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Chapter 13


それから、一週間後。



「姉ちゃん、明日から、店が改装なんだ。だから、今日のバイトは、明日の準備とかで結構遅くなるから」



「そうなんだ。分かった。頑張ってね。行ってらっしゃい」



「あぁ。じゃあ、行って来るよ」



その日の午後。



遅番の、始業前のミーティング。



店長が、遅番スタッフに、改めて言った。



「明日から、店を改装します。10日間くらい休む予定です。改装している間は、新装開店の準備や機械の移動をさせたりするので、いつも通りに来て下さいね」



「今日が、一番ハードな日だな…」



竜也と顔を見合わせた。



「やれやれ…、やりますか…?竜也君」



俺は、怠そうに竜也を見た。



「はぁ…、めんどくせぇなぁ…」



竜也は、既にやる気が無い様子だった。



「竜也…。既に、やる気無いじゃん…」



「当たり前だろ?ゲーム機、全部運び出しだぞ?」



「なるべく、考えないようにしてたのに…。なんで言うかなぁ…。君は…?」



「やれやれ」と思いながら、竜也と二人で、フロアのゲーム機を見渡した。



流石に、これだけ大量の、しかも、特に大きな機械の運び出しは骨が折れる。



と、ちょうどそこへ、麻紀がやって来て、俺達に問いかけた。



「二人共、どうしたの?難しい顔をして…?」



「いや、どれから運び出すかなって…。考えてる所…」



竜也と二人で声を揃えた。



「あぁ、もう。やるしかねぇ。やるぞ、竜也」



「しょうがねぇなぁ…」



竜也も、渋々動いた。



そんな、俺達の様子を麻紀は笑って見ていた。



「頑張って」



麻紀の言葉に励まされた。



夕方、5時。



「なかなか終わりそうに無いから、早番の人でも、残って手伝ってくれる人がいると助かるんだけど…」



店長が、時計を見て言った。



「あたし、残っても大丈夫ですよ」



麻紀は、俺の方を見ながら笑顔で言った。



「助かるよ。ありがとう。藍沢さん」



俺は、そんな二人のやり取りを横目で、何気なく見ていた。



そして、ふと、我に返る。



(…麻紀が、残る!?)



俺は、麻紀の顔を見た。



麻紀は、俺に微笑みかけてくれた。



俺は、そんな麻紀の笑顔を見て、既に薄れかけていたやる気が、自分の中にまた、湧き上がって来るのを感じた。



「さぁ、竜也君。さっさと、この邪魔な機械共を、運び出そうじゃないか」



「はぁ?何、急にやる気になってんだ、静流?」



「良いから。やるって言ったら、やるんだよ」



俺は、竜也に発破を掛けた。



「はいはい…」



竜也は疲労困憊だ。



俺は、麻紀に良い所を見せようと、必要以上に気合いを入れた。



しかし、俺も生身の人間。



流石に、疲労の色が隠せなくなって来た。



「はぁ…。竜也、ちょっと休憩するぞ」



「お前、何そんなに張り切ってんだ?」



竜也、ちょっと休憩するぞ」



「お前、何そんなに張り切ってんだ?」



「…別に。さっさと終わらせたいだけだよ」



「ふぅん…」



俺は、麻紀の方を見た。



麻紀は、大きな段ボール箱に詰められた、ゲームの景品の整理をしていた。



「…お前、何かあったな?」



竜也が俺を見る。



(…バレたか?)



俺は焦った。



「な、何がだよ?」



「例えば、女絡みの話とか…?」



(くっ…。鋭い奴め…)



「な、何もねぇよ」



「ふーん…。メル友でも見つけたかと思った」



(竜也が、アホで良かったぁ…)



俺は心底、ホッとした。



そんな状況でも、俺は、麻紀の方が気になる。



麻紀が、こっちに気付いて微笑む。



「静流、何、ニヤニヤしてんだよ?気持ち悪りぃ…」



竜也が、少し退いた目で俺を見る。



「う、うるせぇ」



そんな俺達を見て、麻紀は笑っていた。



俺はさり気なく、麻紀に近付いた。



紙で作られた、飾り付け用の花が、麻紀の手の平に乗っていた。



「それを作ってんだ?」



「そうだよ。欲しい?ここに、いっぱいあるから。静流に1個、あげよっか?」



麻紀が、笑いながら指差した先には、紙で作られた花が大量に、段ボール箱に詰められていた。



「こんな物、何に使うんだ?」



「新装開店の時に、店の入り口とか、カウンターの周りとかに付けたりするんだって」



「へぇ。それ、1個、貸して?」



「はい。何するの?」



「まぁ、見てなって」



そう言うと、俺は竜也を探した。



俺は、麻紀に、竜也をカウンターまで呼び出してもらい、麻紀に竜也の気を引かせた。



竜也の背後から、そっと近付く。



裏面に両面テープを貼り付けた花を、竜也の頭に静かに乗せる。



竜也は気付かない。



麻紀は、必死で笑いを堪える。



俺も笑いを堪え、竜也の頭をわざとらしく押さえ、花を頭に貼り付けているのがバレないように、さり気なく竜也に話かけた。



「何やってんだよ?」



「あぁ?呼ばれたから来たんだよ」



「さっさと、やるぞ?」



「あぁ。分かった、分かった」



俺達の周囲で仕事をしていた仕事仲間達が、竜也を見てクスクスと笑う。



異変に気付き、頭に手をやる。



「何だ?こりゃ?」



「あっははは」



俺は、堪えていた笑いを爆発させた。



「竜也、何、頭に乗っけてんだよ?」



「静流…、お前か?お前の仕業か?」



「あっはははは。腹痛ぇ…」



「あ゛ー、もうっ!!何、人で遊んでんだっ!!テメェーっ!!」



「あっははは。面白ぇ」



ちょうどその時、店長が、事務所から出て来た。



「…さてと。早く終わらせるかな…」



そう言うと、逃げるように俺は、フロアに残った機械の方へ消えた。



「あっ、汚ねぇぞっ!!」



竜也も、急いで俺の後を追って来た。



それからは、二人、黙々と作業を続けた。



やる気が途切れそうになると、麻紀の顔を見て、また奮起する。



この繰り返しだった。



「おい…?いつになったら終わるんだ…?」



竜也が、今にも仕事を投げ出さんばかりの勢いで言った。



「さぁな…。とりあえず、機械は外へ出したからな。後は細かい仕事だけだろ…」



俺の体力も気力も、そろそろ限界に近付いていた。



「大体、終わったみたいですね。今日は遅いし、後は明日にしましょう。残ってるのは、事務所の整理だけみたいだし…」



「やれやれ…。竜也君。やっと、店長殿のOKサインが出たぞ…」



「あぁ…。やっと、終わった…」



そう言ったかと思うと、崩れ落ちるように、竜也が床に座り込んだ。



「はい。二人共。店長から差し入れだよ」



麻紀が、両手に缶ジュースを持って俺達の元へ来た。



「あぁ…。ありがとう」



「プシュッ」



「あぁ…、美味い。生き返る…。でも、これが冷たいビールなら、もっと最高…」



竜也と声を揃えた。



「二人共、オジサンみたいだよ?」



麻紀が笑って、俺達に言った。



「あははは」



俺が、事務所の時計を見上げると、真夜中の12時に近くなっていた。



それから、小さな雑用を終わらせたり、服を着替えたりとで、結局、俺達が帰る頃には、真夜中になっていた。




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