表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/439

第四十九話 人外対暴れん坊





 「あれ、怒ってんの?」


 「ええ……とっても!!」


 言いながらマリーは足を踏み出した。

 周りには三人も失神者がいるのだ。

 感心を自分だけに集中させねばならない。

 人外がマリーの頭にゆっくり手を伸ばしてきた。

 まだ戦闘体制にはなってはいない。

 マリーはその手を両手で掴んだ。

 掴んだ腕はぴたりと止まり鉄の塊の様になってまるで動かせなくなった。


 (やはり!)


 全てにおいて人間離れしている。

 常人に使える技が使えない事が予想できる。

 となれば。

 

 「んん、どうしたの?〜」


 首をひねる人外の腕を離して間合いを取った。

 相手に戦っている自覚が無いのが逆に厄介だ。

 マリーは突っ立っている人外の懐に踏み込むと、足の甲の上に自分のつま先を突き立てた。


 「……痛た」


 人外がつぶやいた。

 大した効果はないがこれで戦う気になっただろうか。

 あれだけ愛でていた女性をいきなりカークに投げつける程ならば有り得るだろう。


 「なんでこんなことするのよ!」


 人外がマリーに向けて横殴りに腕を振り回した。


 ぶううん!


 マリーは振り回された腕を取り両膝を雪面につけた。

 振り回された腕の勢いを殺さずに、やや下方に向けて投げを打った。

 人外の足が宙に浮き投げ飛ばされた。

 額から雪面にぶつかり、次いで体が雪の上を滑っていく。


 ごっざざざざっ!


 「うっあ、なに……?」


 これがマリーの策だった。

 相手の攻撃力を利用して相手を攻撃する。

 最大限に利用するには相手に最大限の攻撃をさせる。

 それは敵の全力を引き出す危険な賭けだった。





 「くそ、雪でうまく走れねえ!」


 バジーが吐き捨てた。

 ビスケも同じ思いだ。

 速度を出さずに走るのがもどかしい。

 二人の操る馬が十字路を通過しようした時。


 「あ、バジーさんあれ!」


 そう言ってビスケが馬を止めた。

 ビスケの見る方に振り返ると、騎馬に乗った隊列を組んだ一団が進んで来ていた。

 

 「やっと出くわしたぜ! 夜景隊だ!!」


 拳を握りしめるバジー。


 「事情を説明してサン・マルセル中を家探ししてもらおう。で、マリー様の事をどう言ったら……」


 「とにかく行きましょう。考えても仕方ないです!」


 「そ、そうだな」


 二人は夜景隊に向けて手を振り馬を走らせた。


 「お〜い!助けてくれ〜、大変なんだ〜!!」





 マリーは走り込み、うつ伏せになった人外の後頭部を踏み抜こうとした。

 一瞬の時間も無駄に出来ない。

 

 ごろんっ


 人外が体を転がし起きあがろうとした。

 体の割に動きは軽快だ。

 後頭部の代わりにこめかみに踵を落としたが、まるで動じず起き上がり出した。

 腕が伸びマリーの足を捕まえようとした。

 一歩引いてかわした。

 間合いをとる。

 人外は立ち上がるとマリーを見据えた。


 「怒ったじょ〜!」


 人外が突進を開始した。

 巨体がマリーを覆う壁となって迫ってくる。

 一歩あたりで縮まる距離が段違いだ。

 マリーは咄嗟の判断で身を沈めた。

 ここは雪の上だ。

 ならいくら規格外の巨体でもこれが使えるはずだ。

 マリーは人外が左足を軸足にして右足を踏み出そうとした瞬間に体を左足に押し当て払った。


 つるっ


 雪で足が滑った人外の体がつんのめり宙で回転する。


 どしんっ!!


 背中から落っこちた。

 しかしすぐ後転して起きようとする。

 両足をついて中腰になった所に回り込んできたマリーの蹴りが喉仏に炸裂した。


 ばしっ


 蹴りが入ると同時に人外の右手が伸びる。

 蹴った時の感触はまるで筋肉の塊に弾かれたようだった。

 まるで効いていない。

 伸びた手をかわして右手で相手の手首を取った。

 回り込んで背後から残る左腕で相手の腕を抱え込みねじった。

 本来なら激痛とともに相手を地に伏せさせる危険技だ。

 大型の相手にも効くはずの技だが人外は動じた様子も見せない。

 だからこそ雪の上であるのを利用しているのだ。

 マリーは本来この技で使わない動作を付け足した。

 左足を人外の右足の内側に付け、押し込んだ。

 足が滑って広がり人外のバランスが崩れる、はずだった。


 (……動かない!!)


 都合良く滑ってくれなかった。

 雪のコンディションにはムラがあったのだ。

 人外が右手をマリーをぶら下げたまま掲げ上げた。

 上手で物を投げるように振り回した。


 ぶうんっ!


 

 腕は空振りした。

 直前でマリーが腕を離したのだ。

 着地したマリーは人外の右足を両手で取った。

 まだ腕をぶん回す体勢で足が浮いていたのだ。

 マリーは足首を内側にねじろうとした。

 自らの体を回転させ最大限の力で足首をひねる。

 今度は人外の軸足がずるっと滑った。

 マリーの体が回転するのに合わせて人外の体が傾いた。

 

 びきびきっ


 足首の一部が千切れる感覚をマリーの手が感じる。

 

 「痛〜!!」


 悲鳴とともに人外の体が転がり尻餅をついた。

 マリーも足を持ったまま尻餅をついている。


 「うあ!」


 マリーが声を漏らす。

 突如人外が足を振り回し出したのだ。

 慌てて足を離すマリーだが、すでに宙に浮いていた。

 髪をなびかせながら落下して、またもや尻餅をついた。

 人外に背を向けた状態だった。

 急いで距離を取ろうと立ち上がりつつ、前に飛び出ようとした瞬間、


 びんっ!


 マリーの体が止まった。


 頭が引っ張られていた。

 

 (髪が……!)


 狼狽えるマリーが横目で見ると、ぴんと張った髪の端に噛み付いた人外の狂気に満ちた笑顔があった。






 戦闘開始です。

 これまでフランスにおいて勝てる相手としか戦ってなかったマリーが死力を尽くして戦います。

 でもこれって高貴な貴族の衣装で戦ってるんだな……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ