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第六十五話 王妃の暗躍







 マリーがまず訪れたのはテレー財務総監だった。

 六十近い年齢で修道院長にも任命されておりテレー師とも呼ばれている。

 王妃が直に自分に会いに来た事に驚いたが彼女の噂は既に貴族階級にも伝わっており、ランス大聖堂への出発後労働者にパンを配りまくった奇人である事も耳に入っていた。

 二人は庭園で会話をしていた。


 「王妃様、お噂はかねがね聞いております。ずいぶんお暴れの様で」


 「はて、そうですか?」


 自覚がないのか?

 それともこの程度で暴れた内に入らないのか?

 まあ、テレー自身は人から聞いた話でしか知らないので真に受けるのもおかしいか。


 「早速ですが御用とは?」


 「はい、実は国王より小トリアノンを賜りました」


 「おお、それはおめでとうございます」


 もうせしめたのか。

 なんと抜け目ない。


 「そこでちょっとやりたい事がありまして」


 「ほう、なんでしょうか?」


 「畑を作りたいと思います」


 「……?」


 「王の菜園のジャック・ルイ監督に聞いたのですが、あそこは王家に最高の食材を献上する為の菜園であり、民の腹を満たす為の物では無いと」


 「ほう」


 「なのでこちらは質より量を重視したいと思います。だから別立てで畑を耕す必要があるのです。もちろん助言は頂くつもりでは有りますけど」


 まだ思惑が分からない。

 自分を呼んだ理由は?


 「果たして財務総監の貴方に頼むのが最適かどうか分からないのですが……実験してみたいのです」


 「実験?」


 「このヴェルサイユで実験してみて成功したらパリに応用してみたいと考えています……」


 一体何をするつもりなのか?

 

 「実は…………」


 マリーはテレーに耳打ちをした。


 

 「な、な、なんですと〜〜!!」


 驚きがテレーの頭の中を乱反射しまくった。

 王妃が何を言い出すのだ〜!?


 「私の責任において行うと言うことで」


 「無、無理です〜!!」


 「手伝ってもらえませんか?」


 「嫌です、絶対!」


 「いえ、取り計らって頂くだけで。直接貴方に手伝ってとは」


 「当たり前です、この話は無かった事に」


 「私一人でやるしかないですか」


 腕を組むマリーにテレーは突っ込みを入れる。


 「一人で何をしようと言うのですか!? 何が目的でそんな突拍子もない事を!」


 「パリを美しい街にしたい。それだけです」


 「そんな事でどうやってパリを……」


 「単純な理屈だと思いますが」


 「…………」


 理屈が……通っているのか?


 「よくお考えを。必要な人員と道具も試算してあります」


 試算? そこまで現実的に計画しているのか。


 「本気……ですか?」


 「はい、王妃である以上、民のために。自らの責任で自ら執り行いたいです。人任せには絶対しないと約束します」


 「いや、そこが問題になるのでは……」


 「民の為、直々に、私が!」


 最早……暴れん坊どころでは無い。

 しかし、もしかしたら可能性は有るのかも。

 成功したら?

 でもイメージ的、感性的、生理的にはどうだろうか。

 何よりこんなのが王女の発案とはイカれている。

 しかし王妃の命と考えれば拒否し切れるか?


 「……貴女が本気か様子を見させてください。その上で判断します」


 マリーの表情がぱっと明るくなった。


 「ありがとうございます! 感謝この上ありません!!」


 喜び手を取るマリーを見てテレーは思う。


 (どうせ上手くはいかないだろう……)







 王妃編、本格的に動きます。

 過激になるかも知れません。

 あらかじめご容赦を。

 

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