第五十三話 戦い済んで
マリーらが事態を知って捜索を始めた夜警隊に接触したのはしばらく時間が経った後だった。
程なくビスケとバジーに再会し、夜警隊の詰所において皆で事情を説明する事になった。
この時ばかりはマリーは自分の素性を隠さずに話す事になった。
警察側にとってはまさに異常事態だった。
人外と戦い倒したのはカークという事にした。
金槌食らってなお致命傷とならなかった人外の供述と食い違っても、上手く処理して欲しいと言っておいた。
また、できればこの事件にマリー達が関わった事はは王室にも伝えない様にして欲しいとも。
どこまで聞き入れられるかあてにはならないが言うだけは言っておいたのだ。
結局説明が終わったのは0時過ぎだった。
詰所からの帰り際。
「マリー様、娘をお助け頂き誠にありがとうございます」
マークはマリーに片膝を付き、感謝の言葉を涙ながらに伝えた。
「いえ、ハンナさん無事で良かったですね。もっともずっと気絶してて何も知らないみたいでしたが。でも知らない方が良い事もあります。娘さんをお大事に」
「はっありがたき幸せであります!マリー様がこれほど慈悲深い方だとは感激であります!」
会話を聞いていたバジーがビスケにこそっと囁いた。
「なんかどっかで聞いたような口ぶりだな」
「ええ、第二のフィリップ伯爵誕生ですね」
「マリー様、ご無事でしたか〜!」
宿屋に帰るとフィリップ伯爵が涙ながらに出迎えた。
「心配いたしましたぞ〜!!」
マリーは笑って応えた。
「ご心配かけて申し訳ありませんでした。お父様」
彼はマリーの不在を知り、茫然自失状態になっていた。
更に外に倒れた馬車があるのを見つけ、馬車の操者から事情を聞き卒倒してしまった。
最早彼には神に祈る以外方法は無かった。
そう、神の奇跡はあったのだ。
「お父様には何のお咎めもかからないとお約束します。だから嫌いにならないで、お父様」
「はは〜!! 一生愛し続けます〜!」
それはちょっと違うとマリーは苦笑した。
「やっぱ本家フィリップは違うな」
「ええ貫禄が段違いです」
バジーとビスケはうなずき合うのだった。
遅い就寝時間となりマリーは部屋に向かう。
部屋のドアの前にカークが立っていた。
「マリー様」
「まだご用事がありましたか?」
「はい」
「ここでは何ですので中にお入りなさいな」
「あれ、カークさんどうしたの?」
ビスケが不思議そうな顔をした。
「そうだな、お前にも聞いてもらおうか」
「お掛けになって」
椅子をすすめるマリー。
「いえお構いなく。それより言いたい事は……」
カークは滔々と話し出した。
「私は元々マリー様の護衛として雇われた身です。少なくとも自分ではそう思ってます。しかし今夜の一件は……私はマリー様を守ろうとしながらあの人外に気絶させられ、役目を果たす事ができませんでした。気絶してる間に人外と戦ったのはマリー様です。しかも素手であの怪物を倒されてしまった。つまり……マリー様は私より強いと言う事になります」
マリーは目を閉じ額に人差し指と中指をを当てた。
それが話したい事だったのか。
現場にいなかったビスケは当惑している。
「主を守るべき部下が主に守られたのです。では私の存在意義は何なのでしょう? 自分があまりに不甲斐ない!」
声を震わすカーク。
「それはすでに言ったでしょう。状況によるのです。ハンナさんを守るため貴方は自らの身を投げ打った。ハンナさんが生きているのは貴方のおかげです。それに貴方が金槌で人外を倒し私を守ってくれた。あれが無ければ私は……」
「結果なのですよ、問題とされるのは。どんな理由があっても私が人外に倒されたのは事実。その間マリー様は一人で戦わなければならなかった。しかも今までと違う桁外れに強い怪物と。主をこの上ない危険に晒してしまった」
「そうですか。納得いきませんか。私が前面に出たがるばかりに……実は」
言いながらマリーはカークとビスケを見た。
「今日解った事があるんです。私の欲したものが何であるか……」
後始末の話です。
緊張が続いたから緩和になります。
もう少しだけ夜のパリ編続きます。




