第八十四話 本音で出しゃばる
「皆様に私の本音をお聞かせします」
当然のように皆の視線はマリーに釘付けになっている。
(要は自分が言いたかっただけなのではないか?)
ヴェリはいぶかる。
「私は常に民の為にこの国の未来を作りたいと願っています。民の笑顔を見たいのです。その為に考え、動いてます。政治に関わろうとするのもそれ故です」
そう言えば国務会議で自分は民の為の王妃だと言っていたと聞く。
会議にいなかったヴェリ師もそれは知っていた。
「私は政務に関わる人達を見て来ました。民の為に政務を行う人はいないかと。しかし中々いませんでした。それでも政務を私腹を肥やすのに使う者、権力を掌握する為に使う者だけではないと知りました。少なくとも国を良き方向に機能させようと努力している者もいたのです。利権を求めず、たとえ地位に固執したとしても、その地位を公正な政務を全うする事に使う、そんな人は何人かいました」
テレーは一瞬、表情を緊張させた。
そこまで観察していたのか?
では自分はどう見られているのだ。
「だから私の政治家を見る基準は、この国と国民の為に政務を全うする意志の有る方かどうかです。その様な方に国を良くしてもらいたい。そんな政治家が多く集まってくれれば」
マリーはテレーとテュルゴーを見た。
「そんな方々であれば意見が食い違っても構わないです。国と国民の為に公正な政務を行うと言う意志が共通しているならば。テレー師は私腹を肥やすため政務を捻じ曲げる気は有りません。そんな事しなくてもお金持ちでいらっしゃるし。名声や権力にも無欲です。貴方が財務危機を何度も切り抜けさせていながら、国民がそれを評価せず悪評が広まっているのに気にも止めず政務をただこなし続けていると聞いています。まさに名声に左右されない人」
「なんと……」
予想外の評価の高さ!
テレー自身もびっくりだ。
「そしてテュルゴー様もヴェリ師からお墨付きを頂きました。彼自身の使命感からこの国の為政務に従事すると。テレー師と重なる部分が多いと思います。用意した席の数より、この様な方に政務に付いて欲しいと言う人材を遠慮なく受け入れてもらえるなら」
「つまり……」
ヴェリ師もテレーとテュルゴーを見た。
「二人とも政務に就いてほしいと。この国の為に」
「そう。国民の為思いきり意見を戦わせて欲しい。正直、二人共財務総監の仕事をしても構わないと思いますよ」
「いや、いくら何でもそれは無理でしょう。肩書きは大事です。二重に肩書きがあっては混乱します」
ヴェリ師がマリーを諌めた。
「ただ意見を戦わせるのは悪くは無いです。財務に関しては。ただ王妃様程徹底して民の為とは主張できないでしょう。そこは適度に。これでよろしいですか?」
「はい。ありがとうございます……あなた」
マリーは夫に振り向いた。
「ごめんなさい。私ってこんなに出しゃばりだったのですね。国王であるあなたに発言させる隙を与えなかった。とっても……気恥ずかしいいい〜〜」
マリーは両手で顔を隠して俯いてしまった。
(は、恥ずかしがるのか!?)
何だか歳より幼く見えてしまった。
予想外の恥じらいを見せるマリーに王も何も言えなくなってしまった。
そりゃあ一言も言えなかったのには思う所もあったろうが。
「それでも役職の任命は王の仕事です。そこは宜しく願いますぞ、国王様」
ヴェリ師の言葉に国王はうなずいた。
結局テュルゴーは財務ではない大臣に就任するという方向で話がついた。
しかし財務の仕事には遠慮なくテレーに意見を述べる事を確約された。
いずれ彼は財務総監に就く事になるのだろう。
そしてマリーはテュルゴーとテレーにある提案をしたのだった。
「おや、お帰りなさいマリー様」
パルマンティエは植え付け作業をしながらマリーに声をかけた。
「ただいま帰りました。ご紹介します」
後ろに立つ二人が彼を見た。
「どちら様で?」
パルマンティエは植え付け作業をしながらマリーに問いかけた。
「テュルゴー様とテレー師です。政務を担当される方ですよ」
「何とそんなお方が何用で?」
「小麦の凶作の時に代用となる作物をお二人に紹介しようと思い立ったのです。政務を行う際に頭に入れてもらおうと」
「そ、それは光栄です!」
パルマンティエは立ち上がり二人の元へ歩み寄った。
「僕はパルマンティエと申します! 畑の管理指導を任されております! このじゃがいもの収穫の暁には民の飢えを凌ぐ一助となりましょう」
「テュルゴーと申します。その様な都合のいい作物が本当にあるのでしょうか?」
パルマンティエの目が鋭く光った。
「諸外国ではすでに広まっております! プロセインや英国にも! 特にプロセインでは国民の飢えの解決策として広まったものです!!」
「はぁ……」
「国策としてじゃがいもを栽培すれば昨今の小麦の不作も解決します! そしてです! その栄養価も麦をも凌駕します! プロセイン軍に僕が囚われた時…………」
取り止めの無いパルマンティエの弁舌に絡みつかれてしまったティルゴー。
マリーは笑顔でテレーの背を押した。
「テレー師もパルマンティエさんにご挨拶願います」
「いや、もう少しお二人に親交を深めてもらってからで……」
こうしてフランス王国の政務を担う者の思惑に『じゃがいも』が強制入力されたのであった。
テレーとテュルゴーがマリーに丸め込まれました。
これが正しいかどうかもよくわかりませんが。
政治で暴れさせるのは大変だと感じております。




