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Chapter 11


「付き合わせちゃってごめんね」



「全然。大丈夫だよ」



波の音が耳に響く。



「ねぇ?なんで、そんなに優しくしてくれるの?」



(君の事が好きだから…)



そう、心の中で呟いた。



「女の子に優しくするのは、当たり前だよ」



「そんなもんなの?」



「彼氏だって、そうでしょ?」



「うーん…。どうかなぁ?彼氏ね、あたしがいるのに平気で、合コンとか行っちゃう人だから…」



(はぁ?なんだ、その男…。ふざけてやがる)



俺は、そう思いながら彼女に言った。



「なんで、こんな可愛い彼女がいるのに、合コンなんかに行けるかなぁ?」



「…はぁ。あたしの彼氏も、霞君みたいに優しかったらなぁ…」



「そんな事ないよ。俺だって、優しくない人間かもしれない…」



「ううん。あたしには、分かるんだ…。霞君は人の痛みが分かる人だって」



「そうかな?」



「うん。それにね、話してる時に、たまに、淋しそうな目をしてる時あるよ?」



(それは、気付かなかった)



「そう?」



「うん。すごく淋しそう。過去に何かあった?」



「実は…。俺の家、姉ちゃんと二人暮らしなんだけどさ。前に、姉ちゃんが、姉ちゃんの婚約者に言ってたのを、チラッと聞いただけなんだけど…」



「実はね…。静流は、あたし達とは、血が繋がってないの。お母さんが働いてた施設に、ある日、生まれたばかりの静流が捨てられてて…。お母さんが、可哀想に思って、施設からそのまま引き取って来たんだ…。お父さんも、快く静流を自分の子供として受け入れてくれてね…」



「そんな事を聞く気は、サラサラ無かったし、姉ちゃんも、俺の事、本当の弟のように思ってくれてたから、俺には、教えたくなかったんだと思う。俺には、今まで一切話してくれなかったから…。でも、いざ聞くと流石にショックで…」



「でもさ、こんな俺を引き取ってくれて、育ててくれた親父や母さん、姉ちゃんには感謝してる。…だけど、親父は俺が小学校3年の時に、事故で亡くなったんだ。それからは、母さんが、女手一つで、姉ちゃんと俺を育ててくれた。その母さんも、俺が高3になる年の春に、病気で亡くなったんだけどね…」



波の音が、浜辺に響く。



二人は無言のまま、暫く海を見つめていた。



二人の静寂を切り裂くように、俺が、ポツリと話を続けた。



「本当の親に捨てられ、子供の頃、家族の誰にも似てないって、イジメられてたし…。友達だと思ってた奴らにも裏切られた事もあるし…。だから、今でもちょっとだけ、人が苦手でもあるんだ…。」



「そうだったんだ…。辛い事、思い出させちゃったね…。ごめんね…」



彼女は、うつむいて、俺に謝った。



「いや、全然平気だよ。今更、実の親が出て来た所で、俺は会う気無いし。俺を育ててくれた親父や母さんが、俺の本当の親だよ。姉ちゃんも、俺の事を、「本当の姉弟」みたいに気に掛けてくれてるし…。例え、似てなくても、俺の家族は、紛れもなく、今の家族だから…」



「それに、今まで、俺を見下してた奴らは、今の俺には何も言えなくなってるし、俺も「今に見てろよ」って感じで、何も言わせないようになろうって、やってきたから」



「強いね。霞君は…」



「俺は、言う程強くはないよ。ただ、これが俺の運命だから…。受け入れるしかないんだ。それに、俺は、親父と母さん、姉ちゃんには、本当に感謝してるから…」



俺は、笑ってごまかした。



「そっか…。あたしは、そんなに強くはなれない…」



彼女は、うつむいたまま呟いた。



彼女に、自分の過去を話した途端、俺は、不思議な感覚に襲われた。



今まで、誰にも、自分の過去を話した事は無かった。



竜也や俊哉達にさえも…。



でも、彼女は違った。



俺の、全てを包み込んでくれるような、そんな感覚を覚えた。



「ねぇ?霞君?」



「うん?」



「あたしで良ければ、霞君の思ってる事、何でも言ってね。あたしが、霞君の力になれるって思えないけど…」



彼女は、はにかみながら言った。



俺には、彼女の、その優しい心遣いが嬉しかった。



彼女の優しい眼差しで、言葉で、俺の全てが癒されて行くような、そんな気がした。



俺は、彼女のその優しさに、甘えていたいと思った。



「優しいね。なんで彼氏は君みたいな子を粗末にするかなぁ?」



「分かんない。あたしもね、霞君みたいにじゃないけど、過去に色々あってね…。だから、なんとなく、淋しい気持ちは分かるんだ…」



俺は、何も言えなかった。



今まで、俺の事を思ってくれる人はいなかった。



俺の事を、ここまで思ってくれる人に出会ったのは、これが初めてだった。



頭の中で、戸惑いと嬉しさが交錯していた。



それに俺は、人の過去に一切興味は無かった。



それは俺自身が、俺と接してくれる人達の現在や、未来の方を大切にしたいと思っていたからだ。



「ねぇ、霞君?」



俺は、首を軽く左右に振って、彼女に微笑みかけて言った。



「霞君じゃなくて、

静流って呼んでくれないかな?霞君じゃ、堅苦しいよ」



「じゃあ、お言葉に甘えて。ねぇ、静流?」



「うん?」



「あたしの事も呼んで?藍沢さんじゃなくて…」



「麻紀…」



「静流…」



見つめ合う二人。



暫く時間が止まったようだった。



二人だけの浜辺には、波の音だけが響き渡った。




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