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葛藤

本に入ってくる多彩な情報の中から、比較的楽そうなものを毎回選んでいる。

前回は洞窟に蠢くアンデットの討伐を。

前々回は野営を襲ったモンスターの討伐を。

そう、俺は心が楽な方を選んでいる。

何と言うか、防衛や護衛と言うのは、あちらこちらに意識を張り巡らせなければならないので嫌なんだ。

その反対に、占領された拠点を取り返すとか、とある地点のモンスターを殲滅してくれと言うのはなかなか心が軽い。

相手が罠さえ張っていなければ奇襲を仕掛ける権利はこちら側にあるのだから。

もう一つ俺にとっての利点がある。

それはCランク程度の仕事なら姫様と俺だけでこなせるものばかりだからだ。

俺は出来るだけ分け隔てなく紳士的にふるまっているつもりだが、本来はガサツな男なので、人付き合いと言うのが苦手だ。

正直、自分の所の神様だけでも手一杯なのに、仲間だの他の神だのに頭を下げ続けたら禿げになっちまいかねない。

生きてた頃も、死んだ後も、どうにも独り身が板についてしまったのでやめられないのである。

若い頃は一匹狼(いっぴきおおかみ)がかっこいいと思って憧れた時もあったが、現実の一匹狼なんてのはそんなに格好の良いものではないって事が、年を食ってから分かってきた。

まぁ、利点はある。

物事の責任を自分だけで取れること、利益を独占出来ること、自分が死んでも悲しむ人間が少なくて済むこと。

ただ、はっきり胸を張って言えることは、生涯独身であったことに後悔はないと胸を張って言えることだ。

そして、きっと、これからもそうでありたい。

ただBランクに行ったらマーガレッタさんとの約束を果たさなければいけない。

そうなると集団生活を余儀なくされる部分も出てきてしまうだろう。

じゃあそれを合法的に放棄する方法があるとすればどうだろうか?

そりゃ簡単だ、ずっとCランクで落ち着いていればいい。

もしくは、Cランクで力を蓄えた後に、Bランクに入った瞬間に全力でAランクを目指せばBランクの滞在期間は短くて済む。その時になったら「すみませんAランクの仕事をしたいんで騎士団辞めますね」って言えばいい。

実際にそんなことが出来るのかと言われれば俺は可能であると思っている。

俺が初期に購入した今の信仰装備は弱い装備だ。

金をかければまだまだ上がある。

だからCランクで思いっきり金を稼いで貯金した後に、Bランクに突入したと同時に武具を新調すればAランクも圏内に入ってくるのではないかというのが俺の考えだ。


そんな孤独を愛する一匹狼な自分でも知り合いに声をかけられれば一緒に依頼をこなすこともある。

バルド姉弟(きょうだい)から声をかけられることもあった。その依頼で知り合った人に別の依頼で声をかけられる。さらにその次で知り合った人から依頼に誘われ・・・なんだこれは、いつになったら俺は孤独になれるんだ。

最初はとても便利だなと思っていたこの『本』だが、致命的な欠陥がある。

それは着信拒否機能が備わっていない事だ。

人が戦闘中の時か眠っているときにはアラームが鳴らない仕組みになっているようだが、それ以外の時には容赦なく鳴る。食事中だろうが、風呂に入っていようが、鳴るのである。

なんかこう「起きてるだろ、チラっと依頼内容を確認するくらい時間はあるよな?」と圧をかけられている気がしてやるせない気分になってくる。

そのくせ俺は、はっきりと断るのが苦手なのだ。

しかし、世の中を渡っていくうえではっきり断れなくても断れる裏技を俺は思いついてしまった。

それは仮病である。大概「頭痛と吐き気と下痢が止まらなくて一週間近くは活動できなさそうです」と言っておけば大概詮索されずに済む。

俺は仮病を発明した人にノーベル平和賞を送ってほしいと心の底からそう思っている。

ただ仮病を使うにしてもバレるほど連発してはいけない。

大人の仮病と言うのは適度に仕事をし、疲れ果てているときに使うのがマナーなのである。

疲れてもいないのに仮病をするのは、それは仮病とは言わない。ただのサボリだ。

またサボリにも大人のサボリ方というのがあるのだが・・・今は語らないでおこう。


さて本題に入ろう。

この度、ヴァイスという女性から一緒に依頼をこなさないかと連絡があった。

この人はバルドの知り合いの知り合いと一緒にクエストに参加したとき同じパーティメンバーだった龍人族の女性である。

龍人族とは顔が完全に龍そのもので二足歩行の全身強固な鱗で覆われている屈強な種族である。

ナイトメアと同様に一部の例外は除いて生まれた時から高ランク帯にいるのが約束されてるような人たちだ。

ただ彼女は俺と同じように信仰のステータスが高くて、他の龍人族と比べれば冒険に必要な能力が低い部類であると語ってくれたことがある。

そんな彼女からの個人的な依頼がやってきた。

それは彼女が信仰しているレッドドラゴンに牛を一頭、生贄として捧げたいのだが、彼女の故郷までは長い道のりで魔物も出る。

ただ人数はそこまで多くなくていいし、強い魔物が出るわけでもないのだが、万が一に備えて二人で挑みたいという事だった。

正直美味しい仕事では全くない。

報酬は2万。

Cランク帯の適正価格からは少し低いほうに外れてしまっている。


だが俺は、悩んだ末に承諾した。

確かに適正価格でもないし大したうまみもなさそうだが、レッドドラゴンを間近で見れるというのなら、それもまたそこそこ楽しい冒険になると思ったからだ。

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