Chapter 23
タクシーに乗り、俺のマンションへ向かう。
流石に、夜中だけあってタクシーは10分程でマンションに到着。
エレベーターに乗り、5階へ。
部屋の前に立ち、玄関の鍵を開ける。
「ガチャ」
「おかえり。あら、麻紀ちゃん。いらっしゃい」
「こんばんは。遥さん。夜遅くにごめんなさい」
「別に、良いのよ。気にしなくても」
姉が微笑んで、迎え入れる。
「麻紀、おいで」
「うん。失礼します」
俺達は、部屋に入った。
「ねぇ?静流?」
「うん?」
俺が振り向くと、麻紀がいきなり抱き付いて来た。
「…キスしよ?」
麻紀は潤んだ瞳で、俺を見る。
俺はそっと、麻紀にキスをした。
「麻紀、酔ってる?」
「ううん。平気」
「顔赤いぞ?」
「静流とキスしたからじゃない?」
麻紀が、ごまかすように言った。
「トントン…」
ドアをノックする音を聞いた俺達は、急いで離れた。
「静流?入るよ?」
ドアが開いたと同時に、姉が顔を覗かせる。
「麻紀ちゃん?今日は遅いから、ウチで良ければ、泊まって行ったら?」
「ありがとうございます」
「麻紀ちゃん?あたしの部屋で一緒に寝る?この部屋じゃ、むさ苦しいでしょ?」
「うるさいな」
俺は、姉を横目で見た。
「ありがとうございます。でも、あたし、この部屋で大丈夫ですよ」
「そっか…。じゃあ、ここに布団、持って来るね」
残念そうな顔をした姉は、そう言いながら部屋から出て行った。
「良いのか?麻紀?」
「うん。あたし、静流と一緒が良いから」
「そっか」
暫くして、姉が布団を、俺の部屋に持って来た。
「静流?静流が床に寝なさい。麻紀ちゃんは、この布団を、静流のベッドに敷いて寝てね」
「はい」
麻紀は、苦笑いをしながら答える。
「じゃあ、あたしは、向こうに行くから。麻紀ちゃん、ごゆっくり」
(さっさと行けよ)
俺は、姉を「出て行け」と言わんばかりの目で見た。
「静流?変な事したら、許さないわよ?」
「あぁ?うるせぇなぁ。分かってるよ」
「じゃあ、麻紀ちゃん、おやすみ」
「おやすみなさい」
姉が、部屋から去った。
(やれやれ…。やっと失せたか…)
俺は、麻紀を見て言った。
「麻紀。姉上殿が、ベッドで寝るようにだってさ。俺、布団替えるよ」
そう言って、俺は、自分の布団をベッドから退けようと、ベッドに手を伸ばした。
「静流?あたし、静流と寝たい…。ダメ?」
「そりゃあ、流石にヤバいでしょ?しかも、俺は釘を刺された身分だし…」
「お願い…。一緒に寝よ?」
俺は暫く固まった。
(麻紀と一緒に寝る?嬉しいけど、緊張して寝れないかも…)
「ダメ?」
麻紀が、「お願いだから」と言う表情で俺を見ている。
俺は、暫く自分の中で葛藤した。
「…分かった。一緒に寝るだけだからね」
「ありがとう」
俺は、自分の欲望に負けた。
「麻紀?シャワー浴びて来れば?」
「あたし、良いよ…。無理矢理、押し掛けてるし…」
「遠慮しなくて良いから。今日は暑かったし、気持ち悪いでしょ?」
「うん…。じゃあ、シャワー借りるね」
俺は、麻紀を風呂へ案内した。
「じゃあ、ごゆっくり」
「ありがとう」
俺は、一人、部屋に戻り気分を落ち着けようと必死だった。
「ヤベェだろ?麻紀の隣で寝るって…。嬉しいけど、絶対、落ち着かねぇよ…」
そう独り言を言いながら、部屋中をウロウロしていた。
すると、麻紀が部屋へ戻って来た。
「シャワーありがとう。静流も入っておいで?」
「あ…、あぁ。そうするよ」
俺は、上の空で返事をした。
(うわぁ、どうすりゃ良いんだ?落ち着け。落ち着け…)
俺は、シャワーを浴びながら、何度も自分に言い聞かせた。
部屋に戻って、タバコに火をつける。
「静流?どうしたの?」
「いや、何でもないよ」
麻紀が、俺の異変に気付いた。
「そろそろ、寝よっか?」
俺は、布団の中に潜り込んだ。
その後で、麻紀が布団の中に入って来る。
俺の心臓は破裂しそうなくらい、鼓動を打っていた。
「…電気消すよ?」
顔が赤くなってるのが、麻紀にバレないように照明を消した。
「ねぇ?静流?」
「うん?何?」
「あたし、今、すごく幸せ」
「なんで?」
「静流と一緒の布団で寝るんだよ?すごく幸せだよ」
「そっか」
俺は、それどころじゃなかった。
とにかく、気分を落ち着けようと必死だった。
「ねぇ?静流は?」
麻紀にそう聞かれ、一瞬、返答に困った。
「お…俺も、う…嬉しいよ」
「静流?もしかして、緊張してる?」
俺は、顔が熱くなった。
「可愛い」
そう言うと、麻紀は、俺の唇にキスをして来た。
(あぁ…、ヤバい…。麻紀って良い匂いがする…)
俺は、自分の欲望を抑えるのに必死だった。
「静流?大丈夫?」
「…麻紀。大好きだ」
そう言って、麻紀を力強く抱きしめた。
俺は、ついに自分の欲望に負けてしまった。
「静流、ちょっと苦しいよ…」
麻紀のその言葉で、俺は、我に返った。
「あ…、あぁ。つい…。ごめん。大丈夫?」
「うん。大丈夫」
「なぁ?麻紀?」
「なぁに?静流?」
「麻紀は、なんで、俺なんかと一緒にいたいって思ってくれたんだ?」
「なんでって言われても…。静流の事、好きだし、静流って優しいし。それに、どこか淋しそうだったから…。同情とかじゃなくて、ただ、静流の傍で、支えてあげたいって思ったから…。でも、言葉で表現するって、難しいね…」
「そっか。ありがとう。俺は、十分過ぎるくらい、麻紀に元気をもらってるから。俺は、麻紀がいてくれたらそれで良い。麻紀がいるから、俺は頑張ろうって思えるんだ」
「そっか。良かった。あたしは、頑張る静流が大好きだよ。ねぇ、静流?あたし達、ずっと一緒にいようね」
「あぁ。俺だって。絶対、麻紀を離さないからね」
「フフッ。静流、大好き。愛してる」
「俺も。愛してるよ。麻紀」
そう言って、お互いの顔を近付け、キスをした。
「おやすみ。麻紀」
「おやすみ。静流」
俺は、麻紀を抱き締めて麻紀が眠りに就くまで、ずっと起きていた。
麻紀の気持ち良さそうな、寝息が聞こえる。
俺は麻紀の温もりを、全身で感じた。
俺は、麻紀の髪を撫でながら、麻紀の温もりと、呼吸の一つ一つを逃すまいと、麻紀を強く抱き締めた。
隣で寝ている、麻紀の寝息と体温が心地良く、いつの間にか、俺も眠っていた。




