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第七十五話 会議終わって





 

 小トリアノンの畑。

 いつも通り土に肥料を撒く作業が行われている。


 「結局手伝わされる事になるなんて……」


 ビスケがぼやきながら柄杓で肥料を撒いている。

 

 「仕方ない、マリー様がやってるんだから」


 カークも相槌打ちながら肥料を撒く。

 二人は王妃の口利きで国務会議の際ドアの前で警護役として立っていた。

 なので中の声もしっかり聞いていたのだ。

 糞の王女と呼ばれていた事も、何故人糞を肥料にして畑を耕すのかも聞いた。

 これでは手伝わずには行かなくなってしまった。

 

 「さあ、もう少しで今日の作業は終わりですよ!」


 「はっ」


 「はい〜」


 「作業が終わったら……うふふふ」


 何なのだろう?


 「ご褒美がありますよ〜」





 「ふう……」


 ビスケは吐息を漏らした。

 心地良さに表情が弛緩する。


 「やはり労働の後はこれでしょう」


 向かい合うマリーも気持ち良さそうだ。

 ここは小トリアノン内の浴槽のある部屋だった。

 二人で風呂に入り、作業の疲れと体の汚れを洗い落としていた。

 風呂にはアーモンドの白い乳液が混ぜられている。


 「まさか王妃様とこんな豪華なお風呂に入れるなんて思っても見ませんでした」


 「そうですね。私はあまり贅沢はしない様にとは思っていますが……すでに有る物は使ってしまわなければ勿体無いですよね」


 「はい!」


 「こうやって素肌を晒して風呂に入れば……王妃も部下もありませんね」


 「そうなんですか?」


 「ええ。……ちょっと」


 マリーがビスケに背中を向けて見せた。

 振り向いて一言。


 「ビスケさんも背を向けて下さい」


 「はい?」


 疑問を浮かべながらも背を向けるビスケ。

 マリーが背と背をくっ付けた。


 「? 、何ですか」


 「これで私とあなたは互いに背中を預ける立場になりました」


 「え〜、それなんですか〜?」


 「すみません、カークさんが中々認めてくれないもので。まずビスケさんから。うふふふ」


 「あっそういう意味ですか」


 ビスケはそういう事には割と寛容だった。

 深く考えない性分なのかもしれない。


 「では、そろそろ出ましょうか。男性の皆さんにも入ってもらわねばいけませんから」


 「もうちょっと入っていたかったな〜」

 

 二人は風呂を出て体を布で拭くと着替え始めた。


 「マリー様が入った風呂に入るなんて男共も幸運でしょう」


 「全員で五人ですか。一度には無理ですかね」


 着替え終わるとマリーは声を張り上げた。


 「皆さーん! 風呂ですよ〜! 早く来てくださ〜い!!」


 「あ! マリー様、まだ着替え終わってませーん!!」


 待ち構えていた男達の足音が聞こえてきた。


 「あ〜、ちょっと待って〜〜!!」





 こうして国務会議をマリーは国王ルイ十六世と共に乗り切ったのだった。


 しかし…………




 「いったい何なんだ、あの王妃は!」


 「国王まで焚きつけて! おかげでこっちは大損だ」


 「このままあの暴れん坊の糞王女をのさばらせて良いものか!?」



 「我が祖国フランス王国の恥だ! 何とかせねば!!」




 そう、マリーは新たに敵を作り出すことになってしまったのだ。

 しかもこれまで敵対関係を持っていた者と違い、その胸に憎悪を秘めた敵を。


 秘められた憎悪は静かに成長を遂げようとしていた……

 





 会議が終わり、その次は。

 いよいよ種蒔きでしょうか。

 それともまた一悶着あるのかな?

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