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第九十五話 じゃがいもをよろしく







 宴が終わり帰り際のジャック・ルイにマリーが声をかけた。


 「ご出席ありがとう御座いました。それでご相談ですが……」


 「ああ、分かってますよ。王の菜園にじゃがいもを加えて欲しいと言う事ですね」


 「はい、そうです。見ておりますと……うちで作ったのだと知ると何故かスプーンを持つ手の動きが鈍るみたいで……」


 何故か、と言うのか。

 

 「そちらでも作って頂ければそういった事も無くなっていくのではと」


 「今日食べたパルマンティエ、ですか。興味深い料理でした。ですのでじゃがいも栽培は引き受けましょう」


 「ならば僕がお手伝いします!!」


 どこからかパルマンティエが現れた。

 フィリップ伯爵も一緒だ。


 「偉大なる王の菜園にじゃがいもを加えて頂くとは光栄の極みです! 全身全霊協力させて頂きます!」


 「そ、そうですか……よろしく願います」


 いきなり暑苦しいのが来た、と思いつつジャックは挨拶した。

 そしてマリーに振り返り。


 「それから、あの例の肥料。うちで試してみても良いですよ」


 「えっ! 本当ですか?!」

 

 「国王様が良いのなら……」


 「ありがとうございます〜! 夫にはしっかり伝えておきます!」


 喜びに顔をほころばせるマリーはフィリップ伯爵にも声をかけた。


 「伯爵様、もしよろしければ貴方様の領地にもじゃがいもをお願いできますか?」


 「はは〜!! 喜んでじゃがいもを承ります!」


 「おお、そうですか。パルマンティエさん、栽培指導をお頼みします」


 「はい、伯爵様、お手伝いします! じゃがいもの事なら全力で!」


 「手伝ってくれるか、頼んだぞ!!」


 「引き受けました!」


 「王妃様を満足させてくれ!」


 「満足させます!」


 「王妃様にじゃがいもを!」


 「じゃがいもを!」


 (何だこの異様なテンションの高さは……)


 暑苦しさが2乗された空間にジャック・ルイは引きまくる。


 (王妃様の周りはこんなのばかりか……?)






 その後国王はパリ郊外のレ・サブロンの原野に二十ヘクタールの試作畑を設ける事を決定した。

 次の栽培は来年の三月開始になる。

 それまでの間小トリアノンでは小麦を育てる事にした。

 肥料は春まで待ってくれないからだ。

 

 収穫を終えた小トリアノンの畑にマリーは立っていた。

 周りには雇われた四人の農夫とカーク、ビスケがいる。


 「一応の成果は出ました。次は麦ですがこれは特に指導はいらないでしょう。これからはこの畑の作業はあなた方四人に一任します。時々覗きに来ますのでよろしく」


 四人の農夫達に依存は無い。

 報酬は十分もらっている。

 肥料の作業は大変だが王妃の命なのだから、そこは諦めるしか無い。

 もし投げ出したら四人を紹介したフィリップ伯爵の面子を潰す事になるだろうし。


 「次は……パリですね」


 カークとビスケの顔色が変わる。

 とうとうやる気か。


 「パリの人由来の肥料は扱いが杜撰です。もっと効率的に運営せねば街を綺麗にはできないでしょう」


 「はっ」


 「まあ、急がず慌てず確実にやりましょう!」


 「マリー様、私らは何をやれば……」


 カークの問いにマリーは笑みを漏らした。


 「これまで通りお願いします。何か変わった事があればそれはその時その時に何とかしましょう」


 「えっ?」


 行き当たりばったりか!

 これは先が思いやられる。

 

 「そうですね。考えても仕方ないです!」


 「おい、ビスケ!それは気軽すぎだろう」


 二人のやり取りを眺めつつマリーは思う。

 王妃となり権限が広まった今、二人に任せる訳にはいかない存在がある。

 単純に身を守る、共に戦うとはいかない相手が立ちはだかるだろう。

 

 すなわち……



 政敵である。






 じゃがいもが正式に栽培されることになりました。

 史実より相当のショートカットです。

 果たして食糧不足時の救世主になるのでしょうか?

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