表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/441

第九十七話 対話にのめり込む






 「では他には? そうですね、今日食べた料理などで知らない物などありませんでしたか?」


 「……」


 これも無言。

 そこは注意してなかった。


 マリーは食卓に戻るとじゃがいもを盛った皿をフォークを乗っけて観衆達に持って来た。

 

 「さて、これは何でしょう?」


 「な、何ですか?」


 観衆の一人が聞くとマリーはフォークでじゃがいもを刺して眼前に出した。


 「まずお食べを。あ〜ん」


 半ば強引に口に入れられた男はおっかなびっくり噛み締めた。


 「……これは……何だ」


 男の顔色が変わる。


 「もう一個どうです?」


 「は、はい」


 言われるままに、というか積極的に食べ出した。

 他の者が興味を持った所でマリーが大皿を突き出した。


 「これなら手で取って食べても大丈夫でしょう。ご自由にお食べください」


 王室の料理だ。

 やはり食べたい。

 次々手が伸び、さながら試食会みたいになった。

 彼らが口に出す感想は総じて好評だった。


 「これは初めての味だ」


 「芋なのか? この歯触りは」


 「王室料理だけにうまい!」


 感想がひとしきり出た所でマリーが声を上げた。


 「え〜皆さん、これはジャガイモという作物です」


 おお〜


 「飢饉に強く栄養も高い、しかも美味しい事も今お分かりになったでしょう。今後じゃがいもの作付けを奨励する所存です」


 おお〜



 王は王妃の行動を一切気にせず食事を続けていた。

 大食漢な王はまだ半分位しか食が進んでない。

 妻が何をしようと関係無く食べるのが妥当な方法だと王は考えていた。

 下手に口を挟む必要はないだろう。

 ただ聞き耳は立てていた。


 マリーは早くも売り切れたジャガイモの皿を食卓に戻してまた観衆の元まで歩を進めた。



 この部屋には王家、観衆以外にも護衛が数人いた。

 今日はマリーの口利きでカークとビスケもその中にいた。

 カークの隣の護衛が聞いた。


 「おい、観衆にあんなに気安く近づいてお前の主はいいのか? もし何かあったらどうする?」


 「あれが我が主だ」


 カークがため息混じりに答えた。


 「だがあの観衆全員がまとめてかかってきても勝ち目はあるまい」


 「? 何言ってるんだ」


 「マリー様の王女時代の数々の武勇伝は聞いてるだろう。大袈裟に誇張されて伝わっているが私に言わせれば……」


 「……」


 「誇張など必要ない。あんな物じゃないのだから」


 「お前、正気か……?」


 「正気だ。とは言え何かあったら身を挺して主を守るのが我が使命だ。マリー様に誰も手出しさせない為に常に臨戦体制を取っていなければな!」


 カークの視線はしっかりと大事な主をロックオンしている。

 これにはもうどう反応していいか分からない。

 軍人時代のカークとは同期でよく知っているが将来を嘱望された剛腕兵士だった。

 それが今はこんなセリフを言うキャラになってしまったのか?

 一体どうなっているのか……


 

 


 マリーは再び観衆と会話を始めた。


 「このじゃがいもはうちの畑で取れたものですよ」


 「!」


 観衆の中に息を呑む者がいた。

 もちろん人糞肥料の事が知られているからだ。

 

 「何かご意見ありますか〜? 好きに言っていいですよ」


 さっきからずっと笑顔でいるマリー。

 逆にその笑顔が気になって発言できない。

 観衆の顔色を伺いながらマリーが聞いた。

 

 「ではこちらから一つお聞きします。この中で農業をお仕事にしておられる方はいますでしょうか?」


 何人かの男が反応し、その内一人が返事をした。


 「お、俺はそうです……」


 「おお、そうですか。農作業の時に牛や馬や鶏の糞を肥料として使う場合はありませんか?」


 「あ、それは……あります」


 農夫の言葉にも反応する者がいた。

 糞の肥料使用の事実を知らなかったのだ。

 

 「それだけではありません。パリでは人由来の肥料も取引され農村部で使用されているのですよ。ご存知ですか?」


 「はぁ……うちは使ってませんが……そう言う話は聞いてはいます」


 おお〜


 これには観衆の声に動揺がかなり入り混じっていた。

 知らない人がほとんどだった訳だ。


 「そうなのですよ。肥料だから有効に使わねば。しかしその扱いが拙い為にパリの肥料は有効に使われておりません。だからこそ効率の高い利用法を作り上げねばならないのです。そうすればパリの都を悩ませる悪臭も何とかなりましょう」


 おお〜


 観衆の半分くらいの人数で歓声が上がった。

 理解数が増えたようだ。





 これまでマリーが言っていた事を民に話す事になりました。

 そういう場が王の食卓になっちゃいました。

 王様も大変かも知れないです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ