表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/54

Chapter 25


姉の車に付いて行く事、約30分。



姉は、街から少し外れた所にある、ショッピングモールの駐車場へ入って行った。



流石に、休日だけあって、混み合っている。



警備員が暑そうにしながら、駐車場の空きスペースへ車を誘導する。



姉の車の横へ、車を止める。



「人混みは嫌いだな…」



俺は呟いた。



「何言ってんの?早く行くわよ」



姉はそう言うと、麻紀とさっさと、建物の中へ入って行く。



「お…、おい。待ってくれよ…」



俺は、慌てて追いかけた。



「麻紀ちゃん、どこから行く?」



姉の目が輝いている。



「うーんと…、服、見に行きません?見たい服があるんです」



麻紀も、活き活きとしている。



「良いわね。じゃあ、2階に行こっか?」



「はい」



この二人、正に「水を得た魚」状態である。



俺は、麻紀はともかく、姉の買い物と言う事に嫌悪感を抱いていた。



(どうせ、またバカみたいに大買いするんだろ…?勘弁してくれ…)



俺は、過去の姉の買い物に付き合った事を思い出した。



(そう言えば、前の買い物の時は、リビングにある、小さいソファと、キッチンの食器棚と、後は…、両手いっぱいの、ヤツの服が目一杯詰まった紙袋を運ばされたっけ…。はぁ…。今日も、多分そうなるんだろうな…。あぁ…。憂鬱だ…)



そう考えたら、気が滅入って来る。



「ほら、着いたよ。麻紀ちゃん、どんなの欲しいの?」



「えぇっと…」



目を輝かせながら、店の中へ入って行った二人。



「静流、早く来なさい」



姉が呼ぶ。



(…何故?)



俺は、顔をしかめながら言った。



「別に、俺は、そこに用事は無いぞ?」



「静流、おいで?」



麻紀が呼ぶ。



「はい。行きます」



俺は、つい、麻紀の声に反応してしまった。



「ちょっと、アンタ?どういう事?あたしが呼んだら来ないのに?」



姉がしかめっ面をして、俺に言った。



「フンッ」



俺はそっぽを向いた。



麻紀は、そんな俺達を見て、苦笑いをしている。



「可愛くない」



姉が、そう言いながら、俺の頬をつねる。



「痛たたたた…。ぼ…暴力反対…」



「何か言う事は?」



「ご…ごめんなはい…」



「よろしい」



そう言うと姉は、俺の頬から手を離し、麻紀と服を物色し始めた。



(おぉ…。痛てぇ…)



俺は、右の頬をさすりながら、二人の後を付いて歩く。



「これなんか、麻紀ちゃんに似合いそうだよね」



姉が手に取ったのは、クラッシュデニムのミニスカートだった。



「あっ。これ、良い感じ。試着してみようかなぁ」



「うん。試着してみて。きっと似合うから」



姉に促され、麻紀が試着室に入った。



「お待たせ。どうかな?」



「すごく似合うじゃない。麻紀ちゃんのイメージにぴったりだね」



姉は、絶賛していた。



(あぁ…。麻紀のミニスカ…、可愛いすぎる…)



俺は、つい、麻紀に見とれてしまい「ボーッ」としていた。



「静流?どう?」



麻紀が、俺に聞いて来る。



俺は、我に返って、返事をする。



「あ…、あぁ。麻紀、すごく似合うじゃん。可愛いよ」



「へへっ。ありがと」



麻紀は、照れ笑いを浮かべた。



「麻紀ちゃん、それ、あたしが買ってあげるよ」



姉が言った。



「えっ?良いんですか?でも、悪いですよ…」



麻紀は、遠慮していた。



「良いの、良いの。あたしから、麻紀ちゃんにプレゼント」



姉は、微笑みながら言った。



「遥さん、ありがとうございます。へへっ。嬉しい」



麻紀が喜んだ。



「あっ。姉ちゃん、ズルい。俺にも、何か買ってくれよ」



「静流は、自分で買いなさい」



姉が、軽くあしらうように言った。



「ケチっ。良いよーだ。フンッ」



俺は、少しふてくされた目で姉を見た。



姉は、そんな俺を後目に、麻紀と他の服も物色し始めた。



(…)



(…)



(…長い。まだかよ?)



痺れを切らした俺は、姉の所へ向かった。



「姉ちゃん、まだ選んでんの?どれ着たって一緒だって。誰も見やしないからさ。それに、結局、着ないまま、クローゼットの肥やしになるのがオチ…」



全てを言い切る前に、姉の右手が、俺の右頬に伸びて来た。



「い゛っ、痛てててて…。ね、姉ちゃん、そこ、さっきとおんなじトコ…」



「静流君、何か言う事は?」



「だって、本当の事…」



「なぁに?」



微笑みながら、姉が右手に、更に力を入れる。



「い…、痛い…」



「何か言う事は?」



微笑みながら言う姉。



だが、俺の右頬をつねる姉の右手は、容赦無かった。



「い、痛てぇ…。ご、ごべんなはい…。」



ようやく、俺の右頬から、姉の手が離れた。



「良いから、黙って付いて来なさい」



姉が、静かに言った。



「はい…」



(い、痛ぇ…)



麻紀が、そっと近づいて来た。



「大丈夫?」



「痛い…。涙出るかと思った。ったく、暴力女め…」



俺は、そう言いながら、しかめっ面で姉の後ろ姿を見た。



姉が、こちらに振り向く。



固まる俺。



そして、俺は、思わず首を横に振る。



姉は、ニッコリ笑って近づいて来る。



「何かあったの?」



「いえ、何でもないです…」



俺は、目線を逸らす。



「また、何か言ってた?」



「い…、言ってないです…」



声が震える。



(もう、止めてくれ…)



俺は、心の中で叫んだ。



「それなら、良いけど」



姉は、再び、品定めを始めた。



(ホッ…)



俺は、胸を撫で下ろした。



麻紀は、苦笑い浮かべて、俺を見た。



「ダメよ。静流。変な事言うから、怒られるんだよ」



「だって、ヤツのクローゼットには、本当に着ないままの服が、腐る程あるんだから」



「ダメよ。女の子にそんな事言ったら」



「だって、着ないヤツ持っててもしょうがないじゃん」



俺は、着ない服まで買ってしまう事が不思議でしょうがなかった。



それから数分後。



やっと、買う物が決まったらしい。



「麻紀ちゃん、おいで」



姉が、麻紀を呼んだ。



(やれやれ。やっと終わったか…)



俺は、ホッとした表情で二人を見ていた。



次の瞬間。



俺は、目が飛び出しそうになる程驚いた。



レジの液晶には、「60000」の数字が浮かんでいる。



(ん?桁、間違えてねぇか?)



俺は、目を擦って、目を凝らしてもう一度、金額が表示された液晶を見た。



「一、十、百、千、万…」



レジの液晶には、やっぱり「60000」の数字が浮かんでいる。



(アホか…?コイツ…)



俺は、呆れた目で姉を見た。



呆れ果てた俺とは対照的に、姉は満足げな表情をしている。



「姉ちゃん、これ、ちょっと買いすぎじゃねぇか?」



「そぉ?こんなもんでしょ?」



(なんで、即金で6万も出せる…?どこかにへそくってたのか…?)



「そんな事あるかよ。6万も服買ってこんなもんって…。それに大体、なんで、そんな大金があるんだよ?」



俺は、姉に問いかけた。



「ボーナスが、出たからよ」



姉は、俺の問いかけに即答した。



「へぇ…。そりゃ、羨ましい事で…」



俺は、口を尖らせて、横目で姉を見ながら言った。



会計を済ませ、店を出る。



「そうだっ。大事な事、忘れてた。今日の買い物の、一番の目的の物を探さなきゃ」



「おいおい…。本来の目的忘れて、衝動買いかよ?頼むよ…」



俺は、呆れ顔で姉を見た。



「もぅ…。うるさいわねぇ」



姉が、横目で俺を見る。



「はい。これ持って」



姉が、お約束通り、荷物を俺に持たせた。



「ったく。よく買うよ。こんなに服ばっかり…」



俺は、姉に愚痴った。



姉は、俺の愚痴を無視して、目的の店まで向かって行く。



俺は、いっぱい服が詰まった、女性ブランドの紙袋を両手に持ち、姉の後を付いて行った。



麻紀は、俺の横を寄り添うように歩く。



「遥さん、何買うのかな?」



麻紀が、俺に聞いた。



「一番忘れちゃいけない、巧さんの、誕生日プレゼント…」



「それ、かなり大事じゃない?」



「そうなんだよね…。大体、そっちのが優先順位は上だろうに…。困った姉ちゃんだよ…」



俺は、溜め息混じりに言った。



「まぁ、ちゃんと買うみたいだから、良いけど」



すると、姉は、ショッピングモール内の一角にある、店の中へ入って行った。



そこは、紳士物のスーツが置いてある店だった。



その店で、姉はネクタイを見ていた。



「静流、ちょっと来て?」



姉が、俺を手招きして呼んだ。



「ん?何だよ?」



「ちょっと立ってて」



そう言うと、姉はネクタイを二、三本手に取り、俺に合わせてみる。



「なんで、俺に合わせる?」



「静流と巧は、何となく似てるから。イメージし易いのよ。だから、アンタを連れて来たのよ」



「そうか?巧さんと、そんなに似てるか?」



俺は、不思議そうな顔をして姉を見た。



「何となくよ。何となく」



姉は、そう言いながら、真剣な顔で、全体の雰囲気を見ている。



「これが一番良さそうね。これにしよっ」



姉は、一番最初に手に取った、薄い水色の生地にチェックの柄の入ったネクタイを手に取り、レジへ向かった。



「やれやれ。やっと終わったな」



俺は、ホッとした表情を浮かべて、麻紀の所へ行った。



麻紀は、マネキンに着せてあるスーツを、じっと見つめていた。



「どうしたの?」



俺は、麻紀に声を掛けた。



「ううん。このスーツかっこいいなって…。ねぇ?このスーツ、静流に似合いそうだよね?」



麻紀は、マネキンのスーツに一目惚れをしたようだ。



「そうかな?俺、どうもスーツは苦手だな…」



「なんで?」



麻紀が、不思議そうに俺を見る。



「スーツは動きにくいし、堅苦しいしさ…。それに、俺がスーツ着たら、何故かホストに見られちゃうから…」



「確かに、静流がスーツ着たらホストみたいに見えちゃうね。でも、あたしはスーツ着た静流を見てみたいかも…」



「じゃあさ、今度、卒業アルバム見せてあげるよ。学園祭の時に、スーツ着た写真がいくつか載ってるから」



「見たい。絶対見せてね?」



「あぁ。それで良いならいくらでも」



俺と麻紀が、そんなやり取りをしていると、会計を済ませた姉が、こちらへ戻って来た。



「お待たせ。二人共、お腹空いてない?」



「そう言えば、とっくに昼過ぎてるじゃん」



俺は、ケータイの待ち受け画面の時計を見ながら言った。



時計は、14時前だった。



「何か食べに行こうか?」



「賛成」



俺と麻紀が声を揃える。



それから三人で、ショッピングモール内のファミレスへ向かった。



食事を済ませた頃には、昼の3時を回っていた。



俺達は一旦、マンションへ荷物を持って帰る。



それから、俺は麻紀を、麻紀の家へ送った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ