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第八十五話 テレー&テュルゴー






 七月末日、テュルゴーは海軍大臣に王の命を受け就任した。

 ヴェリ師という共通の助言者を持つモルパは歓迎した。

 モプーは三頭にもう一人割り込んできたのに慌てふためいた。

 そこでテレーに対応策を聞いたが、彼は落ち着いたもので気にも止めていない様子だった。

 

 大衆の中で政治に興味を持つ者はテュルゴーが財務総監にならなかったのに不満を感じた。

 留任したテレーには相変わらずの悪評が浴びせられたが彼は前にも増して気にしなくなった。


 それよりも王妃であるマリーアントワネットに対する評判の方が苛烈だった。

 すでに糞の王女の呼び名はヴェルサイユ、パリは愚かフランス中、国外にまで伝わっている。

 しかも国務会議以来マリーを良く思わない貴族達が悪い噂に輪をかけて広めていた。

 暴れん坊同様王女のままなのは王妃と認め難いという意味が含まれている。

 そして特にパリの噂好きの市民には格好の標的となった。

 その事を当のマリー自身は全く気にしていなかった。

 

 



 八月半ば。

 小トリアノンに広がる畑に植えたじゃがいもから既に芽が出ていた。

 良くぞここまでという位の面積の畑にぽつぽつと緑の芽が並んでいた。


 「もう少ししたら芽かきをします」


 パルマンティエの言葉にマリーが目を輝かす。


 「芽かき、ですか」


 「はい、芽に栄養が行き過ぎると芋が育ちませんからな」


 「一本だけ残すのですね?」


 「そうです! コツはその時にお教えします」


 「これは楽しみ!」


 カークは楽しそうに会話する二人を眺めていた。

 本来は護衛のはずが……

 しかし畑仕事をする主を護衛だからと言って突っ立って見ているのでは、どっちが働いているのか分からないだろう。

 だから手伝うしか無いのだが……

 傍で土をクワで整えているビスケに問いかけた。


 「なあ、マリー様の言われるまま耕してきたが……」


 「何ですか?」


 「芋が育ってきてどう思う?」


 「そうですね〜」


 ビスケは少し思案顔になった。


 「本当に大変で臭い思いもしたけど、その結果こうして芽が出てきたんですよねえ……」


 芽吹いた畑を見渡して。


 「こうなったらじゃがいもが大きく実って土から掘り起こした所を見てみたいです」


 「そうか……」


 それが労働に対する見返りというものだろう。


 「私も見てみたくなってきた」


 「ですよね!」


 「ただし!」


 「?」


 「収穫した以上は食わねばならんだろう。人の糞で育てた芋を」


 「う……」


 「覚悟はいいな?」


 「今更……それ位覚悟してますよ!」


 やけ糞気味にビスケは答えた。





  テュルゴーはテレーの執務室で彼の1769年から現在までの収支計算書を見せてもらい声を失った。


 「これはとてつも無い赤字ですね……これをここまで改善されたのですか」


 「ああ」


 「億単位の赤字と債務を十分の一にですか」


 これはテレーの手腕を認めざるを得ない。


 「君が財務総監になれば残された赤字も解消せねばならん」


 テレーは恐らくいずれはテュルゴーに財務総監の座を譲る事になると思っていた。

 しかし王妃の評価が思いの外高く、テュルゴーとの共闘を願ったのでこうして一緒に収支の確認をしている。

 お世辞も入ってるだろうが公正かつ民の為に働ける人達だからだそうだ。

 ただ自分はテュルゴーほど潔癖でも清廉潔白でもないので、いつまでも財務総監に居残れる可能性は低そうだ。

 それでも王妃に気に入られたので解任を取り敢えずは免れた。

 だからテュルゴーと協力する道を選んだのだ。

 それが最善の道のはず。




 テレーとテュルゴーが共同作業をしています。

 地味な展開が続いてるので何とかしたい所です。

 王妃編を賑やかすのにはと頭をひねる日々が続く……のかな?

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