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第四十五話 サン・マルセルの悪党






 フォーブール・サン・マルセルはパリの最貧層の最も治安の悪い街であった。

 そして最も手の付けられない者達が住む街でもあった。

 そのためこの街では暴動が絶えずパリ警察も手を焼いている。

 下手に徹底的に取り締まればその反動で更にどぎつい暴動が起きてしまうのだ。

 そのため警察も取り締まりに手心を加えねばならなかった。


 マーク署長は話を続ける。


 「私はあの地域の住民を取り締まる時に間違えてしまったのだ……さじ加減を! 特定の一団が騒ぎを起こし死者が出てしまった。そこで実行犯を捉えて処刑し、一団全員を手配した。だがその中にとんでも無い化け物がいたのだ! 名前すら判明してないその化け物は仲間から常に食糧など生きる為必要な物を与えられ、その代わりに騒ぎを起こす際にはこの化け物が徹底的に暴れ回る!その化け物が私の馬車を襲ったのだ……警察署長である私を!」


 「そんな、それではマリー様が追ったのは……」


 「大変だぁ!」


 うろたえまくる二人にマークは話を続ける。


 「あんな恐ろしいものは見た事ない。突然現れ馬車を捕まえひっくり返してしまった」


 雪でスリップしたのでは無かった?

 馬二頭まで倒れていた、あれが人の手で?!


 「あれは馬車の中に体を突っ込んできた。その時私は殺されると思った。絶対狙いは私だと。しかしあの化け物は私に伸ばしかけた手を急に止めたのだ!そして……手を娘に伸ばした。その時化け物が言葉を発したのだ……」


 二人とも何と言ったか聞くのが怖くなった。

 マークは苦渋の表情で声を漏らした。


 「あれ、これいい女だ……こっちの方がいいや……そう言って娘を!!」


 マークはくず折れて泣き出した。


 「本来なら私を殺すはずだったのだ! なのにあの化け物の気まぐれで……娘が〜!!」


 号泣するマーク。

 だがビスケらにとって一番気になるのはマリーだ。

 とにかく何とかしなければならない。

 誘拐犯の怪物は東へ走って行った。

 サン・マルセルへの方向だ。

 距離もそれ程遠くはない。

 ビスケはマークを見下ろし声をかけた。


 「警察署長!」


 「うっ」


 「怪物は東へ、つまりサン・マルセルに逃げ込もうとしてます!」


 顔を上げるマーク。


 「あなたはあの区域の警察署長でしょう!? なら号令をかけてあの区域の一斉捜査を!娘さんを助けるためにも!」


 「……」


 「時間が有りません! 早く連絡を! 馬は無事ですか?」


 馬車の操作人に聞く。

 

 「はい、無事です」


 「では一頭は私が乗ります。署長、お怪我の方は?」


 「大丈夫だ、馬車が倒れた時に座席に挟まれただけだ」


 「馬は乗れます?」


 「乗れる!」


 「では、行きましょう!バジーさん、後はお任せします」


 「な、何をだよ?」


 「フィリップ伯爵を」


 「え〜?」


 馬車と馬を繋いだ縄が外された。

 ビスケは馬に乗ろうとした。


 「待ちな!」


 背後から声がした。

 かなりのだみ声だった。

 ビスケらが振り向くと。

 

 三人の柄の悪そうな男達が近付いて来る。

 身なりはお世辞にも良いとは言えない。

 真ん中の男がニヤリと笑う。


 マークはその男の顔を見るなり叫びを上げた。


 「お前は……あの怪物の仲間だな!!」


 「えっ?」


 驚くビスケにマークが言う。


 「あの男の面だけはこちらに割れているのだ!お前は……怪物に我らを襲わせたのはお前か?!」


 「おうよ、あいつは頭が悪いからな。俺たちが色々指示を出してやらねえとな」


 事もなげに言うと男は再び笑う。


 「おめえの娘は俺たちの手の内だ。娘の命が惜しかったら言うことを聞け」


 「何!?」


 「抵抗するなってこった」


 「娘はどこにいる?」


 「それは……」


 「分かってねえんじゃねえかよ?!」


 バジーが口を挟んだ。


 「大体娘さんをさらう位なら署長を直接とっ捕まえる方が早いだろうが。何故こんな回りくどい手で署長を脅す?」


 「何だと!」


 「もともとあの化けもんは署長を殺すかなんかの予定だったんだろうが?だが気まぐれで娘を奪って逃げたんだ。お前らがいるってのに黙って勝手に娘担いで行っちまった。支離滅裂にも程がある。お前らも大慌てだったんじゃねえか?」


 「そ、そんな事は……」


 「へっ!顔に出てるぜ、分かりやすい奴らだ」


 「だ、黙れ!」


 「それで予定を変えてのこのこ現れた訳か。娘を人質だと脅して署長を……今度こそ殺すかなんかって魂胆だろ!」


 「……」


 「図星かよ!おめえらもあの化けもん並に頭悪いな。署長、こんな奴らの言うこと聞いちゃ駄目だ!!」


 「てめえ〜!」


 男は懐からナイフを取り出した。

 両脇の男達もナイフを出す。


 「ビスケ〜!頼む!」


 言うとバジーは後ろに下がった。

 代わりにビスケが前に出た。


 「手加減なしだ!」


 「分かってる!」


 男達が襲い掛かろうとする間にビスケは素早く上着からナイフを取り出した。

 両手にナイフを持ち同時に投げた!


 しゅっ!


 次の瞬間ナイフは二人の男の足に一本ずつ突き刺さっていた。

 

 「うぎゃっ」「うぐっ」


 二人の動きが止まった。

 既にビスケは次のナイフを取り出し両手投げを連発させようとしていた。


 しゅっ


 今度は残る一人の両足に同時に突き刺さる。


 「うああ!」


 更に二本取り出しさっきの二人の残る足にナイフを命中させた。


 「ぎゃあああ」「ひいっ」


 雪の上に転がり痛がりまくる男達を見下ろしビスケが言った。


 「ナイフを抜いたらダメよ。血が吹き出して死ぬかもよ」





 

 かなり間抜けな悪党達でした。

 バジーがやけにしっかり者でした。

 今後マリー達のブレーンになれそうだわ。

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