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第七十二話 糞の王女






 「……糞の…………王女と!!」



 おおおお……


 再びどよめきが広がる。

 その場にいる貴族達が皆思った。

 ああ……とうとう言ってしまった!

 一国の王妃に……

 こんな事を言ったらただでは済まないのでは……


 皆が王妃に視線を集め、固唾を飲んで彼女の言葉を待った…………

 




 「あ、それ広めたの私です!」



 ええええええ〜〜!?



 「文句を言う者もいたので王妃の名の元に行っていると言って追い返したのですが、その時これでは糞の王女ですねと言ったのを聞かれていた様で。うふふふふ」


 実はそんな事実は無い。

 王妃となった今、自分を糞の王女と間違えて名乗るはずもない。

 自分を糞の王女呼ばわりした彼に罰則が与えられない様に言っただけだ。

 だがこれで益々自分がぶっ飛んだ存在に見える事だろう。

 場があったまった所で本題に入らねば。


 「それでは何故私がこの様な事をしているのかをご説明いたします!」


 マリーは立ち上がって自分の目論見を話し出すのだった。





 王は呆然として側の妻の姿を眺めていた。

 ちょっと変わっているとは思っていた。

 必要以上に明るくて笑顔を絶やさない女性だった。

 いつも自分を立ててくれる優しさを持っていた。

 だが今何が起こっているのだ?

 自分の知らない所で一体何をやっていた?

 その挙げ句がこれなのか?

 ……我が妻は何の目的でこんな事をしようとしているのだろうか……

 




 

 「現在のパリの衛生状態は大変悪いと言わざるを得ません。下水道は滞り、ゴミ、特に糞尿の始末はずさん極まりない。誰もパリを綺麗にしようとしていない。だから時が経つ程に臭気が強くなっていく。これがフランスがその文化において世界に誇るパリの実態です」


 どよめいていた貴族達が今度は押し黙ってしまった。

 急に話がまともなものに反転したからだ。


 「ではどうすれば解決するか。簡単にはいきませんがまず出来ることがあります。パリで排出された糞尿を回収し肥料として農村部へ送ります。その肥料で畑を耕し収穫の増加を見込みます。これにより食べた物を排出し、排出した物を肥料にして作物を育て、育てた作物をまた食べるという循環が生まれます。そのためにまず肥料の効果を確かめる必要があります。今やっているのはそれです」


 マリーの講釈をただただ聞いているだけの貴族達。

 彼らの感覚ではあまりにも話がぶっ飛んでいた。

 

 「効果があればヴェルサイユでノウハウを蓄積し、このシステムを確立させます。その後にパリでこの方法を転用します。自信を持ってパリを世界に誇れる街と言えるように、お力添えをお願いします」


 ここまで言ったマリーだが聞いている貴族達は呆気に取られているままだった。

 彼女の言葉を理解し切れないからだ。

 さっき糞の王女と発言した男がさらにマリーに食い下がる。


 「正気ですか!? 人の便を使って麦や野菜を育てると? そんな物を我々に食べろと言うのですか!」


 「はい、もちろん」


 「無理です!そんな便で作った麦など食べられるわけがない」


 「では何故貴方は今現在パンをお食べになっているのですか?」


 「え……?」


 「今、作られている麦畑にも牛や鶏の糞が肥料として使われてますよ」


 「え、そんな……?」


 「ご存知なかったのですか?」


 そう、貴族達の中には畑で農作物を作る際、家畜の糞を肥料に使っている場合があるのを知らない者もいたのだ。

 住む世界が違う、という事か。


 「堆肥と呼ばれる畑に有用な養分となります。そうですよね、ジャック・ルイ監督?」


 マリーは王の菜園を統括するジャック・ルイを見た。

 彼はテレーの横に座っていた。

 

 「はい、確かに。野菜を育てるのに使っております」


 「助言ありがとうございます。と言う訳で、家畜の糞を活用しているのに人の物だといけないのですか?それでは動物の糞より人の物の方が下等とでもおっしゃりたいのですか?」


 「……」


 言い返せない。

 しかし理屈はともかく情緒的、生理的に受け付けないのだ。

 諦めず彼は反論を試みた。


 「ではその様な事業を一体どの様に行うのです? そんなパリを巻き込んだ大掛かりな事を、しかも常に人の便が付き纏う様な事を!?」


 「だからまずヴェルサイユで試すのです。パリはその後で」


 「そんな糞に塗れた役目を誰がやると言うのです!?」


 「私です!」


 にっこり笑顔で答えるマリー。


 何なんだこの人は!

 最早王妃と言えど遠慮などしている場合ではない。


 「一国の王妃がそんな糞塗れをやるなんて良い訳ないでしょ!!」


 「やりました!」


 「えっ……?」

 

 「今朝早くに部下達と共に糞の回収に参りました。後、畑に肥料を撒かせて頂きました。まだまだ試行錯誤中なので私もお手伝いしております」


 「……!!」


 男は青い顔をして一歩後退りした。

 他の貴族も引いている。

 

 「作業の後、香水振り撒いた風呂に入っておいたので誰もお気付きにならなかったみたいですね。良かった良かった。うふふふふ」


 「貴女は……この国の王妃なのですよ!! 王妃としての誇りも威厳も無いのですか?!」


 「あります! 私の誇りは……」


 誇りは……?


 「民のために全力で王妃としての役目を果たす事です!」


 民のため?


 「たとえ糞に塗れようとそれで民の笑顔を見れるのなら本望です! そのために私はここにいる。私は、私は……民の為の王妃です!!」




 ……………………それ何だ?






 糞ですがフンとクソを漢字で書くと同じになってしまうので困ります。

 一応マリーは『糞の王女』以外はフンと言っている事になっています。

 他の人は場合によります。

 ご了承をお願いします。

 王妃なのに糞の王女なのは理由付けしときます。

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