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第九十八話 情報戦略の相違






 「私が小トリアノンで畑を耕すのはそう言った理由です。人由来の肥料を使うのも実際に使って有効な使い方を試しているのです。後は人々が人由来の肥料を使用した作物に抵抗を持たないようになればパリは世界に誇れる清潔な街に生まれ変わりましょう。皆様よろしくご理解願います」


 「……」


 王妃様にここまで丁重に頼まれるとは思いもよらなかった。

 糞の王女と言う噂では絶対聞けない内容でもあった。

 それでも人糞肥料への抵抗を消せない者、特に貴族階級にそう言う者がいた。


 観衆の中から貴族らしい身なりの男が進み出て口を開いた。


 「正直王女様の希望と言えど簡単にその様な肥料で作った作物を喉に通す覚悟はできません。先程のじゃがいもも私は食べませんでした」


 「気付いておられましたか」


 「はい、勘が働いて。しかし王妃様がパリを綺麗にしようとしてやっていたとは知りませんでした。噂話ではそんな事一言も出ませんでしたから」


 「あら、そうですか。噂とはそんな物でしょうかね」


 「新聞でも似た様な物です」


 「ほお。どんな風に書かれているのですか?」


 「……今持っておりますが。しかしこれはお見せするには……」


 「構いません。発行した者にも罪は問わないと約束します」


 「え、? そこまで……しかしかなり酷いことを書いてありますよ!」


 「気にしません。気にするとすれば……」


 「……?」


 「夫の事を悪く書いた場合のみ……」


 ぞくっ


 背筋に悪寒が走った。

 マリーの顔に一瞬笑顔が消えたからだ。


 幸か不幸か夫である国王はマリーの一言を聞き逃していた。





 取り出された新聞は二つ折りの4ページの物だった。

 開いてさっと目を通すマリー。

 

 「……」


 裏返して残りの記事を見る。

 とても早いペースだった。


 「……糞に塗れる趣味ですか。手段が目的にされていますね」


 「はっ何とも恐れ多い……」

 

 「この新聞に私の目的が書かれることは無いでしょうね」


 「えっ?」


 「この新聞自体の目的を考えればそうなるでしょう」


 「……そんな」


 「随分事実とかけ離れた記事ですが、こんな物でしょう」


 こんな物で済ませていいのか?

 事実とかけ離れてるんだろうに。


 「本当の話を聞きたければまたここに来て下さい」


 「ええっ?」


 「新聞を持って来ても良いですね」


 そんな事していいのか?

 王女が直接民衆に話すとは。


 「いつもいる訳では無いので張り紙でもしておきましょうか?」


 「は?……はは〜!」


 何だかよく分からないがお近づきになれた様だ。

 これはチャンスなのかも。

 

 「それでは、今度はあなた方のお話を聞かせて下さい」


 「ええ〜?!」


 なんでそんな話を聞こうとするんだ?

 貴族もいるが大半は平民だぞ!

 大丈夫なのか……


 

 「またマリー様の……平民と話したがりが始まった」


 カークは呟いたが別に煩わしいとは思ってない。

 民との交流は主の生活の一部でもある。

 過度に行わないよう見守るのが己の仕事なのだから。

 いざとなれば自分も飛び出すしビスケもいつでもナイフを投げられる体制をとっている。

 安心して主が会話を楽しめるように……



 「王妃様と直接会話を、しかも今後もできるとは光栄至極でございます!」


 「ところで……あなたお名前なんですか?」


 


 マリーが民との井戸端会議で仕入れた話はそれなりに世間の情勢を知る情報となった。

 ちなみに王は食事をしながらしっかりその会話を聞かされるのが習慣となってしまった。


 一方モルパは。


 「新聞に載せる王女の醜聞が似通って来ている。何か新鮮なネタはないか!?」


 ネタ作りに四苦八苦している状態だった。

 しかも苦労して作った紙面をもれなくマリーの元へ持ち込まれているとは知る由もない。

 そしてマリーが記事の評価と訂正をした上、その情報を観衆が持ち帰っている事も。

 すでに観衆の中にリピーターも現れていた。



 「これが今日の記事ですか。内容が使い古しですねえ。もう少し頑張ってもらわないと……」






 ネットのまだ無い世界では新聞は強力な情報媒体なはずですが公平公正な記事を書くとは限りません。

 強力さはともかくとして口こみも同じ。

 結局発信者の心の持ち様ですね。

 良き心がけで発信しないと。

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