第四十六話 戦慄の接触
悪党三人を捕獲したビスケ達。
「バジーさん、凄かったです。あの男共の考えを読み切ってしまうなんて。計画の予定変更まで言い当てるなんて本当に!」
「結構人生揉まれて生きて来たからな。したたかさは身に付けてるぜ。お前さんも大したナイフの腕だったな。知ってたけど」
「それよりどうします、これから」
「マークさん」
バジーがマークに向き直った。
「こいつら三人はあんたに任せる。娘さんとの人質交換に使えるからな。あの化け物も一応こいつらの仲間だから」
男達を一瞥する。
今彼らは馬車の手綱で縛られ同じく馬車から調達した布で応急処置をしてある。
「うむ、そうか!」
「後は夜警隊の力を借りるしかないでしょう。うまくここに巡回してくれりゃいいが無理なら詰所に行くしかねえ。あんたは警察署長だから顔がきくでしょう。ここに残って夜警隊に連絡を」
「お前達は?」
「馬でサン・マルセルへひと足先に。一刻も早く娘さんの元へ行きたいだろうがここは俺らに任せて下さい。先に主と仲間が向かってるし」
「先に?」
「ああ、あの二人なら怪物相手でも……」
「何?」
「いや、それじゃ行きます。ビスケ、行こうぜ」
「ええ!」
二人は馬に乗った。
走ろうとする前にバジーが縛られている男達に振り向き問いかけた。
「おい、あの化け物の居場所の見当はつくか?」
俯いたままの状態で男達の中の一人が気だるそうに口を開いた。
「……分からん。あいつは決まった寝ぐらを持たねえからな」
「じゃ、あいつの名は?」
「俺たちは…………あいつを……」
ハンナを抱えたまま東へ走る誘拐犯は、南東へ進む道に曲がった。
フォーブール・サン・マルセルに向かう道だ。
マリーは何とか目標を見失わずに追いかけていた。
流石の怪物も走る速度が落ちて来たようだ。
マリーはと言うと走っている内に帽子から金髪がはみ出していた。
にしてもこの走りのゴールはどこにあるんだろう?
ゴールに着く前に追いつけるだろうか。
カークはマリーの姿を見失わない様にするだけで精一杯だった。
一体いつまで走り続けなければいけないのか。
限界は近い。
それでも彼は金槌を捨てる気にはなれなかった。
道路から街灯の明かりが途絶えた。
それがフォーブール・サン・マルセルに入った瞬間だった。
肩に担いだ娘は捕まえられた時からずっと失神したままだ。
暗闇の中狭い通路に入り娘の置き場所を物色し始めた。
少し広い道に立つ一軒家にランタンの明かりが灯っている。
そこまで行くと娘を肩からどさっと雪上に置いた。
背を丸め顔を覗き込んだ。
端正な顔、そして長い金髪が波打っている。
「ふう〜へへへ〜!!」
不気味な笑い声が響く。
道を歩いていた男が笑い声を聞いて近付いてきた。
明かりの下に異様な塊を見つけ立ち止まった。
「な、なんだこりゃあ?!」
しかも傍に女性が転がっている。
塊に見えていた物が振り向き腕が伸びてきた。
「何だよてめ〜!うあっ」
片手で首根っこを掴まれ足が宙に浮いた。
「ねえ……いいとこなんよ……静かにしてちょうだいよ……」
マリーは誘拐犯が細い道に入ったところで見失ってしまった。
自分も同じ道に入り辺りを見回す。
雪上に足跡を探した。
辺りはほぼ真っ暗であってもマリーの視力なら何とか見える。
足跡を辿ろうとした時!
「うぎゃああああ〜!!」
強烈な悲鳴が響き渡る。
声の方へ走るマリー。
狭い道を通り出た時、マリーはやっと追いかけていた相手を見つけた。
その相手は薄明かりの中、行きずりの男の肩を衣服ごと食いちぎっていた……
にやり。
「……あいつを……ジンガイと呼んでいる」
「人外!!」
王太子妃編最強の敵の登場です。
果たしてどの様な攻防となるでしょうか。
しかしお姫様に何させるんやw




