第四十七話 人外
「……あいつを……ジンガイと呼んでいる」
「人外!!」
その言葉のおぞましさにバジーは馬上で凍りついてしまった。
これはマリーとカークで何とかなる物じゃないのかもしれない。
正直自分自身も怖さが一気に上昇してしまった。
「バジーさん、早く行きましょう!」
ビスケが叫ぶ。
そう、それでも行かなければ。
もはや護衛役ではないバジーにもマリーはそうするに値する存在になっていたから。
二頭の馬は雪降る中を走り出した。
肩を噛みちぎられた男が痛みに顔を引き攣らせた。
誘拐犯は口から血を滴らせて噛みちぎった肉をくちゃくちゃしている。
更に片手で男の頭を掴み、ぽいっとぶん投げた。
投げられた男は雪面に勢い良くうつ伏せに体を滑らせマリーの元まで到達した。
急いでマリーが彼を助け起こそうとした。
「うっうっ」
呻いた後男は気を失った。
マリーの表情が激情に強張る。
「……何と言うことを!!」
マリーが誘拐犯に向き直り叫びを上げた。
その誘拐犯は丸めていた体をゆっくりと伸ばしていく。
上へ伸びゆく体はやがてマリーを二階から見下ろすかの様な高さになった。
マリーはこの大男の姿形を初めて確認した。
黒く硬そうなざんばら髪。
顔にはいくつもの傷が走り、それでいて真っ白な歯が生え揃っている。
髪同様に硬そうな髭を伸ばし放題。
そして見上げるような身長と比べてもまだなおごつい手足。
皮同士を無秩序に継ぎ接ぎした物を衣服として羽織っている。
まさに人の常識からはみ出した存在。
その存在がマリーを見下ろし声を漏らした。
「あれ……君もきれいな毛を……してるのね〜」
「!!」
マリーの心に驚愕が走る!
それはこの怪物の姿を見てではなく、声色を聞いてでもなく、話された言葉がオーストリア語だったからだ。
カークはマリーを細い道に入った時点で見失っていた。
急いで見失った地点までたどり着いて足跡を探すが暗くてよく見えない。
雪面を舐める様に見て足跡をたどろうとした。
こんな悠長なことするなら、こちらから呼び掛ける手に出た方がいいか。
「よし、マリー様〜!!」
返事をしてくれたら。
「マリー様〜!!」
「うるせい! 誰だ!?」
戸が開け放たれるとわらわらと人が出てきた。
男、女、子供三人。
一家のようだ。
「人の迷惑考えろ!」
「あ、す、すまん人探しをしていた」
「知るか!」
これは困った、それどころではないのに。
待てよ、ここはサン・マルセルだ。
「おい、ランタンはないか?銀貨で買うぞ」
「何〜!」
「後私が声を出しても黙っててくれ。銀貨もう一枚やるから」
「本当か?おいランタン持って来い早く!急げ〜」
という事で戦う相手が人外です。
オーストリア出身に意味持たせられるか分かんないです。
どうしようかな……




