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Chapter 21


ライブが終わり、一旦、2階のスタジオへ。



観客達はまだ、興奮が冷めやらないのか、ライブハウスの外で騒いでいる。



「あぁ…。疲れた…」



充が、バテて、スタジオのソファに倒れ込んだ。



「ははは。お疲れ」



オーナーが笑顔で言った。



「大成功だったじゃないか」



「まぁ、久しぶりですし、あんな感じじゃないですかね」



俊哉は、素っ気なく答える。



「まだ、何か企んでるのか?」



俊哉の目付きが変わる。



「俺達は、まだ上を目指します。こんな、ライブの規模じゃない…。もっと、デカい規模で…」



「行くのか?東京?」



「えぇ。いずれは…。でも、まだ時期じゃない。これから、もっと数をこなして、今以上の音が出せるようにならないと…」



俊哉は淡々と答える。



「このメンバーなら、きっとやれるはず。だから、今日のライブで満足していては駄目なんです」



「そうか…。まぁ、お前達ならやれるかもな」



オーナーが微笑った。



俺達の目には、大きな会場を埋め尽くす程の、観客達の前で、俺達、B-Raveがライブをしている光景が映っていた。



帰り支度をして、1階の事務所に入る。



麻紀が、オーナーの奥さんと話をしていた。



「あら?静流じゃない」



オーナーの奥さんが、俺に気付いた。



「…奥さん。また、変な事吹き込んでます?」



「あら?聞いた?失礼ね。別に、変な事は言ってないわよ」



そう言うと、オーナーの奥さんは、「失礼な」と言わんばかりの表情で、俺を見た。



「麻紀、この人の話は、大袈裟だから。あんまり、真に受けたら駄目だぞ」



俺は笑いながら、麻紀に言った。



「まぁ?聞いた?可愛くないわねぇ」



奥さんは、ふてくされた顔をしていた。



そんな、俺達のやり取りを見ていた、オーナーやメンバー達は、苦笑いしていた。



「そんな事より、復帰ライブの記念に、アンタ達、メンバー全員で記念写真撮らない?撮ってあげるから」




奥さんが言った。



「おっ。良いねぇ」



竜也と充が賛成する。



「俺は、良いよ…」



俺は、写真が苦手だったので断った。



「まぁ、良いから。早く入りなさい」



「痛ててっ…。何すんだよっ」



嫌がる俺を無視して、竜也と充が、無理矢理、俺を引っ張って並ばせる。



「静流、真ん中に寄れよ。さぁ、藍沢さんも写真に入って」



何故か、竜也が仕切っている。



「えっ?あたしも?」



麻紀は、少し戸惑っていた。



「良いから、良いから。麻紀ちゃんは、静流の隣に…。はい。撮るよ」



そう言いながら、奥さんがシャッターを切る。



「…静流。固いよ?ほら、笑いなさい」



「だから、俺は、写真が苦手なんだって」



「そんなんじゃ、プロになってもジャケットの写真とか、撮れないよ?ウダウダ言わない。もっとリラックスしなさい」



奥さんが、俺に説教じみた事を言った。



「…無愛想で悪かったな」



俺の心の声が、ポツリと漏れた。



そんな俺を見て、麻紀が言った。



「静流の笑顔、あたしは好きだよ。子供みたいに無邪気で、可愛いし」



俺は、その言葉で顔が赤くなり、うつむいてしまった。



「そんな事、言うなよ…。恥ずかしいじゃん…」



麻紀が、俺の顔を覗き込む。



「静流。大好き」



麻紀が微笑みながら、俺にだけ聞こえるように、俺の耳元で囁いた。



「…フフっ」



俺は、つい、照れ笑いを浮かべてしまった。



その時…。



「カシャッ」



シャッターを切る音。



「あっ!!」



目が点になる俺。



「はい。良い物が撮れました」



得意げな笑顔で、奥さんが俺を見た。



「じゃあ、現像出来たらあげるから」



そう言って、奥さんは事務所の奥へ入って行った。



「まぁ、諦めるんだな」



オーナーが笑った。



「うっ…」



俺は、恥ずかしさの余りに、声が出なかった。



「静流って、ホントにシャイだよね。ライブの時とは、別人に見えちゃう」



麻紀が笑っていた。



俺達の話に割って入るように、竜也が言い出す。



「これから、打ち上げしないか?」



充が、「待ってました」と言わんばかりに騒ぐ。



「打ち上げやろう。やろう。どこ行く?駅前の居酒屋?」



「どこだって良いよ。どうせ、麻紀を送って行かないといけないし」



「あたしも、打ち上げ行きたい」



「えっ?麻紀、大丈夫なのか?」



「うん。今日は遅くなるって言ってあるし。全然平気だよ」



「じゃあ、駅前の居酒屋にでも行くか」



全員一致で、居酒屋へ向かう事に。



「オーナー、すいません。明日の昼まで、車停めさせて貰えませんか?」



俊哉がオーナーに頼んだ。



「あぁ。別に、構わんよ。楽しんで来い」



「ありがとうございます」



「じゃあ、行くか」



オーナーに見送られ、駅前まで歩く。



俺は、麻紀に合わせてゆっくりと歩く。



「今日の静流、すごくカッコ良かったよ。あたし、静流が本物のプロに見えちゃった」



「そんな…。俺達はまだまだだよ。こんなので満足してちゃ、駄目なんだ」



「いっぱい、お客さんが来るはずだよね。」



「俺は…、いや、俺達は、「俺達の作る音楽を聴きたい奴だけ聴いてくれれば良い、聴きたくなければそれでも良い」って思ってるんだ。観客達は、ただ、それに賛同してくれてるだけだよ」



「俺達は、ただ自分達の力をどれだけ出せるか、自分達の力がどこまで通用するのかを、いつも考えてる。それだけじゃなくて、自分達の音楽で、観客達が感動したり、満足したり、明日も頑張ろうって…。そう思ってくれるように…。俺達は、毎日進化しなきゃいけないんだ。俺達は常に、高いレベルでの音楽を目指してる。自分の中の理想の音楽に、妥協は出来ないんだ。だけど、中には、こういう音楽は受け付けないって人もいるでしょ?だから、聴きたい奴だけ、聴いてくれれば良いって事だよ」



「そう言う事」



「えっ?」



麻紀が振り返ると、他の三人が微笑んでいた。



「麻紀ちゃん、俺達は、自分達の思いを、上手く言葉には表現出来ないんだよ。不器用だからさ。俺達の気持ち、伝えられる手段なら、何でも良かったんだ。たくさんの人達に、俺達の思いを伝えようとしたら、たまたま音楽だったって話。野球の選手やサッカーの選手達が、良いプレーをして、ファンを喜ばせたり、逆境をはねのけて、試合に勝ったりしてファンに勇気を与えたりするのと同じだと思う。だから、自分達の思いを伝える為に、妥協は許さないんだよ」



俊哉が、麻紀に優しく言った。



「みんな、すごく考えてるんだね。みんななら、きっと出来るよ。今日、初めてB-Raveを聴いたあたしが、好きになっちゃったんだもん。ねぇ?ファンクラブ作ったら、あたし、一番にファンクラブに入れて貰っても良いかな?」



「もちろん。喜んで」



俺達四人は、声を揃えた。



「ありがとう」



麻紀は、嬉しそうに喜んでいる。



「おっ!!着いたぞ」



竜也の声で、全員の足が止まる。



話込みながら歩いている内に、着いてしまったようだ。



「じゃあ、入ろうか」



俊哉が、店に入る。



俺達も、俊哉の後を追うように、店内へ入って行った。




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