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第四百三十七話 それぞれ帰る







 「それでは私は戻ります」


 馬車の前でテレジアと部下達が立つ。

 向かい合って国王とマリーとカーク達に農夫達、そして重鎮達とその護衛達と取り巻き達が集まっていた。

 

 「国王殿を置いてお先に戻る失礼をお許しを」


 国王は無造作に応えた。


 「いや、気になさるな。普段は徒歩でここまで来ている。良い運動になるさ」


 「では失礼します」


 テレジア達は馬車に乗り込んだ。

 重鎮達はうやうやしく挨拶して見送る。

 カーク達も挨拶し、農夫達はそれを真似してそれっぽい仕草をした。

 マリーは手を振り動き始めた馬車を見送る。

 馬車の窓からテレジアが首を伸ばした。

 

 「マリー! …………覚えてなさいよ〜!!」


 「はい! 今日の日は決して忘れません!」


 満面の笑顔で応えるマリーに女王が突っ込んだ。


 「そういう意味じゃない!!」


 馬車は走り去っていった。


 国王がマリーに尋ねた。


 「あれだけ激しい親子喧嘩は初めて見た。だが最後は仲が改善した様だね」


 マリーは小さくなる馬車を見送りながら答えた。


 「そうですね。一旦休戦という所です」


 「休戦? いつまで休戦なのだ?」


 「ああ、お母様の体力が回復するまでですね」


 「なに?」


 「まあお母様ですから一晩眠れば大丈夫でしょう」


 「では明日はどうなる? 正式に関係者一同に対し女王の謁見があるが」


 「そうですね。まあ…………」


 国王はマリーの言葉を待った。


 「なるようになるでしょう!」


 「…………」


 国王は口を開いたまま無言となっていた。

 そんな答えを聞きたかった訳ではないのだが……

 

 「それでなんとかなるのかね?」


 「はい、なるでしょう!」


 その自信のの根拠が知りたいが、聞く気にはなれなかった。


 「…………あー、それでは我々も帰ろう」


 「はい!」


 こうしてマリー達は徒歩でヴェルサイユに帰って行った。



 


 ヴェルサイユに帰った国王夫妻だったが夕食にテレジアを誘う事はなかった。

 色々な事があり過ぎたからだ。

 国王も女王も回復の為、早めに寝る事にした。

 マリーはと言うと……

 

 「お母様がしばらく滞在するのなら案内したい所がいくつもありますね。パルマンティエさんのじゃがいも畑やパリのイノサン墓地、地下迷宮のカタコンブ納骨堂、下水道作業員の仮設テント、屠殺場や下掃除の現場も見せたいですね」


 マリーは自室でゆったりソファに座りつつ明日の事に思いを馳せていた。

 

 「しかし……休戦ですからね。いつ開戦になるか、というか明日開戦でしょうね」


 マリーは少し考え込んだ。


 「しばらく滞在するのですよね、お母様は。私ばかりお相手するのは……いえ、それが目的で来られたのだろうから」


 かくんっ


 「今日みたいな事を毎日やる訳にはいかないですしね。お母様の体力が続かない。私は日々鍛錬を怠らないから日に二、三回やれますが」


 「物騒な事言わないで下さい!! 周りの苦労も考えて下さい!」


 ドアの外からカークの声がした。

 マリーは吹き出さんばかりに笑ってしまった。


 「うっふふふっ。遅くまでお役目ご苦労様です。できるだけ穏やかに、ですね。やってみます」


 「絶対やり遂げて下さい!!」


 「カークさん、ドアの内と外で主と護衛が会話するのどうかと思いますよ」


 ビスケの声まで聞こえてきた。


 「いや、そうだが」


 「マリー様、申し訳ありません。今日はこれでお役目を終えてもよろしいでしょうか?」


 「はい、どうぞ。お役目ご苦労様でした」


 「ほれ、カークさん、帰りますよ」


 「う、む、……」


 「マリー様、これで失礼致します」


 「む……失礼します」


 「うふふふ、良い掛け合いでしたわ、おやすみなさい」


 二人が立ち去った後マリーはつぶやいた。


 「あのお二人中々良いかもしれませんね。少しは考えときますか」


 マリーはソファから立ち上がると就寝前の歯磨きをする事にした。


 「楽しみが増えました。うふふふ」


 





 取り敢えず母娘喧嘩は休止。

 休止は中止ではない。

 まだオーストリアに帰るのではないので予断は許さない。

 果たしてテレジアの次の手は……?

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