第四百三十四話 戦い済んで一風呂を
アントニア…………マリア……あなたが生まれた時、マリアの名で呼ぶ事を許した……私を含め娘たちには皆マリアの名を冠していた…………だけどあなたは私の生んだ最後の娘だから、特別にマリアの名で呼んだ…………そう、フランス王国に嫁がせる特別の娘だった…………なのに…………こんな形の特別など望んでなかった〜〜!!
あ ん た と い う 娘 は 〜〜!!
「はっ」
がばっ
テレジアは目を覚ますと同時に身を起こした。
「ここは……?」
辺りを見回す。
木造の殺風景な部屋。
平民の部屋か?
自身はベッドの上にいた。
着ている物を確かめた。
いつもの黒の喪服ではない。
灰色の平民の着るいわゆるワンピースだった。
そういえば泥も付いていない。
「何があった? 痛たた……」
体が軋んだ。
それは娘との親子喧嘩の証しだった。
「おや、起きましたか?」
問いかける声は明らかに娘のものだった。
ベッドを降り声の方へ進んだ。
隣の部屋に入ると白いカーテンに囲まれた場所があり、そこの内側が明かりで満たされている。
首から上のシルエットが見える。
テレジアは迷わずカーテンを開いた。
「マリア!」
そこには湯船に浸かるマリーの姿があった。
「何ぃ?!」
「お母様、大丈夫ですか?」
マリーは浴槽の中でテレジアに笑みを向けるのだった。
「どういう事ですか!?」
娘も母も入浴中だというのを気にもせず会話をしている。
「額の鉢合わせをしてお母様は失神してしまいました。私も数瞬意識が飛びましたよ。うふふふ。それで小屋に運んで体を拭いて着替えをさせました。あ、ご安心を。決していい加減な人にさせてはいません。たまたま知り合いのご婦人の小間使いが二人居合わせていたので着替えを手伝ってもらいました。私も泥を吹くのを手伝いましたよ」
「…………」
テレジアは言葉も無い。
「小屋へは私がお母様をおんぶして運びました。二階まで運ぶのが大変でしたがそれもまた楽しかったです。初めての体験でしたから」
「…………私はどれだけ眠っていた?」
「う〜ん、二時間くらいですか。護衛とメルシー伯は下にいます。さすがに男性がここには近付けません。お風呂の時間ですので。ところでお母様。一応汚れは取ったのですが臭いが取れなかったりするので、どうですか? お母様もお風呂に入って体を綺麗にしませんか?」
思わず呆れてしまった。
気絶前にはあれだけ怒っていた自分に対して。
「あなたは一体何を言っているのです?」
「もちろん汚れたら洗えばいい、という事です。私はそう考えるからいくら汚れても気にならない。風呂さえ準備しておけば」
「汚れないようにしようとはしないのですね」
「はい。では一緒にお風呂に入りましょう」
「勝手に決めるな!」
「でも臭いが付いたままで良いのですか? ここは綺麗に洗い流しましょう」
「うううう…………」
テレジアは身を震わせだした。
「誰のせいで汚れたと思ってるんですか〜!」
言いながらテレジアは服を脱ぎだした。
「ええい!」
脱ぎ終わると浴槽に飛び込んだ。
どぶんっ!!
「いらっしゃい!」
湯船に顎まで使ったテレジアが叫んだ。
「マリア! 石鹸を!!」
やっと戦い終えて疲れを癒す風呂となりました。
激しい争いも終わってしまえばノーサイド?
仲良く入浴となるでしょうか。




