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第七十四話 続・王の決意






 「それでは次の議題に移ります」


 テレーの声にも貴族達はまださっきの騒ぎを引きずっているため気持ちの整理が付いていない。

 しかし場が落ち着くを待ってられないとばかりにテレーは話を続けた。

 

 「次は小麦の投機に関しての話です。不正取引があるとの報告があります」


 「!?」


 貴族達の一部の者が驚きの反応を見せた。

 そんな議題聞いてもいない。

 高等法院の復活では無かったのか。

 

 「この投機における不正は一部の貴族らによって行われ小麦の価格にも影響を与えるものでした。この不正をどう扱うかが重要になってきます。なぜならこの不正は過去数年以上に渡って行われてきたものだからです」


 一旦言葉を切ったテレーはフィリップ伯爵に目を向けた。


 「フィリップ伯爵。あなたはこの投機不正に加担した経験があると聞いてますが」


 さっき驚いた一部の貴族らが更に狼狽し、声を漏らす者まで出た。

 不正を働いた者が名指しまでされたからだ。

 フィリップが起立した。


 「はい、加担しました。投機により利益も得ました。しかし王妃様に気付かれ、全てを白状しました」


 何〜〜!!


 完落ちした者がいた〜?!

 しかも王妃に対して?


 「間違いないか?」


 「はい、誓って」


 「そうか。では他に不正を働いた者を知っているな?」


 「はい!」


 「では申して……」


 「待て!」


 テレーの声を王が遮った。


 「私に話したい事がある」


 「そ、そうですか。ではお話し下さい」


 王は玉座から再び立ち上がった。

 マリーの見守る中、意を決した表情で口を開いた。


 「そもそもこの小麦の不正投機については数年以上前、先王ルイ十五世が不正を行っていた投機会社と手を組んでいた事が始まりだったのだ」


 ええ〜〜!!


 王様自らばらしちゃった〜!?

 この事については何となくやり過ごす手筈だったのに!

 先王と共に不正に加担した貴族達は完全に混乱状態に陥ってしまった。

 

 「先王亡き後もこの不正投機は続き、私の代にまで受け継がれてしまった」


 王は混乱する貴族らに構わず話し続けた。


 「その結果この投機は連綿と続き食糧価格の高騰を引き起こした。そしてその皺寄せが民に来た。一部の者の利益の為。しかし私はこの様な利益は受けたいとは思わない。もう、これで終わりにしよう」


 テレーは国王の姿を凝視していた。

 王妃との手筈通りになった訳だが、よく国王を説得できたものだ。

 しかも今の国王の言動、まるで別人みたいだ。

 王が王の器になったのだろうか?

 あの糞の王女と呼ばれた人の力添えで……か?


 その糞の王女は夫である国王を頼もしげに見つめている。

 

 「よくおっしゃって下さいました……」


 夫にだけ聞こえる声でマリーは囁いた。

 小さく頷き王は続けた。


 「私は今後この様な不正投機は行わないと誓おう。私同様の行為をした貴族達も誓ってもらう。だから彼らには温情ある審判を下して欲しい。ただ王と同じ事をしていただけ、とも言えるのだから」


 「そうですか。ならばモプー大法官殿、どうされます?」


 「えっ?俺、私か?!」


 テレーに声掛けされたモプーが慌てふためく。


 「いや、貴公は大法官であろう。むしろ私以上に意見が反映されるべきだ。今、高等法院は活動停止している。ならここで決定するのが必定だろう」


 モプーからすればそんな提案責任を丸投げされる様なもんだ。

 ここで自分に王まで裁かせる気か?


 「もちろん貴公一人に任せるつもりは無い。私も意見を言う。私はこの不正な投機を行う権限を放棄すると確約するなら、これまでの事は不問と処するのでどうかと思う。王を、ここまで誠意を持って自らの所業を暴いた王を我らの手で裁きを下すのは忍びない。貴公はどう思う?」


 「あ、私もそう思う! それが最適だ」


 あっさり同意するモプー。

 責任を伴う自分の意見など言う気は無い人だった。


 「エギヨン公はどうかな?」


 「すでに二人意見が同じなら私がどう言おうと関係ないでしょう。後は国王様が認めれば決定でしょう」


 エギヨンは他人事の様に答えた。

 どうやら関わりたくないらしい。


 「そうか。では国王様、我々としてはそう取り計らいたいのですがよろしいですか?」


 「……それで良いのか。良いのなら願ってもない」


 「では不正の為の投機会社は解散とします。これで小麦の不正投機に関する会議は終了します」


 



 結局高等法院の再開は実現されなかった。

 本来その再開の代わりに王の不正投機は高等法院で裁かないと言う取引があったのだ。

 それが崩れたので高等法院再開派の一部が瓦解した。

 おまけに再開派でショワズール復帰派の貴族達もショワズールが帰ってしまった為、無力化したのだ。


 この為、高等院再開と共に行われるはずの政務官の一新もうやむやになり、テレーもモプーも留任となった。

 これがテレーがマリーに手を貸した理由の一つだった。

 しかしエギヨン公はデュ・バリー夫人と関わりが深かった事もあって自ら身を引き、代わりに彼の義理の叔父でもあるモルパが入る事になった。



 今回の出来事以後、国王ルイ十六世と王妃マリーアントワネットの仲むつまじさが増したと言う声がちらほら聞かれる様になったとか。





 

 タイトル適当です。

 王がかなり化けました。

 マリー以外も史実とじわじわずれ出してますね。

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