田舎の領地へ使う予算の計算ぐらいしかせず、伯爵という爵位を頂いてはいるが王都で役職についている父の代わりに領主代理を立て、領地には様子を見に年に2度しか帰らぬ我が家とはまったくの別物だ。
「…お母様、そういうのは先にわたくしに確認をとってからお決めになるのではなくて?」
「あら、お茶会で侯爵夫人から直接聞いたからその場で言ったことすっかり忘れてたの。ごめんね?」
こてんと首を傾げてまったく悪びれてなさそうな謝罪をされ、毎度のことながら思わずペンを待つ手に力がはいる。ミシッと音を立てたこのペンもそろそろ折れてまうかもしれない。今月2本目だ。
プラチナブロンドの髪をなびかせながらずうずうしくも人の私室でお茶の用意をメイドに頼んでいる母は、実年齢より見た目はずっと若く見え、長年社交界の華に君臨し続けている。これでも国の中枢で働く父を社交界では上手く支えているのだが感覚で生きている母には父も父の生真面目な面が似てしまったテルミナも翻弄されっぱなしだ。
「それでね、明日王都にあるマーテス家でお茶会をすることになったのよ!ドレスを選ばなくちゃね!」
「明日!?」
そう言ってこちらの返事を聞くことなくドレスルームに入っていく母の背中をテルミナは唖然と見つめることしかできなかった。
マーテス家というと子息が3人いる。
確か長男はもうとっくに成人して騎士団の副団長をしていて熊のような大男で、次男はこの間騎士見習いを卒業したばかりで大変美男だと聞いた。そして三男は学園に入ったとかなんとかいつだかに聞いた気がする程度で年齢も曖昧だ。その家柄や容姿も相まってもともと注目が集まりやすいのはもちろんだが、子息が誰一人結婚も婚約もしていない為、常に社交界では噂の的である。
しかしテルミナは遠目からしか見たことがなかった。
母により強引に参加させられる夜会では、いつも気の合う女友達ぐらいしか親しく言葉を交わすことはない。彼らを見かけても婦女子に囲まれているところを遠くから眺める程度で、周囲への挨拶もそこそこに人とろくに目も合わせることも踊ることもせず、ドレスの窮屈さに耐えながら壁の花と化しているテルミナからは雲の上のような方々だ。
どうやら母はどの子息か聞き忘れてしまったようで今回のお相手が誰かわからないまま当日を迎えた。とんだうっかりである。
年齢が釣り合う次男のエリオット・マーテスか向かい入れた嫁を領地に連れて行くのであれば長子のオルガラン・マーテスだろうという事だ。どちらにせよテルミナには言葉を交わしたこともない2人の顔はぼんやりとしか浮かばなかった。
王都にあるマーテス家の邸宅は貴族の屋敷としては建物自体はお世辞にも大きいとは言えないが、邸宅内はもちろん、入る門から建物内に入るまでのタイルの細部まで手が行き届いており、全てが一級品のものだ。そしてお茶会の場として案内された庭園はとても広く季節の花々が咲き誇り素晴らしいものであった。
どうぞお座りになって、と勧められた椅子はとてもふかふかで座り心地がよく、テーブルには香りのいいアイスティーと色とりどりで美味しそうなマカロンやクッキー、一口サイズのケーキが並んでいた。そこにはマーテス夫人ともう1人、神秘的な艶やかな黒髪に翡翠色の瞳をした妖精のような男の子が座っている。
見たことのない顔に一瞬戸惑ってしまったテルミナに対して、隣に座る母は流石というべきか、母も予想外であっただろうにまったく動揺を見せなかった。
「テルミナさん、来てくれてありがとう。こちら三男のユークリフよ。年は13で学園に通っているの。今何年生だったかしら?」
「2年生だよ、母上。テルミナさんは16でしたよね?学年としては3つ下ですね」
ニコリと笑った中性的な男の子は先ほどから黙ったままのテルミナを見た。
テルミナ達の予想はどうやら外れたらしく今回のお見合い相手は彼であるようだ。長男でも次男でもなく目の前でニコニコと笑う顔は紛うことなく子供と言っていいほど幼く、声変わりもしていない。
「テルミナ、テルミナ挨拶なさい」
母に膝を叩かれこちらだけに聞こえるよう小さく声をかけられ、はっと居住まいを正した。
「…失礼致しました。テルミナ・ロドリスと申します。先日学園を卒業し、16歳になりました。ユークリフ様は今2年生でいらっしゃるということは去年は同じ学園で学んでらしたのですね」
「はい。なのでテルミナさんは先輩ということになります」
「あら、あらあらじゃあもしかして学園内でも会ってるのではない?」
テルミナ当人より前のめりな母の目が輝きだす。
やめてくれと声に出したいのを我慢して何食わぬ顔して服の裾を引っ張るだけにとどめた。
「ええ、僕は何度かテルミナさんを見たことがあります。学園じゃ有名な方ですから」
どうやら彼は見た目どうりの少年ではないようで随分と大人びた喋り方をする。
その後テルミナとユークリフに接点があったことを好機と見たのか母はそれからしばらく4人で話すと2人で庭の散歩でもしてこいと早々に追い出されてしまった。
初夏に入り最近は随分暑くなってきたなと日傘を傾けて雲一つない空を見上げる。
母と同じプラチナブランドを一つに編み込み、首まできっちりとボタンが閉められたラベンダー色のドレスの下で、下着によって肉付きがいい身体のあちこちをぎゅうぎゅうに押し潰しているからか今日も今日とて胸が苦しい。
下着で固められ、長い手袋で素肌を隠しているテルミナの格好はこの季節にはなかなか暑くるしい。
半歩前を歩くユークリフはそんな暑さなど感じていないような涼しい顔をしている。
風になびく艶やかな黒髪の下に見える横顔は文句の付け所がないほどに美しく、誰もが振り返る美貌である。だがその輪郭は丸みを浴びておりどこか幼い。先ほどの会話を聞くに彼はまだ13歳になったばかりの子供だ。涼しげな半袖のシャツから覗く腕や足は長いがやはり成長期手前の少年のそれであり、背もヒールの履いたテルミナより15センチは小さい。
「あの、ユークリフ様」
「はい」
歩きながら声をかけるとその顔にかすかな笑みを浮かべたまましっかりとテルミナの目を見る。
「不躾ながら、質問をしてもよろしいでしょうか」
「えぇ、どうぞ」
「ユークリフ様は13の歳でしょう?今回婚約者をお探しとのことでしたがなぜそんなに急いでおりますのでしょうか。皆様学園を卒業してからお探しする方の方が多いでしょう」
エリオットかオルガランが来ると思っていたテルミナはまさかユークリフが婚約者を探しているとはまったく思わなかった。幼少期より仲良くしている家同士であれば小さい頃より婚約している貴族もいるがそう多くはない。一般的に卒業後を意識しだす15歳あたりで婚約者を探し始め、成人までに見つける貴族が多い中、13歳とはいささか中途半端である。
テルミナとしては純粋な疑問であったが、どうやら彼には違うように聞こえたらしい。
「そうなんですが、少し事情がありまして。テルミナさんはてっきり兄上が来ると思って居ました?顔を合わせた時あなたの母君は表に出しませんでしたけどあなたは僕を見て少し動揺されてましたもんね」
そう答えた顔は笑ってはいたが声にぴりりと緊張が走った。顔を合わせた時の動揺はユークリフに伝わっていたようだ。
テルミナは傘を下ろすとパチンと閉じる。
「決してユークリフ様のお兄様方を期待していたわけではございません。単純に年齢が近い方、もしくは家同士の結婚の為ならば長子の方がお探しなのかと思っただけですの。ですが、申し訳ございません。わたくしが未熟な為、不快な思いをさせてしまいました」
深く頭を下げると相手が少し怯んだ気配を感じた。顔をあげるとどこか遠い国の言い方で言うと鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。
目が合うとさっと視線をそらされる。
「…いえ、こちらこそ申し訳ありません。少し棘のある言い方をしてしまいました」
感情的になったのが恥ずかしかったのか俯いた髪の隙間から見える耳が赤くなっているのを見るとふっと自分の顔が緩んだのを感じた。
またパチンと傘を開くとユークリフに近づく。
「ここは日差しも強いですし、あちらのベンチに座りませんか?」
少し先の木の下で日陰になっているベンチへ視線を向け、ユークリフに手を差し出すとその小さな頭はこくりとうなづき、おそるおそるといった風に手を重ねた。
ベンチに2人で座り、その手を離すと俯いたままぽつりとユークリフが呟いた。
「テルミナさん、お願いがあるんです」
「はい、なんでしょう」
「その前に僕の話を聞いてもらえますか?」
「え?…ええ、わたくしでよければ」
「…実はマーテス領は僕が継ぐ予定なんです」
そう呟いた彼は何処か疲れたような顔をしている。よく見ると長めの前髪の間から見えるその目の下には大きな隈があった。
そこはかとなく嫌な予感がしつつ断れなかったテルミナは思ったより重ためな話で少し怯んでいた。
ユークリフは手を組んでまるで仕事に疲れた中年のように大きなため息を吐くとなにかのスイッチを押してしまったのかこちらの相槌を待つことなく続けた。
「父上も兄上達も剣術馬鹿で脳筋なので体を動かしてる方が好きみたいで、僕もマーテス家の一員なので一通り剣術も馬術も習っているのですがそこまでのめり込めなくて、どちらかというと経営やお金の事を考えてる方が好きなんです」
どこ棘のある言葉と突然のカミングアウトに驚きつつ、話し手が真剣な顔をしているのだからこちらもいちいち突っ込むわけにはいかず、なんとか神妙な顔を作って頷く。
「人には向き不向きがありますものね」
「えぇ、なので机仕事が苦手な父に変わって領地のことは父上の弟である叔父上がほとんど管理しているんです。私兵団を率いて命懸けで砦を守っている父上を尊敬してますが普段ことあるごとに全てを筋肉で解決しようとすることがどうしても受け入れられず、僕は叔父上派なんです。でも世の中は父上や兄上ばかり褒め称えて、叔父上だって立派に領地をおさめてるのに。最近エリオット兄上まで脳筋になってきてるし学園にいた時は秀才といわれていたのに騎士団に入ったらいつのまに脳が筋肉に侵されて…正直、王都にいたら僕も脳筋になってしまうんじゃないかって怖いんです!」
滝のように支離滅裂に溢れ出す言葉と手のひらで顔を覆いながら深く絶望する少年に初対面であるテルミナに何が言えるだろうか。突然始まってしまった人生お悩み相談所に逃げ出すことも出来ず、話を聞くと言った手前、やっぱり込み入った話だからほかの人に話した方がいいのではないかという提案も出来なかった。「いっそ脳筋になってしまったらいいのでは」という言葉を口に出さない理性は持っていたテルミナは現実逃避に風に揺れ、すっかり緑も深くなった木々の葉を見つめる。
あら、あの赤い花なんていう花かしら。とっても綺麗。
「だから卒業したら一刻も早く領地に行って叔父上の下でマーテス領について学ぼうと思っているんです。いえ、マーテス家こそ筋肉と魔法の地であることは重々承知なんですが、やはりそこを頭脳と知恵で生き抜いている叔父上を推したいというか。あいにくオルガラン兄上もエリオット兄上も家を継ぐことにまったく興味がなさそうなので僕が継ぐことになんの壁もないんですが最近母が、母が…」
そう言ってユークリフは言葉に詰まると、今テルミナが見ていた庭園へと視線を向ける。
綺麗よね、その花。今度うちの庭にも植えようかしら。
「娘が欲しいって、僕に言うんです」
「そう…娘が」
「オルガラン兄上に女性の影がまったくないから縁談を持ってきても急遽百人組み手が入ったとかわけのわからない言い訳ですっぽかすし、エリオット兄上は初恋拗らせて全然実らなそうだし、ついに僕に縁談を大量に持ってくるようになったんです。僕が領地に行く前になんとか相手を見つけたいようで実はすでに17回お見合いを開いてます。テルミナさんは18人目です」
「まぁ、それはとても大変」
「まだ卒業まで時間があるというのに、このままでは僕の学園生活は縁談で終わってしまいます。それで、その、実はテルミナさんの話が来た時、ラッキーだなと思ったんです」
顔を上げたユークリフ様が意を決した力強い目でこちらを見てくる。懇願するような縋るような目になにやら不穏な気配を感じつつ先を促した。
「あら、どうして?」
「テルミナさんは男の人が苦手だと聞きました」
そう問われて、そうですねとうなづく。
正確に言うと、苦手というよりなるべく関わりを避けている。自分で言うのもなんだがテルミナは異性から好意を受けやすかった。母に似た真っ直ぐで艶やかなプラチナブロンドの髪、真珠のような白い肌、アメジストのように輝く瞳に垂れた目尻、ぽってりとした桜色の唇。
なにより成長の早かったテルミナは16歳という年齢でありながら出る所が出て引っ込む所が引っ込み、見事な曲線を描く女性らしい身体になっており、男性の視線を集めやすい。
目が合ったというだけで勘違いした男に何度身の危険を感じたか。いくら下着で押し潰して肌を隠してもトラブルは尽きなかった。
最近は男性とは必要な時以外はあまり目を合わせず距離をおくようにしていたら、男嫌いだと噂が流れ、こちらとしても都合がよかったので噂をそのままにしていた。
「僕、ものすごい女顔なんです!」
「そうですね。大変可愛らしく可憐なお顔をしてると思いますわ」
「これから筋肉を育てる予定もありません!実際に結婚は僕が成人する時までに考えてくれれば構いません!成長途中で無理だと思ったら婚約破棄してくださってもいいです!ですから!お互い!風除けになりませんか!!」
…凄く必死だ。
血走った目で懇願するその言葉には男としての下心や本来失礼ではあるが女としてこちらを求めるようなものはまったくなかった。彼が少年だからか。いや、おそらくそれほど切迫しているのだろう。彼の生活がかかっているのだ。
「どうしてわたくしに?今まで会った方だっていい方はいらっしゃらなかったのですか?」
「あなたが18人の中で1番事務的だったからです」
「あら、わたくしがお兄様と勘違いなさったことにお怒りだったのでは?」
「それは申し訳ありません…一瞬この人も筋肉を期待してたのかと勘違いしてしまい、つい熱が入ってしまいました」
しゅんっと肩を落としたユークリフに最初の印象より案外素直な反応をするなと思った。どうやら筋肉至上主義の世の中がどうにも許せない頭脳派らしい。
「テルミナさんは知らないかもしれないですが、僕、この顔なので学園でも有名なんです。おそらくテルミナさんに負けず劣らず凄くモテます。女性にも男性にも」
それは凄く大変そうである。テルミナも同じような歳から大変な思いをしているので共感できるがユークリフの場合は男女問わずとなれば本当に気が抜けないだろう。
「だいたい一度会ったら忘れられることってほとんどないんですが、テルミナさんは毎回僕を忘れます」
「…え?」
雲行きが怪しくなってきたぞと冷や汗が流れる。これだけの美少年だ。認識したら忘れないだろう、と言いきれないところが痛いところだ。普段目を合わせないようにしているからか人の顔を覚えるのが大の苦手であることは自覚していた。実際記憶を探ってみても彼がどの場面にいたかまったくもって思い出せない。
「何度も挨拶をしていますし、図書室の隣に座ったこともありますし、食堂の向かいの席に座ったこともあります。そして僕は気づいたんです。テルミナさんの近くにいると人が寄ってこないことに」
どういうことでしょう。
ハンカチで汗を拭いながら耳を傾ける。
手袋も下着もとって普段着てる色気もへったくれもない寝巻きに着替えたいと頭のすみで思いながら、それだけ接触されて認識していない自分の危機管理能力はもしかして脆弱なのではと気づいてしまった。
「1人1人だと効力が弱いんです。女神のようなあなたと妖精のような僕が一緒にいることで人は皆、その澄んだ空気に近づきにくくなるのです」
「なかなか自画自賛が凄いですね」
「事実なので」
確かに事実ではある。ユークリフはこれからどう成長するかはわからないが今現在、中性的でとびきり美しい容姿をしているし、女神かどうかは置いておいてもテルミナ自身もそれなりに自分の容姿が優れている事を自覚している。
「なので、僕とテルミナさんが一緒にいればなんだって跳ね除けられる気がするんです!除霊みたいに!だから婚約しましょう!」
そうキラキラ光る翡翠の瞳を見つめているとそうすることが正しい気がしてくるから不思議なものだ。実際言っていることは突拍子もないのだが確かに先程自分の危機管理能力への疑問を持った所ではあるし、美とは過ぎれば近寄り難く、上手く使えば武器にもなるのだろう。今まで自分は母のようにこの容姿を上手く使えていなかっただけで。
周りの者を霊扱いする少年に思うところはあれどとりあえず何か言わなくてはと言葉を探す。
気づけば二人になってから1時間近く経っていたのだろうか。来た時はまだ少し傾いていた日差しが真上にさしかかっている。
どうりで暑いわけだ。ものすごく喉がかわいた。
テルミナの顔をこれが最善であり最良だと期待に満ちた目で見てくるユークリフにゆっくりと視線を戻すと、
「ええ、婚約しましょう」
深く考えるのをやめた。
そうして婚約したユークリフ・マーテスとテルミナ・ロドリスはユークリフの身長が25センチ近く伸び、筋肉に挟まれた結果多少筋肉を育ててしまっても婚約は解かれず、ユークリフが成人する20歳の時、無事に婚姻関係が結ばれた。
領地の戦闘が落ち着いた頃、2人はマーテス領の後処理に尽力するとその15年後、ユークリフはマーテス家を正式に継いだ。
国一番に美しい夫婦が並ぶ姿絵は美の暴力と評判で飛ぶように売れたらしい。
その後5人の子宝にも恵まれ、マーテス領は美と子宝の地として多くの人が訪れたとか訪れてないとか。
昔テルミナの周りをうろうろしていたユークリフが実はあれは一目惚れというものだったのではないかと気づいたのは結婚して何年も経った後だという事はまた別の話。
おわり