Chapter 32
一方、その頃。
B-Raveの三人組は、東京の、とあるビジネスホテルにいた。
「とりあえず、出て来たは良いが、どうするんだ?これから…?」
竜也は、ベッドに腰を掛け、俊哉に問いかけた。
俊哉は、スポーツ新聞を読みながら、コーヒーを飲んでいた。
「うん…」
新聞をテーブルに置き、俊哉が口を開く。
「そうだな。とりあえず、当面の俺達の活動拠点を探す事、それから、雨風を凌げる、「俺達の住みか」を探す事。この二つだな」
「どこか宛てでもあるのか?」
竜也は、不安そうに俊哉に問いかける。
「無い事も無いが…。まぁ、ちょっと待て」
そう言うと、俊哉はケータイを取り、どこかへ電話を掛けた。
「プルルルル…」
「もしもし?薫か?」
「あぁ。俊哉兄か。どうしたんだ?久しぶりだな」
電話口からは、明るい、若い男の声が漏れる。
「いや、東京で音楽をやろうって思ってな。地元から、出て来たは良いが、この辺りの地理はさっぱり分からん…。だから、お前に案内を頼もうと思ったんだ」
「なんだ。そんな事か。なんなら、今すぐでも良いぞ?」
「本当か?助かった。どこで待ち合わせをする?」
「渋谷駅はどうだ?」
「分かった。渋谷だな。今から、仲間を連れて行くから、よろしくな」
「あぁ。分かった。着きそうになったら、また連絡してくれよ」
「あぁ。分かった。じゃあ、後でな」
俊哉は、電話を切り、竜也と充に言った。
「お前達、今から渋谷へ行くぞ」
「渋谷?今の電話の相手は誰だ?」
竜也は、俊哉に問いかけた。
「あぁ。今のは、従兄弟だ。確か、10年前だったか…。父親の転勤で、こっちに引っ越したんだ」
「へぇ。それで、俊哉は落ち着いてたんだな」
「まぁな。それに、アイツも俺達のようにバンドやってるからな。そっち方面にも、多少詳しいって事だ」
竜也と充は、俊哉の話を聞き、とりあえず安心したようだ。
「じゃあ、そうと決まれば、行くか?」
竜也が、二人の顔を見る。
「あぁ。行こう」
俊哉と充は、声を揃えた。
三人は、ホテルを後にして、徒歩で駅へ向かった。
駅に着くと同時に、行き先の案内板を見た。
「…?さっぱり分からん…」
三人共、首をかしげる。
「とりあえず、環状線とか言うのに乗れば良いのか?」
竜也が先走った。
「待て、竜也。ここは、駅員に聞いた方が確実だぞ?」
俊哉は、竜也を制止して、改札へ向かった。
「すいません。渋谷へは、どれに乗れば…」
「あぁ、渋谷でしたら…」
駅員が丁寧に、俊哉に教えた。
「良し。分かったぞ。みんな、行こうか?」
「あぁ。行こう」
三人は、切符を買い、改札へ向かった。
「おっと…。忘れる所だった。薫に連絡しないとな」
そう言うと、俊哉は、コートのポケットからケータイを取り出した。
「もしもし?薫?今から、電車乗るから」
「あぁ。分かった。じゃあ、駅の改札で待ってるよ」
「あぁ、悪いな。じゃあ、また後で」
そう言って、電話を切る。
「何て言ってた?」
竜也と充が、俊哉に問いかける。
「駅の改札の辺りで待っててくれるらしい」
「そうか。良かった。助かったな」
「あぁ。まだ時間もあるし、薫に、手土産の一つでも買って行くか」
そう、俊哉は呟いた。
「そうだな。せっかく案内してもらうのに、手ブラじゃ、悪いもんな」
改札に背を向けて、三人は、駅の売店へ向かって歩いた。
「クッキーとか、そんなもんで良いか。みんなで食えるし」
「そうだな。下手なご当地土産よりはマシだろう」
「俊哉?俺達も出すぞ」
竜也が、俊哉を気遣う。
「別に、良いって。お前達に出してもらおうとは思ってねぇし」
俊哉は、遠慮したが、充が続いて言った。
「俺達、三人が案内してもらうんだ。だから、俺達も出さないと悪いだろ?気にしなくて良いから」
「そうだな。すまんな。竜也、充」
「良いって。気にすんな」
そう言って、三人がそれぞれ、財布から金を出し合って、薫への手土産のクッキーの詰め合わせを買った。
「じゃあ、そろそろ時間だし、行くか」
俊哉が微笑んで、二人を見た。
「あぁ。行こう」
竜也と充も微笑む。
売店を出て、改札を抜け、ホームへ向かった。
三人が、ホームへちょうど着いた頃、タイミングを計ったように電車が滑り込んで来た。
三人は、それぞれの思いを胸に電車に乗り込んだ。
三人の大きな夢と期待を乗せて、電車はゆっくりとホームを離れて行った。




