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Chapter 4


俺と竜也は、駅前のデパートへ入った。



デパートの6階にある、広場のベンチに腰を掛け、暫く行き交う人を眺めていた。



俺は、竜也にこう問い掛けた。



「竜也、確かギター弾けたよな?」



「あぁ、一応人並みくらいには弾けるつもりだけどな」



「そうか。良かった」



「どうしたんだ?」



竜也は、俺の問い掛けに不思議そうな表情を浮かべた。



そして俺は、そんな竜也に向かって、思い切って誘った。



「竜也、ウチのバンドに入らないか?」



「なんだ急に?」



竜也は、目を丸くして俺を見つめた。



「実はな…。ウチのギターが抜けたんだよ。とにかく、ある程度の技術を持ってるヤツを探しててな。やっぱり、ライブハウスとかで募集して応募に来た、初対面なヤツよりは、友達とか、友達の友達とかの方が良いだろう?」



俺は、竜也の不安を掻き消すように、微笑みながら竜也を誘った理由を言った。



「なるほどな」



理由を聞いて安心したのか、竜也も俺の話に真剣に耳を傾けた。



「だからさ。無理にとは言わない。でも、入ってくれると俺は嬉しいし、メンバーも喜ぶと思うんだ」



俺は、駄目元で竜也を誘った。



心の中では、



「断られても仕方がない」



とさえ、思っていた。



しかし、竜也からは意外な答えが返って来た。



「分かった。俺で良いなら引き受ける」



俺は、竜也の返事に耳を疑った。



「聞こえなかったのか?やってやるよ。お前のバンドのギター…」



俺は、竜也のその言葉がとても嬉しくて、つい声のトーンが上がってしまった。



「ありがとう。さっそく、メンバーと顔合わせしたいんだけど、今日の夜は空いてるか?」



俺の急な誘いにも、嫌な顔一つせず、



「別に構わないぞ」



と、竜也は微笑みながら答えた。



「じゃあ、一応、バンドのリーダーの俊哉に連絡してみる」



「分かった」



俺は、逸る気持ちを抑えて、俊哉に連絡を取った。



『プルルル…』



「あっ、もしもし?俊哉?一人、良いギターが見つかったぞ。今日の夜にでも顔合わせしたいんだけど…」



「……」



「あぁ。分かった。じゃあ、夜にいつものファミレスな」



電話を切るなり、俺は笑顔で竜也に言った。



「竜也、OKだって。今日の夜9時に、駅前大通り沿いのファミレスで会おうって」



俺の気持ちは、嬉しくて高揚し、抑えきれなくなっていた。



「そうか。分かった 」



竜也は、そんな俺を微笑みながら見ていた。



「このまま、夜まで時間潰すか?」



「そうするか」



俺達は、暫く駅前をブラブラして、夜まで時間を潰す事にした。



約束の21時を少し回って、俺達は大通り沿いのファミレスへ到着した。



ファミレスの駐車場では、既に俊哉が待っていた。



「静流、遅いぞ」



全身黒ずくめの服装で、腕組みをし、金髪で、まるでアイロンでも当てたかのようなストレートの長い髪の間から、鋭い眼光で俺を睨み付けた。



俊哉の身長は、180cmを超えている為、その鋭い目線で上から睨み付けられると、誰もが威圧されてしまいそうなオーラを放っている。



「あぁ、ごめん。良い物無いか、駅前をうろついてたら遅くなった」



「…ったく」



俊哉が、呆れ顔で俺を見た。



「俊哉、新しいギターの竜也だ」



俺が、俊哉に竜也を紹介した。



「はじめまして。小野瀬竜也です」



「こちらこそ。俺は桜井俊哉です。よろしく」



俊哉は、さっきまでの、殺気立った表情と打って変わって、穏やかな表情で竜也と握手を交わした。



「よろしく」



「あれ?充は?」



俺は、俊哉に問い掛けた。



「あぁ?アイツ、さっきまでこの辺にいたんだけどな…」



俊哉は俺の問い掛けに、思い出したように辺りを見回した。



すると、ファミレスの中から一人の若い男が出て来た。



…充だ。



ボロボロのクラッシュデニムに、Tシャツ姿というラフな服装に、金髪で無造作にセットされた髪型、それと、唇の左側に通されたリング形のピアスと、両耳いっぱいに開けられたピアスが一際目立つ。



ただ、顔立ちは、どちらかと言うと、女性的な雰囲気すら漂っている。



「おっ、静流じゃん。あれ?その人が新しいギター?」



「そうだよ。竜也って言うんだ」



「へぇ。そっか。俺は、朝霧充。よろしくね」



「小野瀬竜也です。よろしく」



「それはそうと、充?店の中から出て来たけど、どこへ行ってたんだ?」



俺は、充に問い掛けた。



「ん?あぁ、トイレ」



笑いながら、充は答えた。



「だって、静流が遅いから、我慢できなくてさ…」



笑いながら、充は答えた。



「まぁまぁ。立ち話もあれだから、中に入ろうぜ?」



いつまでもキリがない俺達の会話に割って入るように、俊哉が俺達を店内へ誘導する。



「そうだな」



俊哉の言葉を合図に、俺達四人は、揃って店内へ入る。



「いらっしゃいませ。何名様ですか?」



「四人です」



「おタバコは吸われますか?」



「はい」



「じゃあ、あちらの奥の席へどうぞ」



案内された席に着く。



「ご注文がお決まりになりましたら、ボタンを押してお呼び下さいね」



「はい」



「何にする?」



俊哉は、メニュー表をテーブルの真ん中に広げ、全員のオーダーを聞く。



「とりあえず、腹減ったぁ…」



充が、脱力したように言った。



「何でも頼めよ」



俊哉は、今にも餓死しそうな程の勢いの充に、素っ気ない態度で答えた。



「何しようかなぁ?何でも頼めって事は俊哉のオゴリ?」



充は、期待を含んだ笑みで俊哉を見つめた。



「いや、充の自腹」



俊哉は、充の言葉を聞くや否や、意地悪な微笑みを浮かべ即答した。



「ケチーッ!!」



充は、俊哉の返答に大声で叫び、口を尖らせた。



一人、不満そうな充を一瞥して俊哉は言った。



「静流、お前達も何か頼めよ?」



「俺、あんまり腹減ってないしなぁ…。俊哉は晩飯食ったのか?」



「いや、まだだけど。静流は、食欲ねぇのか…。竜也は何にする?」



「俺も腹減ってねぇしなぁ…。じゃあ、ドリンクバーにでもするかな」



「じゃあ、俺も」



竜也の答えを聞き、俺も一緒の物を頼む事にした。



「俺もそうするかな。あんまり腹減ってねぇし」



俊哉のオーダーも決まった。



そして、まだメニュー表と睨めっこをして、オーダーを決めあぐねている充を、三人で見つめた。



「充、決まったのか?」



俊哉は、溜め息混じりに充に言った。



「うーんと…。ハンバーグも良いしなぁ…」



「早くしろよ…」



俊哉の表情からは、そんな声が聞こえて来そうだった。



「まだかよ?」



「…じゃあ、唐揚げ定食とドリンクバー。もう、俊哉はせっかちなんだからなぁ…」



充は、口を尖らせながら俊哉を見る。



そんな充を無視するように、俊哉は店員を呼ぶベルのボタンに手を掛けた。



「じゃあ、呼ぶぞ?」



そう言いながら、俊哉がボタンを押す。



暫くして、店員が俺達の元へやって来た。



「お待たせ致しました。ご注文をどうぞ」



「ドリンクバー4つと…」



俊哉が注文している所へ、充が割って入るように叫ぶ。



「唐揚げ定食っ!!」



店員は対応に困り、苦笑いを浮かべている。



「そんなデカい声出すな。恥ずかしい」



俊哉は、充を退いた目で見つめながら、一言ぼやいた。



「良いじゃん、別に。分かるように言っただけだし」



俊哉のぼやきに、充はすかさず反論する。



そんな俊哉と充のやり取りを見た店員は、対応に困り果てたように、ただ笑っているだけだった。



全員の注文が済み、俺達はドリンクバーへドリンクを取りに行く。



そして、席へ戻りいよいよ本題へ入る。



「竜也は、ギター歴はどのくらいなんだ?」



俊哉が、話を切り出すように竜也に問い掛ける。



「そうだなぁ…。始めたのは、中学の時からで、それに、前にバンドやってた事もあるんだ。その時のバンドは、たしか3年くらいやってたかな?後は、他のバンドのサポートで呼ばれたり…」



意外にも、経験が豊富な竜也に俺達は驚いた。



「へぇ。結構経験積んでるんだな。ちなみに、今は、バンドとかはやってないのか?」



俊哉は、更に竜也に問い掛けた。



「今は、特にやってないよ。たまにサポート入るくらいで…」



「じゃあ、ウチの正式なギターとして迎え入れても大丈夫なんだな?」



俊哉の声が、弾んでいるのが分かる。



「あぁ。俺で良ければ」



喜びを隠せない俊哉に、竜也は微笑みながら答えた。



「決まりだな。静流。良いギターを見つけたな」



俊哉は嬉しそうに微笑みながら、俺を見つめた。



「竜也がギターを弾けるって聞いた時に、ピンと来たからね」



俺は、微笑みながら得意気に答えた。



「竜也、ウチのバンドは、こんなヤツらだけど、ウチのバンドを代表して言うぞ。これからよろしくな」



俊哉は、新しく仲間に加わった竜也に、丁寧に頭を下げて微笑んだ。



「あぁ。こちらこそ、よろしく。このメンバーとなら楽しくやれそうだ」



竜也は、そんな俊哉に安心したのか、微笑みながら俊哉と握手を交わした。



「良かった。じゃあ、今度、スタジオへ行って音合わせしないとな」



俊哉の提案に、



「賛成」



と、充は唐揚げを頬張りながら手を挙げる。



「さてと、いつやるかな?」



俊哉はケータイのカレンダーを見ながら、そう呟いた。



「俺はいつでもOK」



俺は、特に予定が無いので即答した。



「俺は、今週の金曜以外ならいつでも良いぞ」



竜也は、自分の予定を俊哉に告げた。



俺は、竜也の金曜日の予定が気になり、



「何かあるのか?」



と、問い掛けた。



俺の問い掛けに竜也は、嬉しそうに答える。



「女と会う約束があるんだよ」



「へぇ。そりゃそりゃ羨ましい事で…」



俺は竜也を一瞥し、皮肉を言った。



「悔しかったらお前も女作れよ」



竜也は自慢気に俺を見ながら返した。



「ほっとけ」



俺は、竜也の嬉しそうな顔が少し羨ましく思い、口を尖らせそっぽを向いた。



「おい。充は?」



食事に夢中になっている充に、俊哉が問い掛ける。。



「ん?俺も、いつで…モ゛ッ」



食べながら返事をしていた、充の様子がおかしい。



急に、苦しくて今にも死にそうなくらいの表情を浮かべている。



どうやら、食べ物が詰まったらしい。



呆れ果てた顔で、俊哉がグラスに注がれた水を差し出した。



充は、それを急いで口元へ持って行く。



『ゴクッゴクッ…』



「ぷはぁ…。あぁ…。死ぬかと思った…」



充は、涙目になりながらそう呟いた。



そんな充に、俊哉は容赦無く突っ込む。



「ちゃんと生きてるじゃねぇか。ったく、ガッついて食うなって」



「あぁ、美味かった」



充は、俊哉の説教にもお構い無しで、嬉しそうに自分の感想だけを俺達に言った。



「人の話を聞けっ!!」



『パンッ』



俊哉の平手が、充の頭の天辺に、良い音を立ててヒットした。



「フギャッ」



とうとう俊哉の雷が充に落ちた。



充は、頭を撫でながら、口を尖らせ俊哉を睨んだ。



さすがに俊哉は四人の中で、最年長だけあって、しっかりした俺達の兄貴的な存在だった。



俊哉は、クールな見かけによらず心優しく、常にみんなを気に掛けてくれていた。



そんな俊哉を、誰もが慕っていた。



「とにかくどうする?竜也が金曜以外OKなら、土曜はどうだ?俺は土曜の方が都合が良いしな」



「それで良いんじゃない?」



俺が言うと、竜也と充も口を揃えた。



「俺達も土曜で大丈夫だぞ」



「じゃあ、決まりだな」



音合わせの打ち合わせはまとまり、俊哉がそう締めくくった。



「話は変わるんだけど、俊哉は一体、何歳なんだ?」



突然、竜也が俊哉に問い掛けた。



「俺か?俺は24だ」



「へぇ。俺の3つ上なんだ。どうりで落ち着いてる訳だ」



「なんだ、みんな俺より年下か…。竜也は、同い年くらいに見えたのにな…」



どこか悔しそうな表情を浮かべて、俊哉が呟いた。



竜也の質問は、充にも及ぶ。



「当然、充は静流と同い年だろう?」



「大当たり。ちなみに、静流とは幼馴染みなんだ」



充は、嬉しそうに微笑みながら答えた。



「まぁ、充は、雰囲気から年下だろうなって感じがしたんだけどな」



竜也は、苦笑いを浮かべながら充を見つめた。



「ちなみに、バンド名は?」



竜也の問い掛けに、俺達は声を揃えた。



「B-Rave(ブレイヴ)!!」



「B-Raveか。シンプルだけど、なんか格好良いな…」



「Braveって意味は勇気って意味の他に、立ち向かうって意味がある。音楽の世界において、色んな事に挑戦しようと考えてる俺達には、それは、すごく重要な言葉なんだ。それに、BraveのBを取ってみな?Raveって単語になるだろ。Raveの意味は「夢中」って意味だ。当然、俺達は、音楽に夢中。そんな俺達の音楽を聴いてくれる、ファンのみんなや、初めて俺達の音楽を手に取って聴いてくれた人達が、俺達に夢中になってくれるように…。そんな、俺達の気持ちや、願いを込めて付けた名前なんだ」



いつになく、俊哉のトークに力が入る。



「バンド名の話になると、俊哉は熱くなるよね。まぁ、俺は、この名前好きだけどさ」



俺は微笑みながら、俊哉と竜也を見た。



「確かに、意味を聞いたら、すごく良いバンド名だ。よく考えてあるな」



どうやら、竜也も気に入ってくれたらしい。



ふと、時間が気になった俺は、自分のケータイの時計を見た。



時計は夜中の1時を回っていた。



「ちょっと、トイレに行ってくる」



そう言って、俺は席を立った。



静流がトイレに入った事を確認した俊哉は、静かに竜也に言った。



「竜也?静流の家の事とか、静流から何か聞いてるか?」



「そう言えば、静流からも誰からもそんな話、聞いた事無いなぁ…」



竜也は、自分の記憶を辿りながら、俊哉に答えた。



「そうか。実はな…」



俊哉は静流の家庭の事情を、竜也に伝えた。



「えっ?それ、マジで?」



「あぁ。マジな話だ。これは、静流も絶対に知らないはずだ。静流の姉が、静流に話してない限りな。この話は絶対に、静流には秘密だぞ?」



「分かった。静流の家が、静流の姉ちゃんと二人暮らしなのは知ってたけど…。そうだったのか…」



竜也は、言葉を失ったようにうつむいた。



ちょうどそこへ、静流がトイレから戻って来た。



「え?何だ?何の話?」



「静流の姉ちゃんが美人だって話してたのさ」



充は、何事も無かったように淡々と言った。



「そうそう」



竜也と俊哉も、表情を一つも変えず、口裏を合わせる。



「あぁ。遥姉ちゃんか。あの人、最近、彼氏の事でノロケまくりで、ウザいんだよな…」



俺は、つい姉の愚痴を漏らした。



そして、話を逸らすように、俊哉がケータイの時計を見ながら言った。



「もう2時か…。そろそろ帰ろう。明日も仕事あるしな。静流?ライブハウスのオーナーと仲良かったよな?今週の土曜の夜で、スタジオ一部屋貸してくれって頼んでくれるか?」



「分かった。言っとく」



「じゃあ、今日は解散」



俊哉の合図で、全員席を立った。



「俊哉のオゴリじゃないの?」



しつこい充。



まだ奢ってもらう事を諦めて無いようだ。



「しつこいな…。しょうがない。今日は、全員俺の奢りだ」



俊哉は充に根負けしたように、溜め息混じりに言った。



「やったぁ!!」



三人は、両手を挙げて喜んだ。



「じゃあ、静流、頼んだぞ?」



「分かった。昼間にでも連絡しとく」



俺と竜也に見送られ、俊哉と充は、俊哉の車に乗って帰って行った。



「俺達も帰ろう」



竜也に促され、竜也の車に乗った。



家に着く頃には、夜中の3時近くになっていた。



「ただいま」



マンションの鍵を開けると、まだ部屋の明かりがついていた。



短い廊下の奥から、色白の肌に、長いストレートの綺麗な黒髪が印象的な、まるで女優のような顔立ちの優しそうな女性が出て来た。



「静流?こんな遅くまで何やってたの?心配したんだから…」



(始まったよ…。姉ちゃんの心配性…)



「あぁ、ごめん。竜也を俊哉達に会わせたんだ。竜也をウチのバンドに入れようと思ってさ」



「竜也君って、昼間に来てくれた子?」



「そうだよ。アイツ、ギターの腕が、なかなからしいからさ」



「そうなんだ。それならそうと、ちゃんと言ってくれれば良いのに…」



「だから、悪かったって」



「もう…、静流は…」



姉が小言を言っているのを後目に、俺はキッチンへ向かった。



姉は、俊哉と同い年で、同じ高校に通っていた同級生だ。



それに姉が高校生の頃は、俊哉と付き合っていて、俊哉が頻繁にウチに出入りしていた為、俺と知り合い、俺が俊哉にギターを習い、俺が高校を卒業してからは、俺とバンドを組むようになった。



普段はクールな俊哉だが、実は、今でも姉に未練があるらしく、姉の話になると急に不機嫌になる事がある。



特に、男絡みの話は…。



「静流っ。聞いてるの?」



「聞いてるよ」



俺は、コップ一杯の水を飲み干して答えた。



「大体、俺も、もう良い大人なんだからさ、少しはほっといてくれよ…」



うんざりした顔で、姉の顔を見つめた。



すると…。



「静流?あたしがどれだけアンタを心配したと思ってんの…?」



姉は、いつもの穏やかな表情と打って変わって、俺を震え上がらせるようなオーラを放ちながら静かに言った。



(ヤ…、ヤバい…。姉ちゃん、マジギレモードだ…)



「あ、いや、だから悪かったって。今度からちゃんと連絡するからっ。ねっ?」



そう言い残して、俺は急いで自分の部屋へ戻った。



「あっ。こらっ!!静流っ!!待ちなさいっ」



「もう…。あの子ったら…」



遥は溜め息をついた。



部屋に戻った俺は、ほとぼりが冷めるまで閉じ籠もる事にした。



「姉ちゃん、キレたら話長いし、結構怖いんだよな…」



そう独り言を言いながら、俊哉から預かった新曲の音源を聴く為、パソコンを立ち上げた。



CDをセットして再生する。



夜中なので、ヘッドホンを耳に当てながら聞き入る。



「おっ。カッコイイ。どんな歌詞にしようかな」



と、一人の世界に浸る。



気が付けば、朝の5時を回っていた。



そっと部屋から顔を出す。



姉が、自分の部屋で寝静まったのを確認して、シャワーを浴びに行く。



(テーマは暗い感じでって俊哉は言ってたけど…。さて、どうするかな…)



その事ばかり考えた。



自分の部屋に戻り、眠りに就いたのは、朝の6時頃だった。




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