Chapter 18
翌日。
俺は、いつもの休みの日より、早く目が覚めた。
今日は、麻紀と初デート。
時計は、朝の8時を指している。
「おはよう」
「おはよう。あれ?今日はバイト休みでしょ?早いのね」
「あぁ。今日は、ちょっと約束があってね」
「そうなんだ。じゃあ、お昼、いらないね?」
「あぁ。いらないよ」
「気を付けてね」
「分かった」
俺は、麻紀を迎えに行く時間になるまでが待ち遠しかった。
約束の10時に迎えに行けるように、少し早めにマンションを出た。
今日も、夏空が広がっている。
朝だと言うのに、汗ばむくらいの陽気だ。
北の空には、入道雲が浮かんでいる。
車に乗って、ご機嫌な様子で音楽の音量を上げる。
アクセルを踏み込む。
隣町の麻紀の家まで、40分程で順調に行けた。
「着いたよ」
メールを送る。
麻紀から、すぐに返信が来た。
「すぐ出るからちょっと待ってて」
「うん。待ってるよ」
俺は、タバコに火をつけ、自販機で買った缶コーヒーを飲みながら、車の外で待つ事にした。
「今日も暑いなぁ」
辺りには、蝉の鳴き声が響き渡っていた。
暫くして、麻紀が家から出て来た。
「おはよう。待たせてごめんね」
「おはよう。全然、平気だよ。ちょうど、コーヒー飲んで一服してたし。じゃあ、行こっか?」
「うん」
二人を乗せた車も、嬉しそうに走る。
車の中で麻紀が言った。
「静流って、いつも、そんなロックな服だよね?アクセとか、ピアスとかもいっぱい付いてるし」
麻紀が、俺を舐め回すように見ながら言った。
「麻紀はこのカッコ、嫌い?」
「ううん。静流、すごく似合ってる。本物のミュージシャンみたい」
「そうかなぁ?まぁ、間違いじゃないかもね」
「どういう事?」
「今度、その理由を麻紀に見せてあげるよ。そう見えた理由をね」
「えぇ?何?何なの?」
「それは、見てのお楽しみ」
俺は、微笑みながら少し意地悪く言った。
「じゃあ、楽しみにしとこっと」
麻紀は、嬉しそうに言った。
「あぁ。楽しみにしてて」
会話を楽しんでいる内に、俺の住んでいる街の駅前に着いた。
「駐車場は空いてるかな?」
そう言いながら、駅前の地下駐車場へ入る。
「おっ!良い所空いてるじゃん」
「ホントだね。出入り口に近くて良いね」
「ラッキー」
俺は、地下道への出入り口のすぐ傍の、駐車スペースに車を止めた。
「着いたよ。じゃあ、降りようか?」
「うん。どこ行くの?」
「とりあえず、一番最初は、駅前のショッピングモールかな」
「うん。早く行こ?」
嬉しそうな彼女に手を引かれ、駐車場の出入り口から地下道へ出た。
俺達は手を繋いで、地上への階段を上り、駅前のショッピングモールに向かった。
「何階に行くの?」
「アクセサリー見たいから、とりあえず7階かな」
そう言いながら、上りエスカレーターに乗った。
7階に到着。
「麻紀、ちょっとだけ待ってて。トイレに行って来るから」
そう言って麻紀に、広場のベンチで待ってもらった。
(よし。行って来るぞ)
俺は、本来の目的を果たす為、麻紀にバレないように気を付けながら、一直線に、シルバーアクセサリーの店へ入った。
「すいません。これと同じ指輪で、このサイズありますか?」
俺は、自分の指にはめていた指輪を外し、メモと一緒に、店員に見せた。
「はい。ありますよ」
「こちらでよろしいですか?」
「はい」
「プレゼントですか?」
「そうです。でも、何も入れなくて大丈夫です」
「かしこまりました」
指輪代を店員に渡す。
「ありがとうございました」
俺は、麻紀の元へ走った。
「ごめん。お待たせ」
「静流、遅いよ」
「ごめん、ごめん」
麻紀が、少し拗ねた顔をして俺を見た。
「なぁ?麻紀?」
「なぁに?」
「ちょっとだけ、目を閉じて?」
「何で?」
「良いから、良いから」
俺は、微笑みながら言った。
「こう?」
そう言って麻紀は目を閉じた。
「ありがとう」
俺は麻紀の手を取り、ポケットから、ついさっき買ったばかりの、俺とお揃いの唐草模様が施された指輪を取り出し、麻紀の右手の薬指にはめた。
「目を開けて?」
俺に促され、麻紀は目を開けた。
「良かった。サイズ、ピッタリだったね」
俺は、麻紀に微笑んだ。
麻紀は、自分の薬指の指輪を見て、涙を浮かべた。
「嬉しい…。静流とお揃いの指輪…。あたし、大切にするね」
「いや、大した物じゃないんだけどね…。でも、これで、朝も昼も夜も、俺とずっと一緒だよ?」
「うん。ありがとう」
「麻紀が、淋しい時や辛い時には、この指輪を見て元気出して?」
「静流、ホントにありがとう」
麻紀が、涙を浮かべながら笑顔を見せた。
(かっ…可愛い…)
つい、俺まで嬉しくなってしまった。
「泣かなくても良いじゃん。まるで、俺が悪い事したみたいじゃない?」
俺は、おどけてみせた。
「ごめんね。あたし、すごく嬉しくて…。つい…」
そう言うと、麻紀は、人差し指で涙を拭った。
「じゃあ、次行こっか?」
「うん」
俺達は、手を繋いで、暫く店の中を見て回った。
ふと、俺が時計に目を向けると、昼の12時を回っていた。
「麻紀、お昼どうする?何食べたい?」
「うーん…。ハンバーガーが食べたい」
「じゃあ、マックに行く?」
「うん」
俺達は、ショッピングモールの近くのマクドナルドへ行った。
「いらっしゃいませ。ご注文をどうぞ」
「うーん…」
「てりやきのセットで」
二人の声が揃った。
その様子がおかしくて、二人で笑った。
向き合って席に着いて、いろんな話をしながら、楽しく昼食を取る。
ポテトを摘む、麻紀の右手の薬指には、お揃いの唐草模様の指輪がキラキラと光っていた。




