表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/16

生きてこその物種か

俺たちは市杵島姫様の美貌のおかげで助かったと思うべきなのか、それとも殺せるはずの奴をみすみす逃したの咎められるべきなのか、今はそれは置いておこう。

殺された人たちを生き返す方が先だ。

「市杵島姫様、お願いします」

「まぁ、その前にだな、その市杵島の部分は省略しても構わんぞ、今ここには姫は私しかおらんけぇ、それに、舌を噛むものが大勢おってな、もう面倒じゃから厳島(いつくしま)姫とか姫様とかおひぃさまとか呼ばせよったんよ」

「分かりました。では僭越ながら姫様とお呼びいたします。では姫様、殺された人たちの蘇生をお願いしたいのですが」

「ええじゃろぅ、ただし・・・分かっとるね?」

要するに姫様は賃金上げ(ベースアップ)を望んでおられるようだ。

「心得ております」

「ふむ、よろしい」

そう言って姫様は雨乞いで雨を降らせると復活の神水を使って殺された人たちを生き返らせた。


「トム、ジェイ、サドラ、ロイ、意識は戻ったのか!?」

「隊長、俺たちは・・・」

「そうだ、敵の暗黒騎士に殺されてしまった。だがこのイトゥクシマ姫が蘇生してくれたんだ」

「この方は異国の女神様ですか?」

「異世界の女神らしい」

「とすると、憑き人はどなたに?」

「こちらのモトナリだ、出立する前に噂になってただろう、信仰値がカウントストップしている者が異世界から召還されたと」

「あぁ、あの噂のアンバランサーですね」

そんなに俺のアンバランスぶりは話題になってるのかよ。

「モトナリが敵の暗黒騎士の致命的なダメージを与えてくれなかったら、今頃私も、救援に駆けつけてくれたこちらのバルドもやられていたかもしれない」

「あれを退けたんですか、暗黒騎士でさえSランク級の冒険者に匹敵するのに、憑いているダークフェンリルはAからSの間くらいの強さの奴ですよ」

本当かどうか疑われているので俺が会話に割って入ることにした。

「正直、敵が退いたのはマグレです。不意打ちを食らわせたのでたまたま攻撃が当たってくれた部分もあります。もし真正面からの戦いだったら我々は全滅していたかもしれません」

「そう、だったのですか・・・」

「しかし、皆さんは何故、あんな強敵と戦う羽目に、どう見てもSランク級の冒険者の仕事だと思いますが?」

そう尋ねるとマーガレッタが質問に答えてくれた。

「実は最近このあたりでグレートデーモンズドラゴンという危険な邪龍の目撃情報があってな。我々はその捜索に当たっていたんだ。そしたらあの騎士と狼に不意打ちを食らってしまった」

それを聞いて俺は引っかかることがあったので質問をした。

「あの、不快に思わせたら申し訳ないのですが、向こうは去り際に領土侵犯だと言い捨てて去って行きましたが、その場合でしたらこちらに非があるのではないですか?」

「そのことについては、気にしなくていい。詳しいことは首都に帰ってから話そう、今は急いで報告に戻りたいんだ」

「分かりました、ですがそちらの馬車は無事ですか?」

「あぁ、問題はない、2台とも無事のはずだ。君たちは救援に来てくれたわけだが、君たちの馬車はどうした?」

「先に帰しました。魔物に凌辱された女性がいたのでその方たちを首都に送るために」

「そうか、分かった、君たちは私たちの馬車に乗ってくれ」

ここで断るのも変だし、早くクラリスたちと合流したいので、俺とバルドはお言葉に甘えて馬車に乗せてもらうことにした。


二日かけて俺たちは首都に戻ってきた。

そしてクラリスたちと合流する。

「バルド、もう二度とあんなことしないで、あなた死ぬかもしれないところだったのよ!」

「でも俺が時間稼ぎをしなかったらマーガレッタさんは殺されてたかもしれないんだぞ!」

確かにバルドのいう事にも十分に理がある。

だから俺はクラリスを(なだ)めることにした。

「クラリス、バルドを叱らないでやってくれ。彼のお陰で大勢の人が生きて帰ってくることが出来た。それは事実だ。勇気と無謀は時に紙一重なところがある。未来の結果なんて神様ですら分からない事なんだ」

「それは、そうだけど・・・」

この様子を見かねたマーガレッタが話に割って入ってきた。

「君の弟には本当に助けられた。それに、村の被害者に寄り添って帰還してくれたことを感謝する。本来ならば私たちのようなものが努めなければならない事をやってくれたのだ。君にも礼を言わせてくれ」

「いえ、そんな、私はただ言われてやっただけですので・・・」

と、言って目をそらし照れくさそうに頬を赤らめた。

「ギルドには報酬を増額するようにこちらから頼んでおこう」

「いいんですか?」

「これは法律だ。仲間内の外から援軍を養成した場合、報酬金額の20%を譲渡しなければならない。まったく、君たちの活躍ぶりでは20%が安く思えるよ」

知らないルールだったのでこの情報を得られたことは幸運だった。

よっぽど危険ではない時以外は安易に助けを求めるべきではないという教訓になる。

もしくは今回のように命あっての物種ということでもあるのだろう。


現在の手持ち1800コール(ここまで視聴くださった皆様のためにお伝えしておくと、500コール計算が合わないのですが、その500コールは市杵島姫命のために買った本の代金です)


俺たちは冒険者ギルドで報酬を受け取った。


依頼達成報酬20000コール。

最高撃破勲章金12000コール。

援軍要請受領金30000コール。

サーリア聖騎士団からの謝礼金10000コール。


報酬合計72000コール


更にギルドからお知らせがあった。

「モトナリ、バルド、あなたたちの実績を鑑みてランクCに格上げされました。これからも上を目指して頑張ってください」


手持ち73800コール


さて、姫様はベースアップを要求されている。

「いくらくれるのかのぉ♪」

と言いながらニマニマした顔でこちらを視界にいれられておいでだ。

今回の活躍はほぼ姫様のご活躍あってこそと思う。

「60000でよろしいでしょうか?」

「六万も!?」

「ただ、お願いがございます。娯楽に使われるのも結構ですが、極力、戦闘やサポートの為にお金を使っていただきたいのです」

「なんじゃそんな事か、気にしなさんな、こんな所に日本以上の娯楽なんてありゃせんのじゃけぇ」

「そう言っていただけると助かります」

こうして俺の所持金は13800コールになった。

さて、だいぶ懐が温まってきたところで腹が減ってきた。

走りまくったし、魔術は結構カロリーを消費するらしい。

こういう時は肉がいいが・・・。

とりあえず、マーガレッタさんの事務が終わったらあの国境の件に関して話を聞かせてもらえることになっている。

それまで俺は、気になっていた魔術や武具の見直しをしておこう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ