表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
438/441

第四百三十八話 来仏が知られる






 マリーとテレジアが小トリアノン跡で一悶着、と言うか大立ち回りをしでかしたその日の夕刻、パリにて。



 彼はサン・トレノ通りを悠然と歩いていた。

 東へ、パレ・ロワイヤル、イノサン墓地へと続く道だ。

 最近は墓地の腐臭が軽減され、この道をこの方向に進むのに抵抗が少なくなった。

 その時、背後から慌ただしい足音が聞こえてきた。


 「やっと見つけたぞ、おいフィリップ!」


 声の方に振り向いたフィリップは眉を顰めた。


 「フロンか。ここではケリーと呼んでくれ」


 「そんな事より大変だ!」


 「何だよ、一体?」


 フロンと呼ばれた男は息を切らせながら話し出した。


 「一昨日の夕方の話だ。道歩いていたら豪勢な馬車が四台並んでいてよ。その向こうに俺は偶然王妃を見かけたんだ。そこにもう一人、馬車から婆あが駆け寄って来た。そいつの事を王妃が何と呼んだと思う?」


 大仰な言い方のフロンにケリーは面倒そうに言い返した。


 「もったいぶらず早く言え」


 「ああ、実はな。王妃がその婆あをお母様と言ったんだ」

 

 「何?」


 「婆あは王妃をマリアとか呼んで抱きしめ合ったんだ……いや、何だか揉み合ったようにも見えたが」


 「なんだそれは? 王妃の母親……オーストリア女王マリア・テレジアか? そんな大物なんでここに来てるんだ? 来るなら盛大に迎えるはずだろうが…………お忍びかよ?」


 「とにかくそう言うことだ。馬車をつけたら宿に泊まった。翌朝ヴェルサイユに出た」


 「ふうむ…………」


 考える仕草のケリー。


 「どうする? この機会にやるか?」


 「何をやるんだよ!」


 ケリーの声が大きくなりフロンは戸惑う。


 「俺たちの狙いは王妃一人だ! その母親など標的じゃない。女王を利用して王妃を殺すのか?どうやってだ!」


 「う…………」


 言葉に詰まるフロンにケリーは続けた。


 「よその国の女王を娘ごと殺ったらどうなる? オーストリアと戦争になるかもな」


 「えっ?!」


 「俺たちは王妃だけ狙えばいい。分かったな?」


 「ああ…………」


 「まあ、お前の気持ちも分かる。イノサン墓地で仲間をやられたからな。俺だって考えてるんだ。王妃を始末する方法をな。だからもうしばらく待て。必ず王妃を仕留めて仲間の仇を討つ!」


 「分かった……ケリー、お前だけが頼りだ。頼むぞ」


 「ああ…………」


 ケリーはイノサン墓地での惨敗からマリーを暗殺する手段を考え直していた。シモンが言っていたヴェルサイユの十人斬り。イノサンでの六人相手、うち四人がクロスボウを持っていたにも関わらず全滅。なぜこんな事ができるのか?


(あいつは一体…………)



 その時、ケリーの心に悪魔の囁きが聞こえた…………



 (もしかして、これなら……)


 「おい、どうした?」


 「い、いや、何でもない!」


 ケリーの慌てた様子にフロンは当惑する。

 普段から冷静であまり慌てる様子を見せる男ではないからだ。


 「とにかく、お前らは俺の召集を待て。策が出来上がったら必ず呼ぶ。そして王妃抹殺の為動く。分かったな?」


 「おう、待ってるぞ!」


 

 フロンと別れたケリーは歩を止めて再び考え込む仕草で呟いた。


 「本当にこの手をやるのか…………?」



 



 何とも不穏な様子のフィリップもしくはケリー。

 何を企むのか。

 散々マリー暗殺に失敗してきたから作戦も先鋭化するかも知れません。

 テレジア来仏中に一体何が起ころうとしているのでしょうか。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ